EICMAでは多くの小メーカーがグローバル化によって活路を見出していた

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

▲Continental GT650

バイクに限らず、全ての業界においてグローバル化は、今や避けては通れません。

当然ながら大メーカーは存続のためにそうした取り組みを行っていますが、小メーカーがグローバル化によって息を吹き返し、発展しようとしています。そのことが今回のEICMAでは大変に印象的でした。

ここで、そんな実例を5つばかり紹介しましょう。やはり、発展途上にあり世界の人口の3分の1を有する中国とインドを抜きに、バイク業界の存続は考えられないことが、浮き彫りになってくるのです。

その一:SWM

SWMはミラノ近郊にあって、1971年に2人のモトクロスライダーによって創立され、実績も残すのですが、1984年に活動を休止していました。

でも、今は中国資本の投入で復活、MVアグスタの傘下にあったハスクバーナの工場で生産され、ラインアップも増やしています。

現在のラインアップは、中小排気量クラスのオフロードバイクやクラシカルモデルが中心なのですが、EICMAでは、水冷単気筒をトラスフレームに搭載する今日的なベーシックロードモデルのプロトタイプを出展していました。世界戦略を窺わせるのです。

▲Naked proto

その二:ベネリ

イタリアのペザロにあるベネリは、1911年創立の名門メーカーです。1970年代に衰退しますが、1996年に資産家の息子が再建に動き出し、1999年に発表された3気筒スーパースポーツのトルネードが注目を浴びたことは記憶に新しいところです。

新生ベネリには、バイク産業で活躍していた旧知のイタリア人も関わっており、私自身、3度ばかりペザロを訪問しています。

でも、実際には負債が膨らみ、2005年に撤退。しかし、中国のチェンジャン(QJ)の資本により存続します。ただ、間もなく、生粋のバイク業界の人たちは去り、中国色に染まり、イタリアのバイク業界の中で孤立した感もあって、私の足も遠のきました。

ところが、ラインアップを多彩に増やし続け、大市場のインドにも進出。確実に成長しています。今回のEICMAでは、750ccの360°クランクの並列2気筒をトラスフレームに搭載する752Sなどを発表しています。

▲752S

その三:モンディアル

イタリアのモンディアルは、ホンダがGP参戦を目指したとき、彼らのレーシングマシーン(そのマシーンは今ももてぎに展示されています)を手本としたことでも知られる名門です。

1999年に実業家の情熱によって復活、ホンダSP2のエンジンを搭載(他社にエンジンを供給しないホンダですが、かつての縁があって供給が実現したという曰く付きです)するピエガを市販しながら、2004年で幕を閉じていました。

でも、2014年にペルピ・インターナショナル社によって再復活、2015年のEICMAではHPS(ヒプスター)125/250を発表しました。

今回は249ccの水冷DOHC4バルブを搭載するSPS300を2018年型として、またカフェレーサータイプのスポーツクラシック・コンセプトを参考出展しました。

▲SPS300

▲Sport Classic 300 concept

それらに搭載されるエンジンは中国で生産されるピアッジオ製で、中国市場を見据えた活動が展開されていることが感じられます。

その四:ノートン

イギリスのノートンは、1898年設立の名門です。

紆余曲折を経ながら1977年に幕を閉じるも、1988年にはロータリーエンジン搭載のコマンダーを引っ提げ、復活。でも、完璧な復活は2009年まで待つことになります。そして、現在は、伝統的なバーチカルツインを搭載するコマンダーがラインアップされています。

EICMAではV4SSを展示。アルミパイプを組み合わせたツインスパーフレームに、1199.8ccの75°V4エンジンを搭載したモデルです。最先端技術が投入され、技術的にも最高水準にあることが分かります。

▲V4SS

純英国産であることを謳うノートンですが、カンファレンスではインドのキナティック社との市場開拓や技術供与面での提携が発表されました。世界市場に進出していくには、インドは重要な拠点ということのようです。

その五:ロイヤル・エンフィールド

インドのロイヤル・エンフィールドは、そもそもはイギリスの名門です。

かつての植民地のインドに1954年に現地工場を設立しながら、1970年に倒産するのですが、その後もインド側が生産を続行して存続。1995年にはボルボとの合弁企業のエーカーグループ傘下に入り、活動を活発化させています。

2013年には刷新されたコンチネンタルGTの発表試乗会をロンドンで開催。インド主導ながらも、英国メーカーであることの主張も感じられたものです。

やはり、彼らは間もなく、イギリスに技術センターを設立。技術部門を率いるのはトライアンフの技術者だったサイモン・ワーバートンで、多国籍の技術者が働いています。そこで開発されたのが、排気量648ccで空油冷OHC4バルブの並列2気筒エンジンです。270°クランクで、最高出力は47ps、当然、ユーロ4に合致させています。

そして、その新開発エンジンを搭載するツーリングタイプのインターセプターINT650と、カフェレーサータイプのコンチネンタルGT650も発表されました。

▲Interceptor INT650

▲Continental GT650

本当の意味での世界戦略を図るには、イギリスへの里帰りも必要との判断があったと思えてなりません。これもまさにグローバル化です。

産業構造の変化によって衰退を余儀なくされる企業がある一方で、このようにグローバル化によって復活し、成長しようとしている例もあるのです。

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和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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