ライテク都市伝説を斬る その9 [上目使いで背中を丸めろ]

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

基本的な構えの姿勢は、骨盤前傾姿勢

ライディングフォームは背中を丸め、尾てい骨からシートに荷重し、上目使いで前を見ろ、と言われることがよくあります。
でも、これは大間違いです。この姿勢では骨盤が「後傾」したフォームになってしまうからです。

どんなスポーツでも、基本的な「構え」の姿勢として、骨盤が前傾していることが大切です。
骨盤が前傾した状態は、ズボンのベルトラインが前下がりになっている状態、と考えていいでしょう。骨盤が前傾していることを骨盤を立てる、または起こすと表現されることもありますし、逆に後傾していることは寝ているとも言われます。

マシンをコントロールするため、各部にテンションを掛ける姿勢

日本人は欧米人や黒人よりも、骨格的に骨盤が後傾しがちなうえに、骨盤が後傾した立ち姿勢がカッコいいと思われることも多いようです。
でも、それでは、スポーツする動作を取れず、正しいライディングもできません。

骨盤が後傾していると、大腿骨と背骨を結ぶ大腰筋などのインナーマッスル群や、太ももの裏側のハムストリングスが弛緩して、テンションが掛けられず、腰や体幹で身体を動かすことができなくなるのです。
尾てい骨をシートに付けよう付けようと意識すると、骨盤が後傾してしまうはずです。

骨盤を前傾させることで、インナーマッスルを働かせやすく、また体幹が前傾し、重心を前方に移動させやすい体勢となります。能動的にマシンをコントロールしやすくもなります。

骨盤前傾姿勢では、背骨はS字に湾曲し、坐骨結節で荷重する

骨盤が正しく前傾していると、背骨は全体が後ろ側に湾曲して丸まるのではなく、腰椎は前湾、胸椎は後湾、頚椎は前湾と、横から見たときの背骨はS字を描くはずです。
また、尾てい骨ではなく、坐骨結節(骨盤の真下辺りにある左右の出っ張り)の前側から荷重することになります。

▲骨盤が前傾したフォーム
▲骨盤が後傾したフォーム

ライディングポジションの2つの写真を見比べていただければ、その違いも分かるとともいます。一見、前傾姿勢でカッコいいと思われがちな骨盤後傾フォームは、マシンをしっかりコントロールする上では本当は良くないのです。

ただ、ライディングスクールのSRTTを主宰する内藤栄俊さんのように、初心者にはあえて骨盤後傾姿勢を薦める優秀なインストラクターもいます。
これは、骨盤後傾の姿勢が身体に染み付いている人の場合、骨盤前傾の姿勢を取らせようとすると身体が固まってしまい、うまく乗れなくなってしまうからだそうです。

もっとも、内藤さんにしても、さらにハイレベルな走りを求める人には骨盤前傾姿勢を指導されています。
いずれにしても、バイクをうまくコントロールするには、体を柔軟に動かすためのストレッチなどによる基本的なトレーニングも必要ということになります。

耳穴と鼻先を結ぶ線は水平にあること

骨盤が前傾していれば、胸は開き、頭は顎を少し出した姿勢になるにも関わらず、上目遣いに前を見るのが良いとされることもあります。
そのほうが、アグレッシブモードで集中力が高まり、前荷重も稼ぎやすいと思われがちなのです。

頭を少し下に向け、耳の穴と眼球を結ぶ線を水平にした状態を、歯科診療用語で「フランクフルト平面」と呼びますが、それだと目線を楽に動かせるのは水平より下部のエリアになります。

これに対し、耳の穴と鼻先を水平にする「カンペル平面状態」だと、目線の自由度が高く、身体もリラックスできるのです。
また、上目使いに顎を噛み締めると肩や首が固まりますが、真っ直ぐ前を向いて、奥歯ではなく前歯を噛むとリラックスしやすいということもあります。

剣道にしろ、柔道にしろ、相手に向かう姿勢が「カンペル平面」状態にあることを考えれば、そのことも納得してもらえると思います。
ですから、コーナーへは、頭を水平に顎から体幹を先導する感じで進入することが、リラックスしたライディングフォームの基本となるわけです。

和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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