新しいブルターレ800RRに欧州小メーカーの心意気を見る

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

大刷新されたブルターレ800RR

新しいブルターレ800RRは、コンセプトと基本をそのままに大きく刷新されていました。見ただけならマイナーチェンジでも、乗ればフルチェンジといったところです。

ユーロ4準拠とすることが第一の開発目標であったことは確かながら、それに伴ない、エンジン制御が高次元化され、低回転域の粘りやスムーズさ、トルク特性も見違えるようです。エンジンマウントの変更でフレームの捻り剛性が高められ、ハンドリングも改良されています。

また、ユーロ4準拠となったエンジンの静粛性は、ついこの間までだと国産車でしか達成できなかった水準に達しており、上質そのものです。それゆえ、歯切れの良い3気筒サウンドがより引き立って耳に入ってきます。動画からもそれを感じ取っていただけるかと思います。

MVアグスタ ブルターレ800RR「造り込まれた新技術」
和歌山利宏 試乗インプレッション

企業規模が小さくても求められる品質に変わりはない

MVアグスタは2年前に経営難が伝えられ、ここ3年ばかり、全く新規開発車が登場していませんでした。開発も滞っているのではないかと思われましたが、しっかり今日の最先端水準のものを送り出してくるのだから、恐れ入ります。

しかも、MVアグスタは欧州メーカーの中でも規模は大きくありません。でも、世の中に受け入れられるものとするのに、メーカー規模の大小は関係ありません。

充実した設備を持つ国産メーカーであれば、そのための開発を全て自前でこなすことができます。ただ、それができない欧州中小メーカーは、サプライヤーとの共同開発によって、最先端の技術水準を維持しています。

ですから、国産メーカーが総力を上げて開発した最新技術を、彼らは時期を同じくして、世に送り出し続けることができるのです。

一方で、小メーカーだからこそ造り込める新技術もある

そればかりか、ブルターレ800RRには新しい技術的な取り組みも取り入られています。

アップダウン両効きのオートシフターは今や一般化し、従来型にも採用されていますが、新型は作動精度が高くなったうえに、セッティングの方向性に変化が見られます。

普通、オートシフターはクラッチとスロットルを併用すると逆にギクシャクしがちですが、これにはそれがありません。ただ、ちょっとシフト操作が固めですが、スロットル操作を併用すれば最高です。動画でのエンジン音からも、その様子が分かると思います。

熟練ライダーは、アップ時だけでなくダウン時(高回転域でのダウンは厳しいが)も、クラッチ操作なしにスロットル操作を加えることでシフトをこなしていますが、これはそんな高等テクニックをアシストしてくれるわけです。上級ライダーであるMVアグスタユーザーに向いた設定と言えそうです。

それだけではありません。こうした流れからすると、MVアグスタはオートシフターを超越したセミオートマチック的な変速機構に取り組んでいるのかもしれません。

実は、間もなくツーリスモ・ベローチェ800ルッソの新型が発表されますが、そのネーミングの末尾にはSCSが添えられているのです。SCSとはスリッパークラッチシステムを意味しているようです。ただ、スリッパークラッチはすでに採用されているので、新型はそれを超えた新システムということになります。

単にスリッパー効果を高めてギヤダウン時のスムーズさを高めているのか、自動遠心クラッチのようなものなのか、はたまた電子制御によるものなのか、現時点では何も分かりません。でも、小メーカーだからこそ可能な新しい取り組みは、バイク乗りにとって興味が尽きないのです。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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