バイクが便利で楽しければ、自ずと市場は活性化する

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

30年前、タイヤメーカーはバイクブームの終焉を一早く察知した

バイク市場の動向を振り返ったとき、私には印象的な出来事があります。
ヨコハマゴムの契約ライダーとして開発とレース参戦に勤しんでいたバイクブーム真っただ中の80年代後半期にあって、それは1988年秋のことでした。テストを終えての夕食中、スタッフから次のような会話が飛び出しました。「今年に入って他社も含めてタイヤの販売本数が急激に落ちている」というのです。バイクそのものの販売台数は好調を堅持しており、「不可解」、「不気味」、「何かが起きる」という言葉が出てきたことを思い出します。

82年に未曽有の年間販売台数328万台を記録したものの、それは時のソフトバイクブームで原付が278万台という状況です。86年のヘルメット義務化もあって原付台数が衰退し総台数こそ減少しても、スポーツバイクの販売台数は80年代一杯、ほぼ同水準を維持していたのです。

ともかく、その場の雰囲気から、89年一杯でのワークスチーム「チームゲッター」解散と私自身の引退を察したものですが、結果は案の定でした。ブームの終焉には89年末のバブル経済崩壊も影響したはずながら、たとえバブル崩壊がなくてもブームは終わっていたでしょう。

バイクブームが幕を閉じる2年ほど前から、ライダーはバイクにそれまでほど乗らなくなっており、走行距離が減ってタイヤも売れなくなっていたのです。

タイヤの販売本数はバイク市場の動向を先取りする

そのときから私は、タイヤ市場はバイクそのものの市場の動向を先取りすると考えるようになりました。付け加えると、私が加わる1年前の84年にヨコハマゴムがチームゲッターを発足させたのは、タイヤ販売本数の上昇からブーム到来を察したからに他なりません。バイクを楽しむライダーが増殖してタイヤが売れ、次いで彼らは新しいバイクを求めるようになるわけです。

では、ここで現状に目を向けてみましょう。
国内のレプレイス用タイヤの市場は大変に厳しい状況にあります。販売本数はここ10年の間に30%も落ち込み、しかもコンスタントに毎年3%ばかり減少を続けているのです。そればかりか、今年前半期の状況からすると、さらなる落ち込みが予想されます。

ここ15年の間にバイクの販売台数が半減したのに対し、タイヤの販売本数が35%減に留まっていると考えれば悪くないと思われますが、そうではありません。所有台数が一定水準に達している状況で、走行距離が伸びていないからです。

10年前のリーマンショック後に販売台数が40万台を割り込み、近年も35万台程度にある状況下で、タイヤの販売本数が30%も減っているのですから、これは由々しき事態なのです。

必要なのは、いいバイクではなく、バイクを楽しく使える環境

そう考えると、バイク市場を活性化させる材料は何も見出せません。むしろ、市場が衰退の一途を辿るであろうことを予見させるデータが揃っていると言っていいぐらいです。でも、それだけに、市場を再生させるための方策が明らかになってくるというものです。

現状では、いくら魅力的な新型車を投入しても焼け石に水でしょう。バイクに乗ったとき便利で楽しいと実感できる社会と環境の整備が大切との結論が見えてくるのです。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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