賀曽利隆の「ジクサーで行く東北一周3,000キロ」(2)

【賀曽利隆:冒険家・ツーリングジャーナリスト】

前回:賀曽利隆の「ジクサーで行く東北一周3,000キロ」(1)

石巻の「サンファンヴィレッジ」を出発。
相棒のスズキの150ccバイク、ジクサーを走らせ、青森を目指す。ここからはいくつもの半島をめぐり、それぞれの半島の突端の岬をひとつ、またひとつとめぐっていく。
前回でも言ったように、「岬めぐり」は「半島めぐり」のようなものだ。

復興工事が続く牡鹿半島の西海岸

まずは県道2号で牡鹿半島に入っていく。風越峠をトンネルで抜けると、牡鹿半島の西海岸を南下。月浦海岸でジクサーを止めた。

ここは慶長18年(1613年)、伊達政宗の命を受けた支倉常長の一行がローマを目指し、帆船の「サン・ファン・バウティスタ号」で船出した地。県道2号脇の高台には支倉常長像と航海碑が建っている。


▲牡鹿半島の月浦海岸に建つ支倉常長像

牡鹿半島の西海岸は東日本大震災の大津波に襲われ、甚大な被害を出したが、各地で復興工事が行われている。復興まではまだ道半ばといったところだが、巨大な防潮堤はかなり完成に近づいている。

金華山への船の出る鮎川が牡鹿半島の中心地。とはいってもここも復興工事の真っ最中で、町全体が一大工事現場になっている。

忘れ去られた峠へ。夏草のおい茂る道を走る

鮎川を過ぎたところで、第1番目の岬、牡鹿半島南端の黒崎へ。
民宿「泰平荘」の看板の立つ分岐を右に入っていくと、牧場地帯が広がる。黒崎への道は案内板の類は一切ないので、きわめてわかりにくい。牧場の人に道を教えてもらい、電柵のゲートを開け、夏草のおい茂る岬への道を走った。

▲牡鹿半島南端の黒崎への道。電柵のゲートを開けて入る

道の尽きたところに灯台。そこからは海は見えない。黒崎は東北の岬ベスト10に入れてもおかしくない岬なのだが、まったく忘れ去られているのがじつにもったいない。鮎川から金華山への船はこの岬のすぐ下を通る。

▲牡鹿半島南端の黒崎の灯台。ここからは海が見えない

黒崎をあとにすると、金華山を目の前にする山鳥渡へ。そこから牡鹿半島の稜線上を走るワインディングロードのコバルトラインを快走し、女川の国道398号に出た。

女川からはリアスブルーラインの国道398号を行く。三陸のリアス式海岸を見ながら走る絶景ルート。雄勝からは雄勝半島を一周し、半島南端の白銀崎と北端の峠崎の2岬に立った。

岬をめぐり終えて雄勝に戻ると、仮設商店街「おがつ店こ屋街」で「石巻焼きそば」(600円)を食べた。

▲雄勝半島南端の白銀崎の白銀神社

▲雄勝半島南端の白銀崎からの眺め。はるか遠くに金華山が見える

▲雄勝の仮設商店街「おがつ店こ屋街」で食べた「石巻焼きそば」

大岩が割れた伝説の岬

▲北上川下流の堤防上の道を走る

雄勝からは国道398号で釜谷峠を越え、東北一の大河、北上川の堤防上を走り、第4番目の白浜岬へ。旧道で岬まで登り、そこから北上川の河口を見下ろした。

▲白浜岬から見る北上川の河口

つづいて相川漁港から金毘羅崎まで行く。そこには金刀平神社がまつられている。
第6番目の神割崎は伝説の岬。ある日、突然、岬の大岩が2つに割れた。そのおかげで絶景岬になっているが、駐車場から階段を下ると、その割れ目を目の前で見ることができる。

▲金毘羅崎からの眺め

▲神割崎の2つに割れた大岩

潮吹き岩と奇跡の像

▲南三陸町の歌津から泊崎半島に入っていく

南三陸町では志津川海岸の伏房崎、荒砥崎、琵琶崎の3岬をめぐり、歌津の泊崎半島に入っていく。ここでは半島南端の歌津崎と東端の松崎、北端の末ノ崎の3岬に立った。末ノ崎の風景は目に残る。ダートの小道を行くと、台地上の畑があり、その先が断崖絶壁になっている。

▲泊崎半島南端の歌津崎からの眺め。三陸海岸の海は青い

▲泊崎半島北端の末ノ崎への道

▲泊崎半島北端の末ノ崎。絶景岬だ

国道45号で南三陸町から気仙沼市に入ると、仙代崎、館鼻崎、明神崎、旭崎と4岬が連続するが、それらの岬はすべて漁港とセットになっている。

▲岩井崎の第9代横綱、秀ノ山像。大津波にも残った!

第17番目は潮吹き岩で知られる岩井崎。松林に囲まれた岬の突端には第9代横綱の秀ノ山像が建っている。東日本大震災の大津波にも残った奇跡の像だ。

その先に広がる岩場に潮吹の岩がある。波が押し寄せるたびにピューという大きな音とともに、高さ10数メートルの潮を吹き上げる。灯台の下からは大島南端の龍舞崎がよく見える。

▲岩井崎の潮吹き岩

気仙沼からは唐桑半島南端の御崎(おさき)へ。岬の入口の御崎神社に参拝。岬と神社は切っても切れない関係にある。岬の語源は繰り返しになるが「崎」。それに「御」をつけての「御崎(みさき)」だが、岬というのは神の宿る聖地なのだ。

御崎神社前の駐車場にジクサーを止め、遊歩道を歩いていくと鯨塚がある。この一帯はかつて鯨漁が盛んだった。

灯台の先には幅30メートルほどの黒色粘板岩の岩場が100メートルほど海に突き出ている。八艘曳と呼ばれる岩場で御崎神社の祭神が8艘の船を従えてここに上陸したという伝説が残る。ここまでが宮城県の岬。

▲唐桑半島南端の御崎。伝説の八艘曳の岩場が海に突き出ている

夜は御崎の国民宿舎「からくわ荘」に泊まった。ここはおすすめ。海鮮三昧の夕食はすごいご馳走で、「大喰いカソリ」をもってしても全部は食べられないほどだった。

▲御崎の国民宿舎「からくわ荘」の夕食。すごいご馳走!

絶景岬がつづく。日本の自然美の極致!

▲広田半島南端の広田崎。青松島と椿島が見える

国道45号で岩手県に入り、まずは陸前高田市の広田半島の岬をめぐる。
広田漁港の明神崎、大入崎の2岬を見て、広田半島南端の広田崎に立った。ここは絶景岬。目の前に浮かぶ青松島と椿島を見る。青松島はその名の通りで青々とした常緑樹に覆われている。椿島は日本有数のウミネコの生息地。

つづいて広田半島東端の黒崎へ。岬の入口にある黒崎神社を参拝。800年の歴史を持つ立派な造りの神社だ。遊歩道を歩く。岬への道の途中に小さな祠がまつられているが、それは黒崎神社の本宮。ここでも岬と神社の切っても切れない関係を見る。

黒崎の突端は斧で大岩を割ったかのようなV字谷。「黒崎仙峡」といわれる名勝だ。展望台に立ち、抜けるように青い三陸の海を見る。三陸の海はほんとうにきれいだ。つづいて広田半島最後の岬、蛇ヶ崎へ。ここには八幡宮がまつられている。

▲広田半島東端の黒崎の「黒崎仙峡」。V字の谷を見下ろす

広田半島から大船渡市の末崎半島に入る。第24番目の門ノ浜漁港の館ヶ崎から第25番目の碁石岬へ。

ここには市立博物館があり温泉民宿もある。船着き場からは遊覧船が出ている。食事処「岬」前の駐車場にジクサーを止め、松林の中の遊歩道を歩いていく。

岬突端の灯台を過ぎたところに展望台。そこからは対岸の広田半島を一望する。碁石岬も絶景岬。こうして岬をめぐっていると、日本の自然美の極致を岬に見るような思いがする。

▲末崎半島南端の碁石岬の灯台。その先に展望台がある

大船渡からは国道45号で釜石へ。釜石も半島の宝庫なのだが、それぞれの半島突端の死骨崎や尾崎、馬田岬、御箱崎への道がないので残念ながらパスした。

大槌から山田へ。山田の町の手前から船越半島に入り、第26番目の大釜崎へ。
大浦から小谷鳥の小漁村まで行く。そこまでは問題なく走れる。小谷鳥から狭路になり、自動車道は山中でプッツンと途切れた。じつは1998年にも東北の岬めぐりをしたことがあるが、そのときは大釜崎まで行けた。

道が途切れたからといって、ここまで来て大釜崎を諦めることはできない。行止り地点にジクサーを止めると、生い茂る草むらの中に突入。草をかきわけかきわけして歩き、ついに断崖上に出た。息を飲むようなすごい光景。樹林の間から切り立った断崖を見下ろした。
それはまさに感動の瞬間だ。


▲船越半島の大釜崎。断崖絶壁の岬だ

三陸随一の絶景岬

山田の町を過ぎたところからは県道41号で重茂半島に入っていく。急カーブの連続する狭路を走りつづけ、姉吉入口のバス停から姉吉漁港へと下っていく。そこが重茂半島東端の岬、トドヶ崎の入口。

第27番目のトドヶ崎は本州最東端の岬で、姉吉漁港から4キロの山道を歩いていく。岬の突端には高さ34メートルの東北一のノッポ灯台。太平洋の大海原を目の前にする岩場には「本州最東端」の碑が建っている。

往復で8キロ歩かなくてはならないので、ここまでやってくる人は少ない。それだけに絶景岬を独り占めだ。

▲重茂半島東端のトドヶ崎。岩の上には「本州最東端の碑」

宮古から国道45号を北上し、田野畑村に入ったところで海沿いの県道44号を行く。
第28番目の北山崎は三陸随一の絶景岬。岬への遊歩道沿いには食堂や土産物店が並ぶ。ここは三陸復興国立公園の目玉的な存在で、ビジターセンターもある。岬突端の展望台に立つと、高さ200メートルほどの連続する断崖を一望。

▲北山崎からの眺め。ここは三陸海岸屈指の絶景ポイント

県道44号で普代村に入ったところには第29番目の黒崎がある。北緯40度線上の岬。地球儀型をした北緯40度線のシンボルタワーが建っている。

地球儀には赤いラインで引かれた北緯40度線。その線上にはアメリカのサクラメント、デンバー、ヨーロッパのリスボン、ナポリ、アジアのアンカラ、北京がある。それにつづいて大きな字で「普代村」。夢が世界へと飛んでいく黒崎だ。ここまでが岩手県の岬になる。

▲北緯40度線上の黒崎。ここには地球儀型のシンボルタワー

日本で一番絵になる灯台

普代から国道45号で久慈を通り、青森県に入った。八戸駅前の「東横イン」に泊まると、翌朝は4時に出発し、下北半島の岬をめぐる。

第30番目は下北半島北東端の尻屋崎。ここには「本州最涯の地」碑が建っている。岬と灯台はつきものだが、尻屋埼灯台は日本で一番絵になる灯台だとぼくは思っている。

光度200万カンデラのこの灯台は、犬吠埼灯台と並び日本一の明るさ。岬の一帯は牧草地で、「寒立馬」と呼ばれる名物馬が放牧されている。岬入口のゲートは夕方の5時に閉まる。冬期間は閉鎖される。

▲下北半島北東端の尻屋崎には「日本で一番絵になる灯台」が立つ

第31番目は下北半島北端の大間崎は本州最北端の岬。「こゝ本州最北端の地」の碑が建っている。目の前のクキド瀬戸の沖合いの弁天島には大間灯台。その向こうの水平線上には、北海道の山々が見えている。三角形の特徴のある山の姿は函館山。目を左に移せば高野崎から龍飛崎にかけての津軽半島の海岸線を望む。


▲下北半島北端の大間崎。岬の突端には「こゝ本州最北端の地」碑

高野崎から南下し、津鼻崎、願掛岬、福浦崎と岬をめぐり、脇野沢へ。脇野沢からは県道175号で牛ノ首岬から行止り地点の九艘泊漁港へ。
目の前に立ちふさがる断崖絶壁が第36番目の北海岬。下北半島南西端の岬だ。ストーンと垂直に切り立った断崖の迫力のある風景には圧倒される。

▲下北半島南西端の北海岬。断崖が海に落ちる

脇野沢に戻ると、国道338号でむつ市へ。その間では殿崎を見る。むつ市から国道279号で野辺地に出ると、国道4号で青森へ。その途中で夏泊半島に入っていく。

県道9号で夏泊半島を一周。灯台のある安井崎を通り、夏泊半島北端の夏泊崎に到達。第40番目の夏泊崎は北緯41度線上の岬。東経141度線にも近いので「ヨイヨイ岬」ともいわれる。

目の前の大島には、橋を渡って行ける。満潮でも大丈夫。大島には何もないが、海岸の岩場を歩くだけで十分に満足できる。島一周の道はない。岬には民宿や食堂が並び、活魚料理を名物にしている。そのうちの一軒、「佐々木食堂」で「ホタテ塩ラーメン」(800円)を食べた。

▲夏泊半島北端の夏泊崎。目の前の大島に橋で渡っていける

現在合計60岬。続く「青森→東京」は日本海を行く

夏泊半島最後の岬は油目崎。稲生漁港越しに岬を見る。漁港は落ちていく夕日を浴びて真っ赤に染まる。夏泊半島を出たところが第42番目の白根崎。ここでは浪打土屋漁港越しに岬を見る。岬は漁港とセットになっているのを改めて実感する。

▲浅虫温泉「ゆ~さ浅虫」の展望風呂から眺める夕景

国道4号の道の駅「浅虫温泉」5階の展望風呂「ゆ~さ浅虫」の湯に入り、20時、青森に到着。「東京→青森」は1,687キロ。その間では「東京→石巻」の18岬、「石巻→青森」の42岬、合計すると60岬をめぐった。

▲青森に到着。駅前通りを行く

「青森→東京」では日本海の岬をめぐっていく。頼むぞ、ジクサーよ!

「ジクサーで行く東北一周3,000キロ」(3)に続く

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賀曽利隆

賀曽利隆冒険家・ツーリングジャーナリスト

投稿者プロフィール

1947年東京生まれ。
1968年から2年間をかけてアフリカを一周したのを皮切りに、バイクで世界の6大陸を駆け巡る。
1982年には「パリ→ダカールラリー」に日本人ライダー初の参戦。1987年には「サハラ砂漠往復縦断」。7度の「日本一周」を成しとげ、「70代編日本一周」を目指している。
ツーリングマップル東北の担当ライダーで、東北の道という道を精力的に走っている。
モットーは「生涯旅人!」

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