CB1000Rが見せた新世代ホンダハンドリングとは

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

CB1000Rのハンドリングは既存のホンダ車とは異質

新しいCB1000Rに乗って何より印象的なのは、ハンドリングがこれまでのホンダ車にないものだったことです。それは鮮烈でもありました。とにかく、リヤへの荷重感がはっきりと伝わってきます。

スロットルレスポンスについての表現に、「スロットルとトラクションが直結した感覚」というものがあります。CB1000Rにはその直結感だけでなく、リヤへの荷重感と姿勢変化の状態がありありと伝わってきます。そのことをホンダの開発スタッフに伝えると、リヤのアンチスクワット率を高めたといいます。

アンチスクワットとは、スロットルオンの加速でリヤが沈もうとするのに対抗して踏ん張る効果で、スイングアームやチェーンラインの角度によって幾何学的、力学的に生じます。逆に、スロットルオフでは減速Gによるリヤの伸びを抑えるアンチリフト効果が働きます。

実はこのアンチスクワット効果は、私自身が31年前に著した「バイク基礎工学」の中で発表した理論で、それが有機的に生かされていることにも感激だったのです。

途切れないリヤへの荷重感

おかげで、姿勢変化をコントロールしやすく、その姿勢変化と荷重変化のリズムに合わせて駆っていくことができます。

一次旋回ではフロントに荷重移動させて舵角を入れ、接地感の高まりとともに回頭性を発揮させることができます。個人的にはその際、リヤから抜けた荷重がフロントに移動したと実感できるのがファン要素として好みですが、CB1000Rではリヤへの荷重感が維持されます。リヤ荷重が定常時よりマイナスになっても、アンチリフト効果によって荷重感が伝わるのでしょう。リヤに荷重が残ったままという意味ではなく、リヤへの荷重感を保ったまま、フロント荷重を実感できるのです。

これに関しては、アンチスクワット/リフト効果とステアリング回りのディメンジョンのマッチング、フレームの剛性バランスのおかげと考えます。このバックボーンフレームはエンジンへの剛性依存度が高く、エンジン付近を中心にフレームが捻れるため、捻れたときのタイヤ接地点の移動量が小さく、接地感と回頭性が遅延なく忠実に生じるのです。

そして、二次旋回でスロットルを開き始めると、アンチスクワット効果によってリヤの荷重感が高まります。お尻への面圧の高まりは強烈なほどで、リヤのトラクションで曲がっていくことができます。

こうしたハンドリングは、これまでホンダ車には見られませんでした。
あえて言えば、ケツでマシンを操るという意味でヤマハ流リヤステア(これはあくまでもジャーナリズム側が謳った虚像ですが)に通じるものがありますし、スロットルオンでの強烈なお尻の圧力感はいくつかのカワサキ車にもありました。

いずれにせよ、これはレーシングマシンにとっても、理想的なハンドリングです。

ツボに嵌ることが面白さには大切

かつて、ホンダ車のハンドリングは「乗りやすいが面白さに欠ける」とされたことがあります。乗り手を選ばず、取っ付きも良く優等生的であっても、乗りこなしていくことによる感動を得にくいというのです。

これに対し、国産他メーカー車や外国車、特にイタリア車では、ツボに嵌る(勘所を抑える)ことによって面白さの奥深さが広がりがちです。ホンダ車はツボに嵌る必要がないわけで、それは優等生であることの裏返しかもしれません。もっとも、私はこのことを肯定していました。ホンダ車は一部のマニアではなく、多くのライダーに受け入れられるものでないといけないからです。

ただ、そうしたイメージは、ここ10年余りの間に払拭されてきました。忠実なコントロール性が追求されたことで、操る面白さが高次元化されてきたと思っています。

それでも、CB1000Rはホンダらしくワイドレンジ

そして、CB1000Rはさらなる新次元を思わせます。荷重感のリズムとシンクロすることでツボに嵌ることができます。マシンとのダンスを楽しめるのです。

となると、マニアックなハンドリングを想像しがちですが、決してそうではありません。スーパースポーツエンジン搭載の高性能ネイキッドにありがちなステアリングの重さもなく、身構えることなく、街乗りできるのです。

クルージングでは、これまでのホンダ車の基準からすると、フロントに落ち着いた安定感が欠けると思えないでもないのですが、軽快感が維持され、楽しさを予感させると考えれば、何の問題もありません。

ともかく、ホンダらしいワイドレンジぶりも健在です。そんなわけで、これをホンダの新世代ハンドリングとしていいのではと勝手に考えている私です。

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和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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