賀曽利隆の「ジクサーで行く東北一周3,000キロ」(3)

【賀曽利隆:冒険家・ツーリングジャーナリスト】

前回:賀曽利隆の「ジクサーで行く東北一周3,000キロ」(2)

7月24日4時、青森駅前を出発。国道280号で津軽半島に入っていく。この時間帯だと交通量はほとんどない。

▲早朝の青森駅前を出発!

旧道を行ったのだが、ジクサーでの快適走行。5時、蟹田に着くとコンビニの「ヤマザキ」で朝食。おにぎり2個と「お~いお茶」の定番朝食を食べた。

蟹田から国道280号をさらに北へ、津軽半島の岬めぐりの開始だ。

▲津軽半島の蟹田港。下北半島の脇野沢港行きのフェリーを見る
▲松前街道(奥州街道)の松並木を行く

3岬が見えるのは高野崎

第1番目は平舘岬(明神崎)。灯台の脇には霧笛がある。海辺に立ち、平舘海峡越しに下北半島を見る。その右端は北海岬だ。

▲平舘岬(明神崎)の霧笛。灯台の脇にある
▲平舘岬から平舘海峡越しに下北半島を見る

平舘岬を過ぎると、国道280号は津軽海峡に出る。対岸には北海道が見える。ここでは弁天崎、高野崎、鋳釜崎と3岬に立った。
弁天崎の岩場の上には弁天が祀られている。ここは一本木漁港の天然の防波堤。正面には北海道、右手には下北半島を見る。

▲高野崎の赤白2色の灯台

高野崎は東北屈指の名岬。津軽海峡に面した岬の中では、ここからの眺めが一番だ。前方には北海道最南端の白神岬、右手には本州最北端の大間崎、左手には龍飛崎が見える。これらの3岬が見えるのは高野崎だけ。

赤白2色の灯台のわきから下っていくと、潮騒橋、渚橋の2つの橋で岬突端の岩場まで行ける。岬の周辺は広々としたキャンプ場になっている。次の鋳釜崎も高野崎に負けず劣らずの絶景岬。ここもキャンプ場になっている。高野崎も鋳釜崎も国道280号のすぐ脇にあるので行きやすい岬だ。

▲高野崎突端の岩礁。潮騒橋と渚橋の2つの橋が見える
▲鋳釜崎の東屋。津軽海峡対岸の北海道がよく見える

本州の袋小路 太宰治の『津軽』どおりの世界

第5番目の龍飛崎の龍飛漁港の入口には、太宰治の文学碑の建っている。それには名作『津軽』の一節が刻み込まれている。

▲龍飛崎の太宰治の文学碑。『津軽』の一節が刻み込まれている

「ここは本州の袋小路だ。讀者も銘肌せよ。諸君が北に向かって歩いている時、その路をどこまでも、さかのぼり、さかのぼり行けば、必ずこの外ヶ濱街道に到り、路がいよいよ狭くなり、さらにさかのぼれば、すっぽりとこの鶏小屋に似た不思議な世界に落ち込み、そこに於いて諸君の路は全く尽きるのである」

ぼくが「30代編・日本一周」で龍飛崎にやってきたのは1978年。そのときは太宰治の『津軽』どおりの世界で、ここが行止りだった。龍泊ライン(国道339号)で日本海側の小泊に抜けられるようになったのは、まだ近年のことなのである。

日本で唯一の階段国道 龍飛岬

▲龍飛崎の龍飛漁港。正面には義経伝説の帯島が見える

義経伝説の伝わる帯島を目の前にする龍飛漁港、そこにジクサーを止めると、国道339号の階段国道で台地上まで登る。

▲龍飛崎の日本で唯一の階段国道。国道339号は階段を登っていく

日本で唯一の階段国道だ。登りきったところには「津軽海峡冬景色」の歌謡碑が建っている。歌謡碑の赤いボタンを押すと、石川さゆりの歌声が聞こえてくる。
「ごらんあれが龍飛岬 北のはずれと 見知らぬ人が指をさす・・・」

階段国道を登り降りしたあと、龍飛漁港から自動車道で龍飛崎の台地上に登っていく。龍飛崎は高さ100メートルほどの断崖となって落ちている。
断崖の下に龍飛の集落があり、龍飛漁港がある。漁港の前の帯島が天然の防波堤の役目を果たしている。

龍飛はまさに帯島のおかげといってもいい。もしこの小島の岩山がなかったら、無人の荒野だったかもしれない。

▲龍飛崎の灯台。白亜の灯台と抜けるような青空の対比が色鮮やかだ
▲龍飛崎突端のレーダー基地。津軽海峡の対岸は北海道最南端の白神岬

龍飛崎からは東北屈指の絶景ルート、龍泊ラインで日本海の小泊へ。展望台の眺瞰台を過ぎると一気に日本海に下っていく。海岸に降りる手前には絶好の見晴らしポイントがある。そこからは日本海の海岸線線を一望し、小泊半島突端の権現崎を望む。小泊に着くと、まずは小泊漁港の弁天崎を見た。

▲龍泊ラインの眺瞰台。津軽海峡越しに北海道を見る
▲龍泊ラインで日本海に下っていく。長く突き出た小泊半島がよく見える

権現崎は大崩落で通行止

第7番目は日本海屈指の名岬の権現崎だ。小泊半島のゆるやかな峠を越え、下前漁港からは海沿いの道を行く。

行止り地点の駐車場からブナ林の中の遊歩道を30分ほど登ると、高さが219メートルという大断崖上に出る。灯台をはるか下の方に見る。というのが権現崎だったが、現在、この道は大崩落で通行止。そのため山道を1時間以上かけて歩かなくてはならない。

残念ながら岬に立つのを諦め、下前漁港入口の食事処「磯や」で「サザエ丼」(2100円)を食べた。鮮度満点のサザエが丼飯を覆いつくしている。サザエのコリコリシコシコした食感がたまらない。権現崎は除福伝説の地。下前漁港には徐福像が建っている。

▲下前漁港の「磯や」の「サザエ丼」。サザエのコリコリシコシコ感がすごい

小泊半島を後にすると日本海を南へ、鰺ヶ沢からは国道101号を南下する

第8番目の弁天崎は北金ヶ崎漁港の岬。岬の突端を走り抜けていく。JR五能線も通っている。
第9番目の岬は名勝、千畳敷の大戸瀬崎。ここには大戸瀬岩(大仏岩)や小戸瀬岩、ライオン岩、兜岩、潮吹岩などの奇岩がある。

第10番目は鳥居崎。風合瀬(かそせ)漁港の岬だ。目の前にある小島の弁天島には渡っていける。弁天島には弁天がまつられている。岩山のてっぺんには赤白2色の灯台。この小島が風合瀬漁港の天然の防波堤の役目を果たしている。

「弁天さん」で多くの日本人に親しまれている弁天は弁財天の略だが、もともとはインドの音楽や知恵、財物の女神。その女神が日本では七福神の1人になり、多くの人たちの信仰を集めている。漁民たちの信仰も厚く、風合瀬漁港の弁天島のような港を守る小島に弁天をまつる例は数多くある。

鳥居崎には道の駅「ふかうら」がある。ここではハンターカブとホンダの400に乗る2人組に出会った。
何と長崎からやってきた兄弟。お兄さんがハンターカブに乗り、弟さんが400に乗っている。長崎を出たのは1ヵ月以上も前のことで、「北海道一周」を終え、これから日本海側を南下して九州に向かっていくという。兄弟でのロングツーリングには感動した。

日本海絶景ルートの国道101号は岬めぐりの絶好のルートにも

つづいて塩見崎、行合崎とめぐり、深浦の町に入っていく。町を過ぎたところに入前崎があるのだが、この岬がなかなか見つけられなかった。

深浦漁港の出口にも弁天島がある。歩いて渡っていける島。この弁天島を見下ろすのが入前崎だと、『ツーリングマップル』を見ながら見当をつけたのだが、そうではなかった。何としても見つけ出すぞと執念を燃やすカソリ。

ジクサーを走らせ、日本海の海岸を行ったり来たりしながら、ついに発見。岡崎海岸の岡崎キャンプ場から見える岬が入前崎だった。岬めぐりにはこのような大変さもあるが、それがまたおもしろさにつながっている。

深浦から国道101号をさらに南下し、青森・秋田県境の須郷岬へ。その間では舮作崎、恵神崎、立待崎、中ノ間崎の4岬をめぐった。日本海絶景ルートの国道101号は岬めぐりの絶好のルートにもなっている。

▲舮作漁港から見る舮作崎。漁港と岬はセットになっている

青森県側の日本海の海岸線を一望

第18番目の須郷岬は青森・秋田県境の絶景岬。豊かな自然の残る白神山地は、ここで日本海に落ちる。展望台からは青森県側の日本海の海岸線を一望する。はるか遠くには岩崎の立待崎と恵神崎を見る。岬から岬を見るのはいいものだ。

▲青森・秋田県境の須郷岬突端の岩礁。白神山地、ここに尽きる!
▲チゴキ崎の灯台。ここは秋田県最初の岬

岬の食事処「福寿草」の焼きイカやイカ料理はオススメ。イカが不漁で値段が高くなっているのが我らツーリングライダーにとっては痛いところだが・・・。

青森県から秋田県に入ると、チゴキ崎で日本海に落ちる夕日を眺め、国道101号沿いの八森いさりび温泉「ハタハタ館」に泊まった。大浴場と露天風呂の湯にどっぷりつかり、日本海を見る。正面にはまるで大島が浮かんでいるかのように男鹿半島が見える。

湯から上がるとレストランで夕食。まずは生ビールを飲み干す。そのあとで「ハタハタ御膳」(2000円)を食べた。まさにハタハタ三昧、ハタハタの焼き魚、煮魚、それとハタハタの飯ずしを食べた。ハタハタの煮魚は子持ちで、魚卵はプリンプリンしている。

▲八森いさりび温泉「ハタハタ館」の「ハタハタ御膳」を食べる!

絶景岬がある男鹿半島へ

翌日も4時に出発。八森いさりび温泉から能代を通り、男鹿半島に入っていく。国道101号で海岸に出ると、対岸には白神山地の山々が大きく見えた。
海に浮かぶ白神山地が目に残る。入道崎に通じる県道55号に入ると北浦へ。北浦漁港の北側の八斗崎を見る。次に男鹿温泉を過ぎた西黒沢の大明神崎を見る。

第22番目は男鹿半島北端の入道崎。北緯40度線上の岬だ。北緯40度線上のモニュメントが点々と建っている。岬の周辺は芝生に覆われた園地。高さ24メートルの入道埼灯台には登れる。一大観光地の岬には店が軒を連ねる。

▲男鹿半島北端の入道崎。北緯40度線上の岬には白黒2色の灯台

7時に到着したのだが、そのうちの一軒、「なまはげ御殿」はすでに店を開けていた。ここで朝食。「どんこ汁定食」(1600円)を注文したが、店の主人はドンコの替わりに真鯛にしてくれた。同じ値段でドンコが鯛になった。

入道崎からはゲド崎、潮瀬崎、館山崎、金崎、鵜ノ崎と男鹿半島の西岸から南岸にかけての5岬をめぐる。最後は男鹿半島の付け根の生鼻崎。岬のトンネルを抜け出ですぐに左折し、台地上に登ったところには脇本城址がある。

▲男鹿半島南西端の潮瀬崎の「ゴジラ岩」。見れば見るほど似ている
▲男鹿半島南端の鵜ノ崎。干潮時だと不思議な海の風景が見られる

東北の日本海側というのは秋田県以南には、ほとんど岬がない。唯一の例外は男鹿半島。ここにはいくつもの岬があるが、男鹿半島を過ぎると岬も半島もほとんどなくなる。東北の日本海の海岸線は単調だ。

▲男鹿半島の付け根の生鼻岬。脇本漁港越しに岬を見る

秋田県から山形県、新潟県境の鼠ヶ関へ

第29番目は仁賀保の芹田岬。芹田の集落の外れが岬で、岬の突端にはハマナスの花が咲いていた。

第30番目の三崎は秋田・山形県境の岬。観音崎、大師崎、不動崎の3岬を合わせて三崎といっている。駐車場から観音崎の展望台までは簡単に登れる。夕日の名所で知られるこの展望台からは、日本海に浮かぶ飛島を見る。

▲秋田・山形県境の三崎。ここには観音崎、大師崎、不動崎の3岬がある

オススメは遊歩道で歩くこれら3岬の岬めぐりだ。ここは芭蕉の「奥の細道」の舞台でもある。

国道7号で秋田県から山形県に入り、酒田から新潟県境の鼠ヶ関へとジクサーを走らせる。その間に2つの岬があるが、山形の岬というと、わずかにこの2岬だけ。それだけに愛しい気持ちで2岬をめぐった。

第31番目は鰺ヶ崎。羽州浜街道の宿場、三瀬の海岸に岩山が落ち込んでいる。岩影は小さな海水浴場になっている。

第32番目は波渡崎。堅苔沢漁港の岬で、ここには観光ホテルがあったが、今は休業中。国道7号を反対方向から来ると、この波渡崎を過ぎると鳥海山が見えてくる。

▲堅苔沢漁港から見る波渡崎。ここが東北日本海側の最後の岬になる

「岬めぐりの東北一周」は合計すると92岬!

波渡崎を後にすると、新潟県境の鼠ヶ関へ。ここには「奥羽三関」の古代鼠ヶ関と近世の念珠関があった。太平洋岸の勿来関と同じで、鼠ヶ関は昔も今も東北の玄関口だ。

鼠ヶ関漁港の天然の防波堤になっている弁天島は、今は陸続きになっている。厳島神社がまつられ、小島の突端には金刀比羅神社の祠があり、灯台が立っている。

▲ここは東北日本海側最南の地、鼠ヶ関の弁天島。岬名が無いのが残念・・・

だが、残念ながらここには岬名はない。ということで、さきほどの波渡崎が「岬めぐりの東北一周」の最後の岬になる。「東京→青森」間で60岬をめぐったので、合計すると92岬になった。

16時に鼠ヶ関を出発。国道7号で新潟県に入り、朝日まほろばICからは高速道の一気走り。日本海東北道→北陸道→関越道→圏央道と高速道を走りつづけ、22時40分に東名の厚木ICに到着。

ジクサーは鼠ヶ関から厚木ICまでの563キロを6時間40分で走った。ジクサーの高速性能に問題なし。伊勢原市の我が家に帰り着いたのは23時。この日は一日で822キロを走った。

翌日は東名→首都高で日本橋へ。「岬めぐりの東北一周」が終わった。走行距離は2872キロ。3000キロには128キロ足りなかった。それがすごく残念なことだった。

▲東京・日本橋に戻ってきた!

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賀曽利隆

賀曽利隆冒険家・ツーリングジャーナリスト

投稿者プロフィール

1947年東京生まれ。
1968年から2年間をかけてアフリカを一周したのを皮切りに、バイクで世界の6大陸を駆け巡る。
1982年には「パリ→ダカールラリー」に日本人ライダー初の参戦。1987年には「サハラ砂漠往復縦断」。7度の「日本一周」を成しとげ、「70代編日本一周」を目指している。
ツーリングマップル東北の担当ライダーで、東北の道という道を精力的に走っている。
モットーは「生涯旅人!」

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