バイクの電子制御はどこまで進化するのか ボッシュのIMUは6軸へ

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

ボッシュはバッテリー、点火プラグ、ライトのバルブなどといった身近な電装品で有名なドイツのメーカーですが、ことバイクに関しては、電子制御のリーディングカンパニーとして注目されています。

私が初めてボッシュを知ったのは、40年以上前、卒業研究の実験に使ったディーゼルエンジンの噴射ポンプに“BOSCH”と刻まれていたときでした。今から100年以上前にボッシュは日本に上陸しており、それはボッシュのライセンスの元、日本で生産された製品だったのでしょう。ボッシュは自動車の電装部品や精密部品のパイオニアなのです。

今日、そのボッシュは高性能バイクを語る上で避けて通れなくなっています。

電子制御はボッシュの独壇場

最先端技術では、IMU(イナーシャ・メジャーメント・ユニット=慣性計測ユニット)で車両の姿勢や運動状態を感知し、そのデータによってトラクションコントロール、ウィリーコントロール、コーナリングABSに加え、モデルによっては電子制御サスペンションなどを制御しています。

スーパースポーツはもちろんのこと、アドベンチャーだけでなく、スポーツツアラーにも採用され、一般使用で制御の介入を認識させないまま、不安定な挙動が起きないように出力を抑える域に達しています。
つまり、高出力であってもいたずらに高出力を感じさせず、上質感が保たれるのです。

このIMUは、国内外車を含め、現在はボッシュのMM5.10の独壇場です。私の知る限り例外は、自社開発のヤマハYZF-R1用とコンチネンタル製と言われるスズキGSX-R1000用の6軸センサーだけです。

しかも、ABSに関してもボッシュが圧倒的シェアを占めています。ボッシュがセンサーのみならず制御の一部分を担っているのですから、この分野における優位性は揺るがし難いと言って差し支えありません。

ただ、MM5.10は、前後、左右、上下の3方向の加速度と、ロールとヨーの角速度を検出する5軸センサーです。ピッチに関しては他のデータから演算できるということで、6軸相当として扱われているのですが。

とは言え、演算による応答性か正確さの問題なのか、6軸のR1と1000Rのほうが制御の緻密さに勝るというのが、実際に私が乗っての見解です。レーシングマシンなら前後サスのストロークセンサーからピッチ角速度(ピッチレート)を検知することも可能でも、公道用の市販車では6軸に分があると思えてならないのです。

さらに進化し高次元へ

先のEICMAでは、日本の横浜に拠点を構え、この分野の開発を担うモーターサイクル・パワースポーツ部門のボスであるジェフ・リアッシュさんにお話をお聞きする機会に恵まれました。

果たしてボッシュのIMUは5軸のままなのだろうか。私の疑問に彼はあっけなく、2018年には6軸のMM7.10を投入するとのこと。全ての制御がさらに高次元されると期待できるわけです。

さらに彼は、ボッシュの技術を実際の交通環境における安全性向上に発展させていくビジョンについても語ってくれました。

CCU(コネクティビティ・コントロール・ユニット=接続制御ユニット)によって、外界とネットワーク接続し、数100mの範囲内で、交差点に近付いたり対向する車両、停止した車両を感知し、警告を与えるというのです。

また、転倒や事故のときは、IMUがそれと判断すると、接続されているライダーのスマホから情報を自動発信し、緊急救助にも役立てることができるといいます。

EICMAのブースには、電子制御に関わる装置を説明するオブジェが展示されていました。それには前後左右にハイソニック(超音波)センサーが設けられ、接近する他車の情報を発信、車線変更での安全性を高める装置も備わっていました。

電子制御といいますとライディングの面白さを去勢しそうなイメージもありますが、安全性を高めることで、より純粋に楽しめると期待もさせてくれるのです。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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