【BMW HP4 RACE試乗レポート】乾燥重量146kg!「カーボンの軽さ」と「しなやかさ」が生み出す圧倒的な速さ

【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】

BMWは、全世界750台限定で生産されるレース向けモーターサイクル「BMW HP4 RACE」の国内での発売を7月14日から開始、11月から順次納車すると発表した。

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この発表があった当日、富士スピードウェイにて「HP4 RACE」のプレス向け試乗会が開催。

モーターサイクルジャーナリストでWebikeバイクニュース編集長のケニー佐川が参加してきたのでレポートしたい。まずはHP4 RACEの解説に続き、試乗インプレッションをお届けしよう。

モータースポーツにおける最高水準の結晶

HP4 RACEは世界初となるカーボンファイバー製メインフレームとカーボンホイールを採用。

その高い品質を保つためにBMW Motorradの少人数専門チームによって手作業で製造され、搭載するサスペンションやブレーキ・システム、エンジンもモータースポーツにおける最高水準の技術が採用されている。

スーパーバイク世界選手権の技術とコンポーネンツを投入

メインフレーム重量はわずか7.8kgで、ホイールも鋳造軽合金タイプと比べて約30%軽い。

サスペンションは、スーパーバイク世界選手権で採用されているものと同タイプのオーリンズ製。倒立式フォークFGR 300、スプリング・ストラットTTX36GPと切削加工、板金加工による軽合金製の吊り下げ式タイプのスイングアームを採用している。

ブレーキシステムはブレンボ製GP4PRモノブロックキャリパーに、厚さ6.75mm/直径320mmのスチール製T型レーシングディスクを搭載するなど、スーパーバイク世界選手権(WSB)レースで採用される技術とコンポーネンツを投入。

最高出力158kW(215PS)/13,900rpm、最大トルク120Nm/10,000rpmのエンジンは、耐久レースおよびスーパーバイク世界選手権の仕様6.2、または7.2に準じたレース用エンジンを搭載するなど、WSBレーサーそのもののスペックで仕上げられている。

カーボンテクノロジーでMotoGPマシン並みに軽量化

特筆すべきはカーボンファイバー製フレームの採用だ。これによりHP4はレース用モーターサイクルとしての性能と品質を保ちつつ、軽量化を実現している。

総重量は、走行可能な燃料満タン状態で171kgとWSBレーサーを8kgも下回るレベル。ちなみにパルクフェルメ(車両保管)状態でMotoGPマシンよりたった3.5kgだけ重い160.5kgで、乾燥重量に至っては僅か146kgという驚異的な軽さを実現している。

オールカーボンファイバー製のメインフレームが重量7.8kgであり、ホイールにも同じくカーボンファイバーを使用し、鍛造軽合金ホイール比で約30%重量を削減する他、フェアリングやインテークエアサイレンサーカバー、シートカウルなどもカーボン製である。

アルミでは不可能な精度と剛性バランスを実現

HP4の開発ディレクターであるジョセフ・メヒュラー氏の話では、カーボンにもいろいろなタイプがあって、HP4のメインフレームで使われているのは「カーボンドライブ」という製法とのこと。

ひと続きの真っすぐなカーボン繊維を使って中空構造を成型し、その中にアルミ素材をインサートしていると言う。

これにより、「たわみ」と「剛性」を最適にデザインしつつ、アルミ同等の剛性とスチール同等の強度を持ちながら、圧倒的な軽さを実現したのだとか。

すべてのフレームは同じ寸法と重量で仕上げられ、膨張率は最大で0.4%というアルミ鋳造では不可能な精度の高さで全てのフレームを均一に作ることができる。

10年経っても経年劣化しない耐久性も兼ね備えているということだ。

限界時に発揮される優れた特性

メヒュラー氏自らもサーキットでの走行テストを行ったそうだが、カーボンフレームの優れた特性はコーナーの切り返しでよく分かるらしい。

アルミフレームの場合、限界時にはトーション(捻じれ)に対して揺り戻しがくるが、カーボンではそうした振幅がなく一発で収まるという。また、カーボンホイールの耐久性について心配する声があるが、これも石段に乗り上げるテストによってその信頼性は実証されているとのこと。

テストでは7cmの段差に乗り上げてみたが、カーボンリムは優れた靭性によって衝撃をいなすことで変形も見られず、タイヤの空気も抜けていなかったということだ。

ちなみに同じ条件で鍛造と鋳造それぞれのホイールでもテストしてみたが、両方とも破壊されたということだ。

最先端のレーシングテクノロジーを投入

その他の装備としては、アルミ製フューエルタンクにレース用6速クロスレシオ・ギヤボックスを採用。

2D社製ダッシュボードとデータロガーによる走行データの管理が可能な他、イグニッション・カット制御の音で動作を判別するダイナミック・トラクション・コントロール(DTC)とエンジン・ブレーキ(EBR)はギヤ毎に15段階にプログラムが可能となっている。

ウィリーコントロールやピットレーンリミッター、ローンチコントロールなどのレース用電子デバイスをフル装備することで、ライダーのニーズや走行条件に合わせた最適なセットアップによってマシンの性能を最大限に引き出すことが可能となっている。

見ているだけで身震いする凄み

外見はS1000RRのレース仕様といった雰囲気だが、近づいてみると黒光りするカーボンフレームや厳ついスイングアーム、オーリンズやブレンボの中でも最高峰のコンポーネンツが奢られた車体に思わず身震いする。

無機質なモノクロのデジタルディスプレイと手元に整然と並んだスイッチ類など、速く走る機能に徹したレイアウトもHP4がレーシングマシンであることを物語っている。

アートのようなコーナリング感覚

簡単なブリーフィングを受けてさっそくピットから滑り出す。氷の上を滑るように進むフリクションの少なさはまさにレーシングマシンだが、衝撃的だったのは軽さ。車格はS1000RRと同じなのに車重は30kg近く軽いというのだからまさに別の乗り物だ。

コーナー入口では何のキッカケもいらずにフワッと倒れ込んでいく。マスを感じさせないという言葉の本当の意味を実感した瞬間だった。

たとえば富士の100Rなど、いやらしく曲率が変化する高速複合コーナーでもHP4はライン修正など意識せずとも、いとも簡単にクリアしていく。

同時に乗り比べたS1000RRだと、Rの変化に合わせて寝かしなおしたり、スロットルの微妙な開度調整が必要になったりするのだが、HP4はほぼ一定のバンク角とラインの中で“ひと筆書き”のような美しいラインを描いていける。これはアートに近い感覚だ。

体感320km/hオーバー! S1000RRが遅く感じる

加速性能も尋常ではない。1.5kmのロングストレートでS1000RRの場合、中間辺りにあるコントロールタワー手前で299km/hに達してリミッターが作動する。

ところがHP4では、最終コーナー立ち上がりからして明らかに加速が違うし、コントロールタワーを過ぎても鞭を入れた駿馬のようにガンガン加速していく。

あのS1000RRが遅く感じるほどのスピード感。レーサーなので速度計は付いていないが、景色の流れや風圧の違いから体感的には320km/hは出ていると思った。

乾燥重量146kg、215馬力という現実離れした走りの世界を想像してみてほしい。まさにMotoGPマシンを疑似体験したような感覚と言っていいだろう。

圧倒的な軽さの中にある「たわみ」感

コーナリングでは一種独特の感覚に触れることができた。当代一流のスーパースポーツであるS1000RRでさえも、タイトな切り返しでは「よっこらしょ」的な体重移動が必要になるが、HP4はスパッスパッときまる。

マシンの動きにキレがあり、軽やかなのはもちろんだが、加えて独特のしなやかさがあるのだ。

真夏の猛暑の中、身体的にも断然ラクに走れるのも驚きだった。カーボンフレームということで、バキッとした硬質な感じをイメージしていたが、むしろ逆で何というか柔らかさを感じる。

棒高跳びのポールは最近ではカーボンファイバーが使われているそうだが、「しなり」とか「たわみ」という言葉をHP4の開発者から聞かされて、それを連想した。

開発者によると「カーボン製のフレームとホイール、最高峰のサスペンションによってその感覚がもたらされているのだろう」ということだった。

「え、カーボン?」と最初はちょっと斜に構えていた自分がいたが、試乗を終えてみると180度その見方が変わった。最高峰の技術と素材で作られたマシンは、かつてないまでに乗りやすく、そして速かった。

コストダウンによって、HP4のテクノロジーがもっと身近な存在になってくれる日が待ち遠しい。

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ケニー佐川

ケニー佐川Webikeニュース編集長

投稿者プロフィール

早稲田大学教育学部卒業後、情報メディア企業グループ、マーケティング・コンサルタント会社などを経て独立。趣味で始めたロードレースを通じてモータージャーナルの世界へ。
雑誌編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。
株式会社モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。
日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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