賀曽利隆の「70代編日本一周」(12)下関→東京編 最終回

【賀曽利隆:冒険家・ツーリングジャーナリスト】

前回:賀曽利隆の「70代編日本一周」(11)

12月11日(第88日目)聖地巡礼!

下関の「東横イン」を出発。いよいよ、ゴールの東京へ。相棒のスズキVストローム250に「頼むぞ!」とひと声かけて走り出す。

▲早朝の下関を出発

小郡、防府と通り徳山へ。徳山からは瀬戸内海沿いの国道188号を行く。光、柳井と通り、大畠から大島大橋で周防大島に渡った。ここは我が「日本一周」の聖地といっていい。

▲柳井の古い町並み
▲大島大橋で周防大島に渡った

周防大島では宮本光さんを訪ねた。光さんは生涯を通して4000日以上も日本国内を旅された偉大なる民俗学者、故宮本常一先生のご子息。東京の大学を卒業したあと、先生の故郷に戻り、奥さんの紀子さんともどもミカン栽培やサツマイモ栽培をしている。
ぼくは長らく宮本常一先生が所長をされていた日本観光文化研究所(1989年に閉鎖)の所員をしていた。宮本先生は我が旅の師。宮本先生ご夫妻には仲人もしていただいた。

▲宮本常一先生の故郷にやってきた
▲宮本光さんとのうれしい再会。光さんは「東和きんとき」の収穫の最中

「30代編日本一周」(1978年)が忘れられない。このときは光さんのミカン畑でミカンの収穫の手伝いをした。これも光さんが段取りしてくれたことだが、地元の中学校で講演をした。1年生2クラスの生徒80人を前に「日本一周」の話をしたのだが、真剣になって聞き入ってくれた生徒のみなさんの顔がなつかしく思い出されてくる。

突然の訪問だったが、仕事中の宮本光さんにお会いすることができ、しばしの立ち話。「宮本農園」産の「東和きんとき」の焼きいもをいただき、光さんと別れた。そのあと宮本常一先生を記念する「宮本常一記念館」を見学し、松山行きのフェリーの出る伊保田港まで行き、周防大島を一周して大畠に戻った。
「周防大島一周」は我が「日本一周」の聖地巡礼のようなもの。大畠からは夕暮れの周防大島を見ながら国道188号を走り、岩国駅前の「岩国シティービューホテル」に泊まった。

▲周防大島の伊保田港から松山行のフェリーが出ていく

12月12日(第89日目)「やまちゃん」との出会い

岩国からは国道2号で広島県に入り、宮島に渡る。外国人観光客も多く見られる安芸の一宮、厳島神社を参拝した。

▲安芸の一宮、厳島神社を参拝
▲広島に到着

広島に到着すると、安佐南区にある「バイクショップFOREST」を訪ねた。ここは「やまちゃん」の店。やまちゃんはバイク大好き人間。バイク好きが高じてバイクショップをやっている。スズキのDR-Z400Sを走らせ、中国・四国の林道をガンガンと走りまくっているようなオフロードライダーだ。そんなやまちゃんとしばしのバイク談義。

▲広島では「バイクショップFOREST」を訪ねる。やまちゃんとの再会だ!
▲やまちゃんに連れられて鉄板焼きの店「キミッツ」へ

そのあとやまちゃんはまだ昼前だというのにお店を閉めると、鉄板焼きの店「キミッツ」に連れていってくれた。目の前の鉄板で豪快に焼く「肉玉」の「肉タマそば」と「ねぎイカ天チーズ」をご馳走になった。これぞまさに広島の味。さらにやまちゃんは広島をぐるりと大きく迂回するようなルートで東広島市の国道2号まで案内してくれた。広島周辺の山々は雪景色。すでに雪の季節になっていた。

▲これが「キミッツ」の「肉タマそば」

国道2号で東広島から三原へ。三原バイパスの道の駅「みはら神明の里」でVストローム250を止めると、しばし瀬戸内海の眺望を楽しんだ。

▲三原バイパスの道の駅「みはら神明の里」から三原の町を見下ろす

三原から尾道を通って福山へ。夜は福山泊まり。ここでは宿がとれなかったのだが、公認会計士の岡田さんに助けられた。岡田さんルートで駅前のビジネスホテルをとってもらった。
そのあとは岡田さんとの宴会。タイ、ヒラメ、ブリ、サーモン、イカの刺身の盛り合わせ、ブリカマ、タイのアラ、カキのフライはうまかった。生ビールにはじまり、日本酒の冷酒、焼酎のお湯割りとかなり飲んだ。岡田さん、福山での楽しい一夜でしたよ。


▲福山では岡田さんとの宴会だ!

12月13日(第90日目)日本を旧国で見る!

福山を出発すると国道2号で岡山県に入り、笠岡、倉敷と通り岡山へ。岡山からは国道53号で久米南町まで行く。岡山県は旧国でいうと備前、備中と美作の3国から成っているが、久米南町は美作になる。久米南町の町役場前でVストローム250を止めると「美作に入った!」とガッツポーズ。

▲岡山から国道53号で久米南町まで行く。ここは旧国の美作国

今回のカソリの「日本一周」は日本の全都道府県に足を踏み入れるだけでなく、日本の全国(68国)にも足を踏み入れるというもの。そのため佐渡、隠岐、壱岐、対馬の島国にも渡った。日本を旧国単位で見るというのはじつにいい。それぞれの地方がよくわかる。

岡山に戻ると、国道2号で船坂峠を越えて兵庫県に入る。旧国で見ると、兵庫県というのはこの上もなくおもしろい。
摂津、播磨、丹波、但馬、淡路の5国から成っているが、このような例は日本にほかにはない。それも「五畿七道」でいうと摂津は畿内、播磨は山陽道、丹波と但馬は山陰道、淡路は南海道で、これらの兵庫県の5国はテンデンバラバラ。さらにいえば摂津は大阪府が中心だし、丹波は京都府が中心。
「これでは兵庫県知事も大変だろうなあ…」と、よけいな心配をしてしまう。

▲淡路島南西端の鳴門岬から鳴門海峡にかかる大鳴門橋を見る

まあ、それはおいて明石海峡大橋を渡って淡路島南西端の鳴門岬まで行き、鳴門海峡のうず潮を見た。鳴門岬からは淡路島の西海岸を北上する。

▲淡路島の西岸を北上

都志(洲本市)では「ウェルネスパーク五色」の高田屋嘉兵衛記念公園を歩く。園内には高田屋嘉兵衛とロシアのゴローニン提督が並ぶ「日露友好の像」が建っている。ここには五色温泉の温泉施設「ゆ~ゆ~ファイブ」もある。

江戸時代後期にこの地で生まれた高田屋嘉兵衛は、28歳のときに蝦夷の箱館(今の函館)に渡り、そこを拠点にして海運や造船、北洋での漁場経営など幅広く手がけた。千島列島の島々への航路も開いた。北洋漁業の先駆者でもあり、まさに今日の函館の基礎を築いた人物。
函館には函館山をバックにして高田屋嘉兵衛像が建っているが、それは生誕の地の高田屋嘉兵衛像はとは比べものにならないほどの大きさだ。


▲高田屋嘉兵衛とロシアのゴローニン提督が並び立つ「日露友好の像」

淡路島は猛烈な風。明石海峡大橋は通行可だったが、大鳴門大橋は二輪車通行禁止だった。淡路島をあとにすると神戸へ。神戸から国道2号で大阪へ、大阪からは国道1号で京都へ。京都の四条大宮の「東横イン」に泊まった。

12月14日(第91日目)雪の峠越え

夜明けの京都を出発
▲信楽焼の陶器店前には狸、狸、また狸

京都から北陸に向かうのだが、大雪で米原(滋賀県)から敦賀(福井県)まで行かれるかどうか…の大ピンチ。「日本一周」の最後になって大きなハードルが待ち構えていた。
その前に、京都から三重県の津まで行く。今回の「日本一周」では日本の47都道府県に足を踏み入れるだけでなく、全都道府県庁所在地の町にも足を踏み入れるつもりなのだが、まだ三重県の県庁所在地の津には行っていなかった。京都には福知山にひきつづいて「かえりんさん」こと帰山さんがCRM80に乗ってやってきた。一緒に伊賀上野まで走る。

▲雪の峠を越えて伊賀上野へ
▲伊賀上野の上野市駅前で帰山さんと別れる

京都から国道1号で大津へ。大津からは国道422号で伊賀上野に向かう。雪がチラチラ降っている。信楽を通り、桜峠を越えて三重県に入った。さらに狭路の名無し峠を越える。
この峠はかなりの雪。雪の峠越えだ。転倒しないように最大限の注意を払って走ったが、雪の峠越えというのはちょっとしたワクワク感もある。
上野に下ると上野市駅前で帰山さんと別れた。上野からは国道163号で長野峠を越えて津へ。津に到着すると、伊勢湾の湾岸まで行った。


▲津に到着。伊勢湾岸まで行く

津からは伊勢道→東名阪→新名神→名神→北陸道で米原ICへ。その間では何度も雪に降られたが、路面にはそれほど雪は積もっていなかった。

米原からは国道21号で関ヶ原を越えて岐阜県に入った。これで美濃国にも入ったことになる。さらに大垣を通り岐阜まで行き、折り返して米原に戻った。米原では米原駅前の「東横イン」に泊まった。

▲岐阜に到着。「米原~岐阜」間は往復した

12月15日(第92日目)心やさしき北陸の人よ!

さすが「強運カソリ」、朝からよく晴れている。これならば敦賀まで行けそうだ。

▲国道8号の滋賀・福井県境の峠。峠を越えられてよかった!

国道8号で長浜、木之本と通り、琵琶湖の北端を見て滋賀・福井県境の峠を越えた。よかった。無事に福井県に入れた。福井が「日本一周」最後の県になる。敦賀に到着すると、国道27号の旧道で関峠を越える。
関峠は越前と若狭の国境の峠。関峠を越えて「日本一周」最後の国、若狭国に入ると、美浜の町まで下った。美浜の「ローソン」でVストローム250を止めると、日本の全都道府県走破、日本の全国走破を祝してカンの「おしるこ」で乾杯。いや~、うれしかった。

▲県道225号の関峠を越える。越前と若狭の国境の峠だ

敦賀に戻ると国道8号で福井へ。路肩にはかなりの雪が積もっていたが、路面にはほとんど雪はない。「大丈夫、これなら行ける!」。
武生を過ぎたところではスズキのDJEBEL200に乗った林さんが待ち構えていた。林さんと一緒に福井まで走り、福井城へ。そこにはトライクルのCan-am RTに乗って芦田さんが来てくれた。うれしい福井のライダーのみなさんとの出会い。
芦田さんとは福井市内のとんかつ処「くら」に行き、「ロースかつ丼」を食べた。芦田さんはさらに国道8号で石川県境まで一緒に走ってくれた。

▲DJEBEL200の林さんとの出会い。一緒に福井城まで走る
▲福井城にはCan-am RTに乗って芦田さんが来てくれた


▲「バイク市場きゃぷてん」に到着。中村社長夫妻と愛犬「ばうち」のお出迎え

金沢からは国道159号で宝達志水町の「バイク市場きゃぷてん」まで行き、Vストローム250のオイル交換をしてもらった。
夜は羽咋の温泉施設「ゆ華」に泊まった。「ゆ華」には「バイク市場きゃぷてん」の中村社長と奥様の雅美さんが来てくれた。羽咋の「ココス」での楽しい夕食会。生ビールで乾杯すると、ピザ、から揚げ、ポテトなどを食べながらさらに飲み、締めはビーフカレーだ。
最後は雅美さんの運転する車で「ゆ華」まで送ってもらったが、中村夫妻とは何度も握手をかわして別れた。心やさしき北陸の人よ!

12月16日(第93日目)ついに大雪の北陸を突破!

「ゆ華」の朝湯に入り、朝食を食べ、7時30分に出発。雨が降っているが、雪にならないだけありがたい。
国道8号で倶利伽羅峠を越えて富山県に入る。高岡、富山、魚津と通り、黒部市に入ったところで生地駅前に行く。そこでは仕事中に会社を抜け出してきた「だんなぁさん」に会い、富山名物の「ますずし」の差し入れをいただいた。

▲生地駅前での「だんなぁさん」との出会い
▲「だんなぁさん」の差し入れの「ますずし」をいただく

それをもって隣の入善駅へ。入善駅の待合室でぼくの大好物の「ますずし」を食べた。これぞ富山! 国道8号で境川を渡って新潟県に入り、直江津からは国道18号を行く。

▲糸魚川で見る冬の日本海
▲直江津(上越市)からは国道18号を行く

あたりは一面の雪景色だが、路面に雪はまったくなかった。県境を越えて長野県に入る。ありがたいことに雨は上がり、晴れてきた。ついに大雪の北陸を突破した。長野県の県庁所在地の長野を通過。長野が「日本一周」最後の県庁所在地。
上田の「東横イン」で泊まったが、その夜は上田の居酒屋「ここから」で連夜の宴会。信州美人の「よかさん」と「るびぃさん」、KYYさんや白山市(石川県)から駆けつけてきてくれた「よねさん」らと乾杯を繰り返すのだった。

▲上田で連夜の宴会。信州美人2人と乾杯!

12月17日(第94日目)日本橋にゴール!

無限につづくと思われた「日本一周」も、いよいよ最終日を迎えた。Vストローム250に「行くぞ!」とひと声かけて走り出す。
上田からは国道18号で小諸、軽井沢を通り、碓氷峠を越えて群馬県に入った。安中では上州組の高橋さん、近藤さん、小保形さんとの出会い、食事処「いちょう」で一緒に昼飯(ソースカツ丼)を食べた。そこには「温泉めぐり日本一周」で何度も同行してくれた上州美人の「AQUさん」も来てくれた。


▲上州組の高橋さん、近藤さん、小保形さんと一緒に「ソースカツ丼」を食べる

高崎から国道17号で東京へ。いよいよ最後の行程だ。神流川を渡って埼玉県に入り、大宮、浦和を通って東京都に入った。そこでは一緒にタクラマカン砂漠を走った「サキマン」との出会い。「サキマン」のカブの先導で20時30分、日本橋に到着した。

全行程2万5296キロキロの「日本一周」。2万5296キロをノントラブルで走り切ってくれた相棒のスズキVストローム250には感謝、感謝。こうして「70代編日本一周」を走り終えると、70代の10年間も「バイクで走りまわれる!」といった自信が体中から湧き上がってくるのだった。(了)

▲日本橋に到着。これにて「70代編日本一周」、終了!

賀曽利隆

賀曽利隆 冒険家・ツーリングジャーナリスト

投稿者プロフィール

1947年東京生まれ。
1968年から2年間をかけてアフリカを一周したのを皮切りに、バイクで世界の6大陸を駆け巡る。
1982年には「パリ→ダカールラリー」に日本人ライダー初の参戦。1987年には「サハラ砂漠往復縦断」。7度の「日本一周」を成しとげ、「70代編日本一周」を目指している。
ツーリングマップル東北の担当ライダーで、東北の道という道を精力的に走っている。
モットーは「生涯旅人!」

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