2ストレプリカに乗ってみてその必要性を感じたワケとは!?

【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】

▲Honda NSR250R

若者たちを熱狂させた2ストレプリカ

最近、2ストレプリカに試乗する機会があった。NSR250RやTZR250Rなど、80年代から90年代のバイクシーンを彩った名車たちだ。

2ストとは2ストロークエンジンのことで、レプリカとはレーサーを模したレプリカモデルのこと。当時はロードレース世界選手権のWGPから全日本選手権まで、メジャーレースのほぼすべてのカテゴリーが2ストマシンだった。そのテクノロジーを直接フィードバックして、レーサーそのもののデザインが与えられた市販公道用モデルが前述のレーサーレプリカだ。

ユーザーの主体は10代、20代の若者たちで、レースでの成績が新車のセールスに直結した時代。強いメーカーのスター選手に自分を投影させたバイク好きの若者たちはこぞってレプリカを買い求め、メーカーも威信をかけて高性能モデルを次々にリリース。レプリカによるSPレース全盛期で、地方選手権などは予選が何十組もあって、予選を通るだけでもそれはもう大変なものだったらしい。週末になるとワインディングには峠小僧が溢れ、その走りを見ようとコーナーにはギャラリーが集まったほど。バイクがまだ熱かった時代だ。

その熱狂のB面として事故の多発などが社会問題となり、また馬力規制や排ガス規制などが強化されたこともあり、牙を抜かれた2ストレプリカは一時の勢いを失い、90年代末までにはほとんど絶滅してしまった。ちなみにネイキッドブームが訪れたのはその後のことだ。

今の4ストとは次元の異なる走り

話を戻して、久々に乗った2ストレプリカは新鮮でやはり楽しかった。パワーバンドに入った途端、爆発的に加速する2ストエンジンと超コンパクトで軽い車体はまさにレーサーの資質そのもので、NSRと頂点を競ったTZR250Rなどは最高出力45psで乾燥重量はなんと126kgという軽さ!現在のYZF-R25が同35psで167kg(整備重量)と比較すると、スペックからもその凄まじい走りは想像できるかと思う。

▲YAMAHA TZR250R

ショートサーキットでお試し程度に走ってみたが、250ccなのになかなかアクセル全開にもっていけないのだ。今の4ストマシンとはまったく違う乗り物である。2スト特有の無機質でノイジーなサウンドや乾式クラッチのカラカラ音。白煙とともにチャンバーから吐き出される焼けた2ストオイルの匂いなど、ライダーの戦闘本能を呼び覚ます刺激に満ちている。まさに映画『汚れた英雄』の世界感だ。

その過激さ故に一般社会には受け入れられず、ややもするとバイク=危険なモノというレッテルを貼られてしまった感も否めず、時代から取り残されていった2ストレプリカだが、純粋に“速く走る”という一点で研ぎ澄まされたマシンの美学が確かにあったと思う。それが再確認できたのだった。

現代の技術で再現できないものか

かような魅力に満ちた2ストレプリカをなんとか現代に蘇らせることはできないだろうか。そう思うのは、かつて少年だったオトナたちだけではないだろう。聞くところによると今の若者層にも人気で、程度の良い2ストレプリカは中古市場でもかなりの高値で取り引きされているという。それは彼らにとっても憧れだからだ。

ご存じのとおり、2ストは4ストの倍の効率で燃焼するため馬力が出る。MotoGPでも当初2スト500ccと4スト1000ccのマシンが混走していたのはそのためで、コンパクトでパワーを出せるのがメリットだ。だだ、環境問題やセーフティという観点からも、そのまま復刻するというのはあり得ない話。自分が期待するのは現代の技術と設計思想を投入したネオクラシックならぬ「ネオ2ストレプリカ」だ。

余談だが、ホンダはかつて2ストエンジンの大幅な燃費と出力特性の向上、排出ガスの低減を狙ったAR(Activated Radical)燃焼技術にトライしていたことがある。ARエンジンを搭載したプロトタイプでパリダカも完走しているし、その技術を市販車にフィードバックしたCRM250ARを発売していた。そこから20年以上も経つ訳で、現代の技術であればさらに高性能でクリーンな2ストエンジンも開発可能ではないかと夢想してしまうのだ。

モータースポーツ復権のためにも

百歩譲って、サーキット専用モデルでもいいと思う。以前、ある著名なレース関係者が話してくれたが、「世界に通用するレーシングライダーを育てるためには、子供のころから2ストマシンに乗せる必要がある。あのピーキーなパワーと瞬発力、俊敏性がレーシングライダーとしての感性を磨く」とおっしゃっていた。思えば、かつて世界に羽ばたいた日本人レーサーたちも皆、少年時代に2ストミニで切磋琢磨しながら腕を磨いていた。

2ストエンジンは構造もシンプルで自分でもメンテしやすく、部品コストも安いのが魅力でもある。その意味では、日本におけるモータースポーツの復権のためにも2ストマシンはあってしかるべきと思う。それがクローズドコースに限定したものであったとしてもだ。

レース界の話ともあれ、2ストマシンはモーターサイクルの歴史の中で燦然と輝きを放っている。その興奮と楽しさは、今もって人々を魅了し続けているのだ。

ケニー佐川

ケニー佐川 Webikeニュース編集長

投稿者プロフィール

早稲田大学教育学部卒業後、情報メディア企業グループ、マーケティング・コンサルタント会社などを経て独立。趣味で始めたロードレースを通じてモータージャーナルの世界へ。
雑誌編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。
株式会社モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。
日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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