ライテク都市伝説を斬る その11 [コーナリングは膝擦り]

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

膝擦りが安心感を高めてくれることは事実

私が初めて膝擦りを経験したのは、ちょうど29年前でした。

すでに、GPに参戦を開始し、78年の世界チャンピオンになるケニー・ロバーツがニースライド走行を見せており、また全日本でも飛ぶ鳥を落とす勢いだった故石川岩男選手がよく似た走りを披露してくれていました。でも、それはまだ別世界の憧れに過ぎませんでした。

忘れもしません。78年の全日本鈴鹿大会のことです。練習走行で偶然、石川選手の後ろを走る幸運に見舞われたのです。こういうときは、ラインだけではなく、ライディングフォームやタイミングまでもがお手本となり、勉強できる機会なのです。

自然とイン側に身体を落とすフォームとなり、同じリズムでコーナーに入っていったら、何と路面に膝が擦るではありませんか。それはもう、びっくりの感激です。

そればかりか、経験したことのない安心感と、コーナーを攻めたという充実感に満たされたではありませんか。それ以来、私にとって膝擦りは、コーナリングのバロメーターとなったのです。

ただ、考えてみると、それ以前、バンク角を探るために爪先を擦っていたものです。やはり、ライダーにとって、コーナーでバンク角を感覚だけでなく、物理的に探れることは大切なようです。

でも、膝擦りには弊害もある

そんなわけで、私は、多くのライダーが膝擦りに憧れる気持ちは、すごく良く分かります。そのメリットも否定しません。

でも、私はあえて膝擦りを推奨しません。膝を擦らせるような練習は、もってのほかだとさえ思っています。

前回のこのコラムで、コーナリングでの身体操作は他のスポーツと同じように、テイクバック(バックスイング)、トップ後のダウンスイング、インパクト後のフォロースイングという3つのステップで成り立っていると書きました。

【関連コラム】
◆ライテク都市伝説を斬る その10 [体重移動は寝かせる前に済ませておく]

まず、コーナー進入前には、上体をイン側に移動させながらも、骨盤をアウト側に残し、極力、体重をアウトに残します。テイクバックの動きです。

そして、倒し込みポイントで、一気に骨盤をイン側に移動させます。ダウンスイングに相当する動きになり、そのとき、外足股関節は内旋、内足股関節は勢いよく内旋します。

爪先を内側に向ける動きが内旋で、外側に向ける動きが外旋です。股を開閉させる外転、内転と呼ばれる動きとは異なるので、注意してください。人間の身体は骨格的に、股関節の内旋によって骨盤を押し込み、外旋によって引き込むことができるのです。

ですから、内足の外旋によって、膝をするのは理に適っています。ただし、これはフルバンクに向かう過程の一次旋回の部分になります。付け加えると、ここまでがフロントタイヤを使う部分です。

そうして、フルバンクに向かっての二次旋回ではフォロースイングに相当する動きとなります。骨盤をイン側に移動し、いわゆる腰を入れた状態から、骨盤を回すのです。そのためには、内足は外旋から内旋に転じることになります。厳密に言うと、見掛けは膝を開いた外旋状態でも、内旋力が掛かっていないといけないのです。

つまり、最大バンク角に向かって膝を擦ろうとすると、内旋ではなく外旋させてしうことになり、本来の身体の動きができなくなってしまうのです。言ってみれば、これがいわゆる「ムリ膝」です。

現在のレーシングフォームは基本の動きによるもの

現在のレーシングシーンでのフルバンクでのフォームを思い浮かべてください。肘を擦るほどに上体がイン側に入り、反面、膝は閉じられています。

巷では、バンク角が深くなったことで、膝をしまいこんでいるなどと言われていますが、実は、これはフォロースイングに相当する動きなのです。

60年代は、膝を閉じたまま上体をイン側に入れたリーンインスタイルが主流だったわけですが、その意味で、ライディングスタイルは基本に回帰していると言って差し支えないのかもしれません。

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【和歌山利宏】ライテク都市伝説を斬る バックナンバー
和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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