トライクの事故が多発 バイクとの運転特性の違いとは

【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】

最近、トライクの事故が増えているそうです。8月末にも、親子3人が乗ったトライクが路外に飛び出し妻が死亡、運転していた男性とその子どもが重傷を負っています。

原因としては、下りの右カーブを曲がりきれなかったらしく、道路左側の路外に転落。男性は運転操作を誤ったと話しているそうです。トライクは道交法で普通自動車に区分されるため、ヘルメットの着用義務はなく、3人とも被っていなかったとか。

業界団体や警察は、トライク乗車時のヘルメット着用を呼びかけている、という記事が新聞などに掲載されていました。

直進安定性は高いがコーナーは弱い!?

事故車はロシア製のウラルと報じられています。
ニュース記事などによると、ウラルは一見、普通の側車付き自動二輪、いわゆるサイドカーに見えますが、実は本体の後輪と側車側の車輪が一本の軸で繋がって一緒に駆動する方式のため、通常のサイドカーと比較して運転に慣れが必要なのかもしれません。

また、日本サイドカー連盟のコメントによると、「トライクは3輪のため直進安定性は高いが、カーブではバイクのように体を傾けて体重移動ができず、曲がりきれないケースがある」とありました。

トライクとサイドカーは異なる乗り物

筆者もサイドカーやトライクに試乗した経験から付け加えると、まずトライクとサイドカーは異なるということ。トライクとは3輪バイクのことであり、通常は後輪2輪で駆動しています。

フロントはバイク、リヤから見るとクルマのような形が特徴で、大型アメリカンモデルのカスタムなどでもよく目にするタイプですね。

一方、バイクに側車を付けたサイドカーは通常はバイク側の後輪だけが駆動しています。前述のウラルも形こそサイドカーですが、機構的には2輪駆動なのでトライク(サイドトライクとも言う)ということになります。

悪路でも走れる走破性の高さ

ウラルは雪道でも走れる走破性の高さがウリで、ジープなどの4輪駆動車と同じように左右の車輪をシャフトで連結することで、悪路でもスタックしにくくしていいます。元々は軍用モデルである所以ですね。

筆者も雪解け後の泥道をウラルで駆け上がったことがあります。そのオフロードの走りは素晴らしく楽しい経験でした。

ただ、私が乗ったのはパートタイム式2WDで後輪駆動にも切り替えられるタイプでしたが、これがフルタイムの2WDタイプだとデフ(差動装置)がないため、舗装路のコーナーなどは走りにくいという話は聞いたことがあります。

無理すると転倒を招くことも

いずれにしても、レース用のサイドカーなどは別にして、一般的にサイドカーやトライクは、通常のモーターサイクルに比べてコーナリングは苦手です。2輪車は車体をバンクさせることで遠心力に対抗しながら曲がりますが、サイドカーやトライクにはそれができません。

もっと正確に言えば、バイクのように体重移動はできますが、車体自体を傾けることはできません。また多少は逆ロール方向に傾けることはできますが、無理をすると内側の車輪が浮きやすくなり、その場合のコントロールが非常に難しく、転倒などの破綻を招きやすくなります。

子供が乗る3輪車をイメージしていただければお分りでしょう。

サイドカーは左右で曲がり方が異なる

特にサイドカーの場合は側車の位置でハンドリングが大幅に変わってしまう傾向があります。簡単に言うと、側車という「重り」による慣性力が働くためで、一般的には側車方向には曲がりやすく、その逆には曲がりにくくなります。

また加速時はバイクが先行するかたちで側車側に曲がりやすく、急減速などでは側車の勢いで引っ張られたりします。また、側車側のブレーキの有無によっても挙動は異なってきます。

トライクにはいろいろな種類がある

他にもフロントが2輪のタイプもありますが、これはリバーストライクなどと呼ばれていて、操縦特性もトライクとはまるで異なります。ちなみにフロント2輪タイプはフォーミュラカー並みの運動性能を発揮するモデルもあるほどです。

ヤマハのトリシティのように、車体を傾けて曲がる3輪バイクも最近は流行っていますが、こちらはモーターサイクルの乗り味にとても近いものとなっています。

▲トリシティ155

運転特性を理解して慎重なドライブを

トライクやサイドカーが悪いわけではありません。立ちゴケの心配がなく、高速道路でも3人で乗れたり、荷物もたくさん運べるなどのメリットも多くあります。

乗り味にも独特の楽しさがあるユニークな乗り物ですが、一方で操縦が難しい乗り物なのです。どんな高性能な乗り物でも限界を超えればクラッシュしてしまいます。決して無理をせず、その運転特性を理解した上で、その乗り物に見合った走りを心がけるべきでしょう。

ヘルメットの着用を強くすすめたい

そして一番大事なことはヘルメットの着用です。
トライクは法律では普通自動車と同じ扱いでヘルメットの着用義務はありませんが、前述のように危険性はバイク以上と言っても過言ではありません。たまに高速道路をノーヘルで走っているトライクを見かけますが、恐ろしくて見ていられません。

趣味の乗り物であり、個人の選択の自由ではありますが、万が一の事故への備えとして必ずヘルメットは被っていただきたいと思います。
業界団体も含めてさらなる啓発活動が望まれます。

ケニー佐川

ケニー佐川 Webikeニュース編集長

投稿者プロフィール

早稲田大学教育学部卒業後、情報メディア企業グループ、マーケティング・コンサルタント会社などを経て独立。趣味で始めたロードレースを通じてモータージャーナルの世界へ。
雑誌編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。
株式会社モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。
日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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