新しいゴールドウイングはフロントサスの常識を打破していた

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

ラグジュアリーツアラーであっても、根底にあるキャラはスポーツ

まず、私がゴールドウイングで走っている写真を見て、笑わないで下さい。確かに車体の巨体ぶりによって私の小柄さが強調され、カッコ良くはありません。

でも、乗っている本人は、至って気持ち良さに浸っているのです。快適なうえに、マシンを操っている感があって、スポーツ心を刺激されることが、また快感なのです。さらに、エンジン特性やDCTセッティングの素晴らしさが、その快適なスポーツ性を高次元なものとしてくれていました。

私は、昨秋の東京モーターショーに出展されたゴールドウイングを見て、それへの期待をコラム「新型ゴールドウイングは単なる正常進化を超越した刷新形だ」 で紹介したことがありました。

そして、実際は期待をはるかに上回っていたと言って差し支えありませんでした。

新しいフロントサスはゴールドウイングの本質ではない!?

そのコラムにもあるように、私にとって新型ゴールドウイングへの興味の中心は、フロントのダブルウィッシュボーンサスにありました。でも、開発者とお話していて思ったのは、このフロントサスのおかげだけで、ゴールドウイングが高次元化されたのではないということです。

跨って、傾いた車体を起こすときの重量感が桁違いに軽く、38kgの軽量化も大きく貢献しています。エンジンのコンパクト化、ピボット付近の車体剛性の改善、ダブルウィッシュボーンサスによって可能になった操舵軸位置の最適化や補器類レイアウトなど、全てによる集大成であるに違いありません。

その意味では、このフロントサスは新ゴールドウイングの本質ではないのかもしれません。でも、従来型や一般的なモーターサイクルとは一味も二味も違うハンドリングに注目すると、それがダブルウィッシュボーンサスによってもたらされていることも、事実だと思えてきます。

絶妙な安定性と操縦性のバランス

新しいフロントサス採用の理由をお聞きすると、「重量400kg近くに及ぶ車体をテレスコピックフォークで支え、そのフォークで転舵と緩衝の両機能を担わせることには限界があると考えたからです」とのことでした。

私は昨秋のコラムで、38年前にダブルウィッシュボーンサスのボルドー24hrマシンに乗った印象として「歩くような速度で自動操舵機能が期待ほどなくバランスを崩しそうになっても、サーキットではステアリングの動きが車重の影響を受けず軽快で、路面の不整にもニュートラル性を保ち、余韻も残さない」と記述しています。

実際、転舵と緩衝の機能を分離できたことで、新型ゴールドウイングにもそれがそのまま当て嵌まります。荒れた路面でのコーナリングでも車体はあおられることなく、サスペンションは吸収性を発揮してくれます。

停止寸前の極低速において、ステアリング操作で安定を保とうとすると、心なしか一般的なテレスコピックとは違ったフィーリングもあるのですが、教習所で一本橋走行をこなすが如く、腰でバランスを取るほどに、従順になってくれます。

でも、その事実がゴールドウイングのスポーツ性を物語っているとも感じます。一般公道では、基本どおりに腰で操れて、マシンの反応を阻害する粘りとか重さの類はありません。それでいて、高速道路で速度が上昇すると、驚くほど直進安定性が高まっていきます。それでも、忠実に進路変更できるのですから、キツネにつままれた気分です。

あらゆるシチュエーションにおいて、操縦性と安定性のバランスが絶妙で、安心感がベースにありながらも、操る面白さが伝わってきます。

新型ゴールドウイングのスポーツ心に訴えられる快適性は、そんなところから来ているのではないかと感じたのでした。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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