BMWの一人勝ち!? 不振の2輪業界で業績アップの理由とは

【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】

国内販売では過去最高を記録

BMWグループが日本市場における2017年の販売実績において、4輪外国メーカー輸入車では9年連続でトップとなる77,954台(MINI含む)を記録。2輪車においても5,000台の大台を突破する過去最高の5,230台の販売を記録したという。

その理由として、革新的な電動バイク「C evolution」の導入、BMWグループのブランド体験型販売拠点BMW GROUP Tokyo BayでのBMWの2輪車販売の開始、2輪車業界初となるETC 2.0の全車標準装備など顧客ニーズを満たしてきたこと。さらに最大要因として、BMWの2輪量販モデルにおいて初の普通自動二輪免許で乗れる「G 310 R」と「G 310 GS」の導入を挙げている。

2輪マーケットが萎んでいく日本の現状で、何故BMWは業績を伸ばすことができたのか、その理由を探ってみたい。

▲C evolution

▲G 310 R

▲G 310 GS

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輸入車全体ではやや下降気味

前回のトピックスでも伝えたが、2017年の小型二輪車(251cc~)新車販売台数は前年比1.7%増の6万4,003台と3年ぶりのプラスとなっている。ただ、輸入車などは同96.9%の2万2,534台と若干減。

輸入車トップ4の中でも、首位のハーレーダビッドソンや3位のドゥカティが減じている中で、2位のBMWは15%近い大幅な伸びを示している。トライアンフも伸ばしているが、やはり2017年はBMWの当たり年だったと言える。

憧れを売るブランド

理由としてまず巧みなブランド戦略が挙げられるだろう。先のリリースでも明らかなように、4輪では9年連続で国内での輸入車販売台数トップに立つなど、メルセデス・ベンツやアウディを含めたドイツ車御三家の中でも大きな存在感を示している。

その圧倒的なプレステージによるイメージ戦略は強烈で、世界的なブランド認知度では自動車メーカーとしては「TOYOTA」とトップを争うほど。日本でも青白に十字円のエンブレムを知らない人はまずいないでしょう。

その高級・高性能・高品質なプレミアムカーのイメージをそのまま2輪に置き換えたモーターサイクルを所有できる満足感は、やはり強力な購入動機付けになるはずだ。つまり、ブランドへの“憧れ”を売っているのだ。

ちなみに国産ではホンダとスズキも4輪と2輪の両方を手掛けているが、ブランド力という点ではBMWに軍配が上がるだろう。トヨタやベンツやアウディも2輪車を作っていれば、きっと面白い展開になったと思うが、残念ながら4輪メジャーで2輪も作っているのは海外ではBMWだけだ。

BMWのバイクを所有している人に聞くと、クルマもBMWという人も多い。一昨年に東京・台場にオープンした「BMW GROUP Tokyo Bay」も含め、クルマのディーラーでバイクも展示または販売していることも、新たな優良顧客の獲得につながっているはずだ。

▲BMW GROUP Tokyo Bay

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小さくても本物な「G」シリーズが変えた

▲G 310 R

BMWというと2輪でも高級車のイメージがある。それが強みでもあり、弱みでもあったが、2017年に発売されたBMWモトラッド初のスモールモデルである「G 310 R」と「G 310 GS」の登場によって一気にその様相が変わってきた。

ちなみに「G 310 R」は排気量313ccの水冷単気筒エンジンを搭載するスポーツネイキッドモデルで、後方排気エンジンという独特のレイアウトが特徴。シリンダー自体を通常のバイクとは逆に後傾させることで、前後分布荷重を最適化させるという技術的にも合理性のあるコンセプトがウリだ。

インド生産だが、KYB製倒立フォークやBybre製(ブレンボのサブフランド)ブレーキなど一流コンポーネンツを採用するなどBMWの名に恥じない質感が与えられ、走りもBMWらしい剛性感とスポーティさが味わえる。

▲G 310 R

一方の「G 310 GS」はRをベースにオフロードテイストを盛り込んだモデル。フロント19インチのホイールや長めの前後サスペンションを採用し、アドベンチャー系のフラッグシップモデルであるR 1200 GSシリーズと共通イメージのデザインが与えられるなど本格的な作りが魅力となっている。

小さくてもBMWらしさに手抜きがないところがユーザーの心を掴んだのだろう。

▲G 310 GS

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価格と免許の2つの壁を壊したモデル

「G」シリーズの価格はRで59万9,000円(GSは69万9,900円)と国産250ccスポーツ並み。さらに排気量的にも普通二輪免許(いわゆる400ccクラス以下)で乗れるということで、価格と免許の両面で一気にハードルを下げたのが効いた。

“バイク離れ”と言われて久しい若者や、ブランクの長いリターンライダーでもすぐに乗り始められる庶民感覚のBMWとして登場したのだ。

有力ディーラーでも聞いてみたが、「G」シリーズについては若者による指名買いが多いそうだ。

▲G 310 R

フルライン戦略への切り替えが奏功

もうひとつは商品戦略の転換だ。
世界のビッグ4と言われるホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキなどの国産2輪メーカーは、50ccの原付スクーターから1000ccを超える大排気量スポーツモデルまで幅広いラインナップを揃えることで広範なユーザーを獲得してきた経緯がある。

BMWはというと、つい20年ほど前までは空冷縦置き水平対向2気筒エンジンにシャフトドライブという、戦前のドイツ軍でも使われたR32以来の伝統的なレイアウトを踏襲した「R」シリーズが主体だったが、最近では並列4気筒/6気筒の大型スポーツツアラー「K」シリーズや、並列2気筒のミドルクラス「F」シリーズ、4気筒スーパースポーツ「S」シリーズやマキシスクーター「C」シリーズとそのEVモデルである「C evolution」、そして今回新たに加わった小排気量の「G」シリーズなど、異なる排気量とエンジンレイアウトによる多彩なカテゴリーを揃えるフルライン戦略に舵を切ってきた。

▲K 1600 Grand America

最近はドゥカティやKTM、ハーレーなどの輸入車メーカーもダウンサイジングした新型モデルを一部展開しているが、まったく新しい独立したモデルとして成功している例は少ないし、ラインナップの広がりという点でも輸入車ではBMWが群を抜く。

イメチェンに成功したBMW

今のアラフィフ世代にとってかつてのBMWは、名前こそ有名だがデザイン的にもメカニズム的にもちょっと旧態然とした印象だったかもしれない。

それがここ20年ほどの間に独創的なコンセプトと先進的なテクノロジーを兼ね備えたイノベーターとしての存在感を俄然増してきた。加えて元から歴史とブランド力は十分なわけだから、商品価値が上がるのは当然といえば当然である。

BMWのスマッシュヒットには今後の2輪市場を盛り返すためのヒントがありそうだ。

ケニー佐川

ケニー佐川 Webikeニュース編集長

投稿者プロフィール

早稲田大学教育学部卒業後、情報メディア企業グループ、マーケティング・コンサルタント会社などを経て独立。趣味で始めたロードレースを通じてモータージャーナルの世界へ。
雑誌編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。
株式会社モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。
日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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