パニガーレV4に作り込まれたモトGPのライディングスタイルとは

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

既にお伝えした試乗記事「パニガーレV4はモトGPマシンに最も近い量産市販車だった」において、私はパニガーレV4が要求してくるライディングスタイルに衝撃を受けたと書きました。そのことをもっと具体的に知りたいとの声も届いたので、ここで私の見解を紹介するとしましょう。

あの肘を摺るようなコーナリングフォームは、タイヤのグリップ性能が向上、深いバンク角が可能になり、さらに身体を大きくイン側に移動できるようになった結果と考えておられる方が多いと思います。実際、エッジグリップに優れるブリヂストンのワンメイクになった2009年から、多くのライダーがそうしたフォームを見せるようになり、2013年にはそれが完成の域に達していたと思えます。

ですから、そのこと自体に間違いはありません。でも、それだけでしょうか。200数十psと言われる超高性能や電子制御武装に合わせて車体も変化し、それに合わせてライディングスタイルも進化してきたと思えてならないのです。

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激しい慣性力に対し、安定維持するための方向性

モトGPマシンは高出力ですから加速性能が凄まじく、また軽量でブレーキ性能も高いため、マシンには激しい加減速Gが生じます。それに対して安定を維持するには、ホイールベースは大きくならざるを得ません。リッタースーパースポーツのそれが1400~1420mm程度にあるのに対し、モトGPマシンは1460~1470mmと長くなっています。

また、タイヤの進歩とマスの集中化によって、旋回Gも大きく生じるようになっています。すると、かつてのように初期のフロントを使う1次旋回で舵角を入れて回頭性を高めることを追及しても、神経質なピンポイント的なものになりかねません。ホイールベースも大きいので、それが報われにくくもあります。

そこで、向かうべき方向は、リヤに荷重を移してフルバンクさせ、クリップに向かう2次旋回での旋回性とコーナリングスピードの向上です。

車体は回頭性よりも安定性重視で、接地感を高める方向となります。キャスターアングルもあえて立てるのではなく、ストリートバイクと同等の24.5°くらいに寝かされています。

車体剛性も、かつてのようにフレームのステアリングヘッド回りをがっちり固めるのではなく、柔軟性を感じさせるものへと変化しています。事実、パニガーレV4のフロントフレームは柔軟で、フロント周りの神経質な硬質な挙動が排除されています。

そのためパニガーレV4は、2次旋回でさらなるリーンが可能な予感を訴えてきます。
すると自ずと、スロットルを開き、腰を大きくずらすことなくリヤへの荷重を保ちながら、上体をイン側に大きく入れてやることになります。1次旋回終了時にすでに深くバンクしているので、そこから上体をイン側に入れて対処していく感覚でもあります。その結果が、肘を擦るようなリーンインスタイルというわけです。

これがかつてのスタイルだと、2次旋回で腰をずらしても、上体はリヤスライドに対処しやすいリーンアウトで身構えるのが自然であったのですが‥‥。

とは言っても、40年以上に渡ってのスタイルが染み込んでいる私は、すぐにそんな風には乗れません。腰や体幹部の柔軟性も必要で、頑張って腰で上体を入れたつもりでも、今度は首が前方を向かず、何とか前を見ても、イン側低くにある目からはアウト側が見えず自分の感覚で乗れないという有様です。

そんな練習をしていたらテスト走行にもならないというわけで、今回の私の走りは自分のスタイルのまま、マシンの特性に合わせたものと考えてください。

ともかく、モトGPのライディングスタイルがいかなるものなのか、それを考えるヒントを与えてくれたという意味でも、パニガーレV4は偉大なバイクだったのです。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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