新型「TMAX530」が主張する真のスポーツ性とは

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

目を見張るTMAXの進歩

新型TMAXに乗り、いたく感動しました。スポーツ性を具現化するに留まらず、バイクのハンドリングにとってスポーツ性とは何かを主張していたからです。

と同時に、TMAXの十数年の歴史に目を向けたとき、その進化にも感心させられました。

2001年に初登場。
2004年には前後タイヤをラジアル化し、フロントフォークを大径化

▲2001年に登場した「TMAX500」。前後バランス47:53、最大バンク角50度というスクーターの概念を超えたスポーツコミューター。エンジンも最高出力も38馬力と強力だ。

ここで流れを振り返ってみますと、初代TMAXは01年型として登場。スクーターであってもユニットスイング式ではなく、エンジンをフレームにマウントしてスイングアーム式とし、バネ下の重量物を減らし、フロントフォークを下側だけでなく上下のブラケットでクランプ。

十分な車体剛性と47%という大きい前輪分布荷重を得たのです。

ただ、諸性能はスクーターの常識を破るものであっても、私はこれを認めることはできませんでした。走りの限界点が高くても、ホイールが小径だけに、限界時の挙動に信頼を寄せることができなかったのです。

でも、前後タイヤをラジアルとし、フロントフォークをφ38mmからφ41mmに大径化するなどした04年型には、可能性を見出した気がしました。

ラジアルタイヤは情報が豊かで、フォークの大径化で高剛性フレームとのマッチングが良く、燃料噴射化されたエンジンでマシンを操りやすくなったのです。

▲2004年式「TMAX500」。FI化とコンロッドやピストンなどの見直しでトルクアップ。Wディスクやラジアルタイヤを採用。ショートスクリーンと5本スポークホイールは国内専用。

アルミダイキャストフレームを採用し、排気量を拡大し軽量化をはかる

3代目となる08年型は、フロントを15インチに大径化、フロントフォークもφ43mm径とし、CFアルミダイキャストフレームを採用。タイヤは過渡特性を掴みやすく、剛性アップされたフロントフォークがタイヤの仕事を、表情豊かなフレームにダイレクトに伝えてくれます。モーターサイクルとして満足できるレベルに達したのです。

さらに12年型では、排気量を499ccから533ccに拡大、トルクアップによってドライバビリティを向上させ、スイングアームを35%を軽量化し、車重も4kg軽量化。前輪分布荷重は48%に増大、マスも集中しました。

前後輪からの接地感はみずみずしく、マシンの状態を把握しやすく、安心感に包まれます。またスロットルでマシンを扱いやすく、スクーターにこれ以上のものは求められないと思ったほどでした。

▲2008年式。フロントタイヤを14インチから15インチへ。
▲2015年式。スポーツバイクの要素をスクーターのスタイリングにパッケージした。

期待を凌駕していた新型

新型は、走りの進化では5代目、フレームとしては第3世代となります。すでに先代型において完璧だと思ったのに、新型は一体どうなのか。よりモーターサイクルらしいハンドリングを実現したとのことでも、その方向性に危惧さえ覚えていました。

でも、新しいTMAXのハンドリングは、私の期待を上回っていました。“曲がる”のではなく、“曲げる(ことができる)”コーナリングが造り込まれていたのです。

ただ曲がるだけでは、マシンに依存し、限界に達すると転倒が待っていますし、駆る面白さにも欠けます。でも、自身が曲げることで、フルバンク時にタイヤに負担を掛けず、旋回性を自らが引き出し、コントロールを楽しむこともできます。これぞ、スポーツなのです。

具体的には、初期旋回でステアリングをコーナーに向けて切り付けることかできて、回頭性が得られるか否かの問題になります。

新型は、エンジン搭載位置を40mm上、19mm前方とし、スイングアームも40mmロング化、前輪分布荷重は50%となり、キャスター角は1度寝かした26度とされました。

これにより、重心高も高く、寝かし込み過程で重心の横移動量が大きくなり、それに合わせて、ステアリングを切れ込ませやすくなります。寝たキャスター角のステアリングのバランス機能がそれを助け、大きい前輪荷重がタイヤにしっかり仕事をさせてくれるというわけです。

そして、ステアした後は、スロットルを開けてリヤに荷重を移し、リヤからの旋回力で曲がっていくことになりますが、新型はリヤサスがリンク式となり、その荷重の受け渡しも絶妙です。

このスポーツ性は並みのロードスポーツをも凌ぐ

はっきり言って、初期の旋回力は、そこいらのロードスポーツを上回っています。ホイール径が小径で、ステップスルーのライポジに体重移動の自由度が高いこともあるのでしょう。

ともかく、この回頭性を引き出すのは、体幹のボディラングエージだということを知っておいて下さい。身体を固めたままでは、バイクを曲げることができないのです。だからこそスポーツでもあるのです。

また、バイクは「寝かすことでステアリングが切れて曲がる」のではなく、「ステアリングを切り、曲がるバイクのバランスを保つため体幹を移動させる」という意識も必要です。

もし、TMAXにうまく乗れないとしたら、そうした意識に問題があるか、私の不定期連載コラム「ライテクの都市伝説を斬る」でも書いてきたように、バイクに入力してバイクを寝かせるという間違いを犯しているからでしょう。ステップスルー式にそのためのホールド感は期待できないからです。

ともかく、これぞスポーツハンドリング、と言い切ることにためらいのない新型TMAXなのです。

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和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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