モトGPのライディングスタイルは原点回帰形であり革新形でもある

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

ライディングに基本を逸脱した特異形はない

前回のコラム「パニガーレV4に作り込まれたモトGPのライディングスタイルとは」において、現在のモトGPマシンがどのように変化し、どうしてあのような乗り方が生まれたのかについて書きました。

今回は、私の不定期連載「ライテク都市伝説を斬る」とも照らし合わせ、このライディングスタイルについて、もう少し詳しく解説してみましょう。すると、奇異にも見えても、基本に回帰していることにも気付かされます。

【関連ニュース】
パニガーレV4に作り込まれたモトGPのライディングスタイルとは
ライテク都市伝説を斬る

コーナー手前の足出しは、曲げらないマシンを曲げるための方法論

パニガーレV4は、ホイールベースが長く、キャスター角もストリートバイク並みに寝ていて、フレーム前部も柔軟なものとなっています。こうした車体はツアラーに近いとも言え、安定性重視で、神経質な挙動も抑えられています。

すると、一次旋回でのシャープな回頭性は期待できません。でも、だからと言って、ライダーはなす術もなく、マシンに身を任せているわけではなりません。大きく体幹に働きかけて、曲がらないマシンを精一杯曲げているのです。

今、多くのライダーがブレーキング区間でイン足を出しますが、これは野球のバッティングでピッチャー側の前足を前方に振り出す動きと同じです。前足股関節は外旋し、骨盤は前方へ引き寄せられようとする一方、後足(軸足)も外旋し、野球で言うワレ(体幹を左右に広げて割るイメージ)を作ることになります。

その後、バッティングでは前足を後側に引き寄せ、コーナリングではイン足を元に戻しながら内旋させることになりますが、そのとき左右に割れていた体幹は勢い良く閉じ、骨盤はイン側(バッティングでは前側)に動き、体重移動が開始されます。

昔だったら、ステップを踏みかえる程度のステップワークで事が足りたのですが、今のマシンにはこうした明確に大きい身体操作が要求されるのです。

二次旋回では、さらにワンアクションが加わった

そうして、バッティングでは前足は接地し、骨盤の移動に遅れてこちらを軸に体幹が回旋を始めます。このステップワークがライディングではコンマ何秒間の内足荷重となります。

バッティングではそのまま前足に体重が載りますが、コーナリングでは体重をシートに預けることで、内足から荷重は抜け、二次旋回が始まります。付け加えると、オフロードでイン足を出すのはこのタイミングです。これによって一次旋回での前荷重から後荷重となります。

人間の身体操作は脊髄動物の最も古い祖先である魚類の泳ぎ方に由来しています。背骨波動が上下しながら身体が動いていくのです。ですから、骨盤がイン側に移動した後、体幹は遅れて弓がしなるようにイン側に移動していきます(この時点で骨盤が回ると腰が開き良くないのは、バッティングもコーナリングも同じ)。

昔だったら、この状態で上体がややリーンアウト気味でリヤスライドをコントロールしながら、クリップを目指したのですが、今のライディングではさらに先があります。背骨の波動が頭に達した後、下降、骨盤に達したことで大きく腰が回り、肘を擦らんがばかりに、上体がインに入るのです。

これまでにない身体操作を伴ない、革新的というわけですが、考えてみると、60年代の両膝を閉じたまま大きくリーンインさせたフォームも、これと似ていると言えないでもありません。今のGPスタイルは革新的なようでも基本通りでもあるのです。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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