なぜ、バイクへの煽り運転が多発しているのか

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

バイクに嫌悪感を持つ人が増えているという事実

煽り運転が社会問題として取り上げられるようになったのはまだ最近のことなのに、このわずか1年足らずの間に、私の知る限りでもバイクが被害者となる事件が4件も起きています。

そして、ついに先日、死亡事故(殺人事件としてもいい)が発生してしまいました。しかも被害者の男子大学生はバイク関連の会社の入社が内定していたというではありませんか。私は悲しさと怒りの感情を隠し切れません。

これは異常な事態です。煽り運転の多発に社会的な背景が絡んでいることは確かでも、これだけバイクが被害に合うのは何か原因があるはずです。昔だって、煽り運転をするガラの悪い連中はいたものです。

実は、私には思い当たるフシがあります。バイクで公道を走りだして48年目になる私が思うのは、近年、四輪ドライバーがとみにバイクに対して思いやりを示さなくなっていることです。

昔とは違って、彼らの多くはバイクを経験せずに四輪車に乗っているので、バイクにとって危険なことを理解できないのでしょう。そう考えた時、やはりあの三ない運動の影響の大きさを思い知らされます。

ただ、バイクの動きやライダーの心理を理解できないだけならともかく、三ない運動によってバイクはなくていいもの、あってはならないものとの認識を植え付けられ、さらにはバイクへの嫌悪感もが生み出され、バイクへの煽りが多発しているのではないかと思えてならないのです。

実際、バイクに嫌悪感を持つ人は、昔では考えられないぐらいに増えているのです。

我々は今、三ない運動の功罪の深刻さを認識すべきだ

三ない運動は、82年に高校PTA連合会が、「免許を取らせない、バイクを買わせない、乗せない」をスローガンにした運動推進を決議したことに端を発しているとされます。

我が子をバイク事故から守りたいのとの親御さんの気持ちは分かりますが、その功罪には計り知れないものがあるということです。

昨今、その誤った運動を見直そうとの動きがあるのは嬉しい限りですが、三ない運動の中で青春時代を過ごした人々は、すでに若年層から中堅層に達しています。事実、4件の加害ドライバーの年齢は18歳から56歳まで多岐に及んでいます。

また、行政にかかわるスタッフが三ない運動の洗礼を受けていれば、彼らにとってバイクはなくていいものなのですから、バイク行政がいかなるものになるかは言うまでもありません。理不尽なバイク駐車取り締まり、騒音排ガス規制(ユーロ4と整合性が図られたことで解消したが)、高速道路通行料などがその例です。

特定のものを否定する教育は社会に歪を生み出す

バイク市場が落ち込んでいるのは、欧州の先進国でも同じですが、日本ほど酷いわけではありません。そのことにも三ない運動が影響していることは確かで、我々はその代償と闘っていかなければならないのです。

三ない運動は、言うなれば、特定のものを否定する教育指針です。そして、そのものに対する誤った認識が植え付けられることで、社会には歪が生じます。我々はそのことを肝に銘じる必要があるのです。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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