ライテク都市伝説を斬る その10 [体重移動は寝かせる前に済ませておく]

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

ライダーは寝かし込みの瞬間、何をすべきなのか

寝かし込みの瞬間、何をすればいいのか。それはライダーにとって由々しき問題です。
そのときの身体操作はもちろん、何を意識しているかによって、コーナリングは決まってしまうと言っても差し支えありません。

逆操舵で寝かし込むのは、フロントタイヤの負担が高まり、握りゴケのリスクが高まりますし、バイクは曲がりません。
逆操舵後にできるだけ早く、ステアリングへの入力を抜くことも間違ってはいませんが、それだけではバイクを積極的にコントロールをしていることにはなりません。

では、エイヤッとばかり、身体をコーナーに移動していくというのはどうでしょう。
もしそのアクションでたとえ、身体をうまく移動できたとしても、身体を動かしたことによる反作用で、マシンは外側に押し出され、結局、その辻褄を合わせるために逆操舵になってしまいます。
このシリーズの以前のコラムでも書いたように、マシンを蹴ったり踏んだりしてはいけないのです。

【関連コラム】
ライテク都市伝説を斬る その4 [ステップを踏んで寝かす]

バイクは体重を「おもり」にして曲がるわけではない

そこで、マシンにストレスをかけることなく、素直にコーナーに進入する方法として、コーナーの手前で体重移動を済ませておくということが考えられます。
そして実際に、そうした「都市伝説」が浸透しています。

確かに最近のワイドタイヤのバイクでは、コーナリングで腰をイン側に落としたほうがバランスさせやすいことも事実で、そのために腰を手前で落としておくという意味ではその通りなのですが、そこで体重移動が完結するわけではありません。

また、身体を移動した状態で寝かし込みまで頑張っておいて、寝かし込みポイントで身体の力を脱力すればいいという都市伝説もありますが、そうなると「スポーツ」の動作ではありません。

コーナリングでの身体操作は他のスポーツと何ら変わらない

では、効率良く、体重移動していくにはどうすればいいのでしょうか。
実はこれ、他のスポーツと全く同じなのです。

ボールを打ったり投げたりする動作は、テイクバック(バックスイング)、トップ後のダウンスイング、インパクト後のフォロースイングという3段階の動きで成り立っています。球技でなくても、柔道の投げ技などにもそうした一連の流れがあります。

その身体動作を分解して考えますと、身体のバネを反対側に巻くようなテイクバックでは、上体をイン側(球技では前側)に移動させながらも、骨盤をアウト側(球技では後側)に残し、極力、体重を後側に残します。
これがコーナリングでは、コーナー手前のブレーキングでのフォームになります。

寝かし込み寸前には、さらに瞬間、身体をアウト側に残すようにタメを入れ、一気に骨盤をイン側に移動させます。
その後、上体が追従するように移動するのですが、骨盤の移動と同時に骨盤が回り始めると、腰が開いてしまいます。骨盤が移動し切ってからフォロースイングが始まることで、上体はしなるようにイン側に移動していくことができるのです。

この骨盤の移動の極意は、伸張反射です。テイクバックでインナーマッスル(大腰筋)が伸張し、本能的に過度の伸張から身を守るために収縮することを利用するのが極意になるわけで、その意味では脱力になりますが、何もしなくてもいいということではないのです。

バイクを寝かせていくということも、一つの運動動作と考えて体を使っていくことが大切です。

【関連コラム】
【和歌山利宏】ライテク都市伝説を斬る バックナンバー
和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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