東京モーターショー関連コラム 第一弾 見事に開発が進行していたMOTOBOT

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

ちょうど2年前、前回の東京モーターショーにおいて出展されたヤマハのMOTOBOTについて、私は「ヤマハのヒト型自律ライディングロボットにあえて物申す」というコラムを書きました。

【関連ニュース】
◆ヤマハのヒト型自律ライディングロボットにあえて物申す

疑問を覚えたライディングロボットのPR方法

ロボットにライダーとしてバイクを操縦させることで、バイクとライディングの本質を探究するとともに、ロボットにテストライディングさせることで、操舵入力やスロットル、ブレーキの操作を一定に保つことができ、バイクの特性を定量的に把握できるようになります。また、ライダー支援装置の開発に繋げることもできると思います。

このように、基礎研究に大いに有効なロボット開発ですが、それが”ヴァレンティーノ・ロッシに勝てるライディングスキルを目指す”ということに疑問を覚えたのです。

ライディングは荷重コントロールで成り立っています。でも、その荷重コントロールは、身体そのものを移動させるのではなく、身体を変形させることが大切になります。身体を動かすことなく、体重を移動させるわけです。いわゆるボディラングエージがキモになるのです。

でも、MOTOBOTは体幹に柔軟性を備えていません。それでは本来のライディングに近づくことなど到底できません。

ロッシの背中が見えてきた?

今回、私はショー会場で、開発担当者の方をお会いし、意見を交わす機会に恵まれました。
MOTOBOTはアメリカのシリコンバレーにあるヤマハの研究施設で開発されており、向かって左側がHiro Saijouさん、右側がKeiji Nishimuraさんです。

私の疑問に対しては、「そうしたことも承知しておりますが、実際の研究開発においてロボットがテストライディングするには、それなりの技量を持っていることも必要になります。そのスキルの目標を掲げるに当たって世界最高レベルを目指そうというわけです」

納得です。実際、今回のショーではロッシとのサーキット走行でのタイムトライアルの動画を放映。ロッシのラップタイムが1分25秒であるのに対し、MOTOBOTは32秒遅れで走り抜けたのです。

ただ、ロッシの背中が見えてきたとのスピーチもありましたが、32秒遅れだとコーナーの入り口で抜かれたら、次のコーナーではもう見えないというレベルなので、背中が見える水準には達していません。それにコーナリング中の挙動は危なっかしいものです。

それでも、このタイムはそこそこ上級のライダーがサーキットの走行会で走る水準にあると見ていいでしょう。操舵力だけの操作でも、無駄なくブレーキングし、スロットルを開け切っての走りであるはずです。でないと、あれだけのタイムは出せません。

また、今回のVer.2では、ロボットのボディをカーボンファイバー製とし、軽量化と剛性アップを図っています。同じ操舵入力を与えるにしても、腕が軽く剛性も高ければ、それだけ応答性が高まり、基礎研究データを精度に高いものとすることができます。

確実に進化していたのです。

操舵の本質を考える

バイクは操舵入力なしに正確に安全に走らせることはできません。でも、それは本質ではありません。私はスクールなどでは逆操舵のことは忘れてくださいと言います。

逆操舵が旋回のための技術であると覚えてしまうと、肝心のボディラングエージはないがしろになってしまいます。それに、コーナーに進入してもっと曲がりこみたいときに逆操舵してしまうと、待っているのが転倒であることは、バイク乗りなら分かってもらえるでしょう。

MOTOBOTの取り組みは大変に興味深いですし、応援したくもなります。

ただ、バイクは人を幸福感で満たすことのできる素晴らしい乗り物であっても、乗り方を誤ると生命の危険を及ぼしかねない危険な乗り物でもあるのです。

それだけに、操舵入力やスロットル、ブレーキの操作だけで、バイクをコントロールできるといった誤った認識を発信していることが残念でならないのです。

和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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