東京モーターショー関連コラム 第二弾 新型ゴールドウィングは単なる正常進化を超越した刷新形だ

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

今回の東京モーターショーに出展されたニューモデルの中で、私にとって最もインパクトがあったのがゴールドウィングでした。

1988年型GL1500から2001年型GL1800へと進化したときの感動は、まだ昨日のことのようです。そのときはもうこれ以上のものは望めないと思ったのに、17年経ち、また大きく刷新されたのです。技術の進歩というのは凄いものです。

そして、コンパクト化され7速DCTを備えるエンジンもさることながら、フロントに採用されたウィッシュボーンサスに、私は特別な感慨を抱いています。

フロントに採用されたウィッシュボーンサスの原点

このフロントサスは、上下のアームがフレーム側と前輪支持フォーク側を結び、両アームが揺動運動するという意味で、四輪のダブルウィッシュボーンサスと共通点があります。
そもそも、このシステムは、70年代にスコットランドのノーマン・ホサックが考案したホサックフォークに原点を見出すことができます。

これを実車に具現化し、いち早く走らせたのはフランスのクラウデ・フィオで、ホサック/フィオ方式とも言われています。フィオはヤマハXS1100のエンジンを搭載した耐久マシンを、1980年のボルドー24時間耐久レースで8位入賞させています。ソノートヤマハ(現ヤマハフランス)によるチームからの参戦で、ヤマハからチューニングしたエンジンを供給するというものでした。

市販車への具現化の問題点

当時、XS1100の開発に携わり、1979年の鈴鹿8耐にもXSで出場していた私は、このユニークなマシンに興味を持ち、ボルドーで走らせてくれと言ったものです。さすがにそれは叶わなかったものの、テスト走行は実現しました。

そのときの印象は、今も鮮烈に覚えています。燃料タンク前部が高く盛り上がり、ライポジは大柄であっても、ノーマルにはない軽さです。でも、歩くような速度で走り出したときは、自動操舵機能が期待ほどなくバランスを崩しそうになりましたし、リンクを介した操舵感にわずかな遊びも感じました。

それでも、サーキットを流し始めると、素直さに驚くことになりました。ステアリングの動きが、車重の影響を受けず軽快で、また路面からの不整にもニュートラル性を保ち、余韻も残しません。アンチダイブ効果も備わっていて、うねった路面での寝かしながらのブレーキングの安定性は、ノーマルとは別次元でした。

ただ、これを市販車に具現化するには、私が感じた問題点の対策も含めた基礎研究から、仰々しくもあるシステムをいかに量産車向きにレイアウトするかなど、膨大なマンパワーと予算が必要になることは明らかです。結局、私のテスト走行だけで立ち消えになってしまったのです。

ところが、2004年にはBMWがK1200にデュオレバーとして具現化、さらに今回、新しいゴールドウィングにも展開されることになるのです。37年前に創成期のこのシステムに触れながら、可能性を断ち切ってしまった自分が情けなくもあるのです。

ホサック/フィオ方式の利点

このシステムの利点は、どこから生まれるのでしょうか。

それは、操舵機能と緩衝機能がお互いに影響を受けず、別々に発揮されるということになりましょうか。

一般的なフロントフォークだと、前輪を操舵させるフォークそのものが伸縮して緩衝機能を発揮するので、それが操舵機能にも影響します。でも、ホサック/フィオ方式だと、前輪支持フォークがサスペンションとして上下しても、操舵リンクの動きによって操舵機構は影響を受けないので、ハンドリングの忠実性が高まるわけです。

また、ホサック/フィオ方式だと、上下アームの角度によって、サスペンションストロークに伴なう前輪の軌跡を制御することができます。ノースダイブに伴なうホイールベースやキャスター角の変化を抑え、ノーズダイブ効果を加えることもできます。

新しいシステムのハンドリングに期待

さて、ホンダの新しいシステムは、上下アームを持つという点でウィッシュボーンタイプであっても、独自の方式と言えるもので、パテントも出願されています。

これを、BMWのデュオレバーと比較してみましょう。デュオレバーは、ホサック/フィオ方式を忠実に具現化しながら、量産車向きにレイアウトを最適化させたものと考えて差し支えないでしょう。

これは、アッパーアームとロアアームの前端で、前輪支持フォークをピロボール支持しています。スペース的に自由度は大きくなく、ハンドル切れ角にも制約を及ぼしがちです。また、上下の大型ピロボールは操舵と緩衝の両方の動きに対して自由度を負わされ、お互いへの影響もないわけではないでしょう。

でも、ホンダ方式だと、アッパーアームとロアアームの前端には、揺動運動のみが可能なステアリングヘッドが支持され、前輪支持フォークはステアリングヘッド内の軸を中心に、操舵できるようになっています。より高次元に操舵機能と緩衝機能を独立させ、ハンドル切れ角も確保しやすいことになります。

新しいゴールドウィングでは、極低速域から軽快で忠実に操れるハンドリングを実現していると期待できます。従来型以上に、巨体を感じさせないものになっているのではないでしょうか。

【東京モーターショー関連コラム】
第一弾 見事に開発が進行していたMOTOBOT
和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

この著者の最新の記事

関連記事

編集部おすすめ

  1. 鈴鹿F1日本グランプリ地域活性化協議会は、鈴鹿市役所 1階の『モータースポーツ振興コーナー』…
  2. 生活の可能性が拡がる喜びを提供 Hondaのナイジェリアにおける二輪車生産販売子会社「ホン…
  3. オートバイパーツ・用品の販売を全国展開する2りんかんは、バイク乗りコスプレイヤーの「美環(み…
  4. ボッシュが形づくる二輪車の未来 ボッシュは、自社のモーターサイクル&パワースポーツ事業が、…
ページ上部へ戻る