賀曽利隆の「東北ツーリングで行きたい岬10選」

【賀曽利隆:冒険家・ツーリングジャーナリスト】

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賀曽利隆の岬考

我らライダーは道の尽きるところまで走って行きたいという気持ちがきわめて強いので、岬は絶好のツーリングポイントになっている。岬に立つと「あー、遠くまでやってきた!」というしみじみとした旅情を味わえるし、それとともに「よくやった!」といった達成感も味わえる。

このように岬は旅心を強く刺激してくれるが、それだけではなく、当サイトの「賀曽利隆のバイク旅3(岬編)」でもふれたようにじつに日本的なのである。それはぼくにとっては、日本の近隣諸国をまわってみて、初めてわかったことだった。

「韓国一周」(2000年)では、韓国本土の最東西南北端に立った。驚いたのは行く先々で韓国人に韓国本土の東西南北端を聞いてみたのだが、誰も知らない。かろうじて北朝鮮を見下ろす高城統一展望台が知られている程度だった。

最南端は木浦に近い「土末」。いかにもユーラシア大陸、ここに尽きるという地名なのだが、岬の突端には何もない。日本だったら「土末岬」ということで一大観光地になるところだが…。

最西端はソウルにも近い万里浦。ここは海水浴場としてよく知られているが、その西端の岬までいく人はまずいない。

最東端は浦項に近い旭日湾に突き出た小半島。「韓国一周」ではスズキDJEBEL250XTのGPSバージョンを使ったので、海岸線を何度も往復し、東経129度35分01秒の地点を韓国本土の最東端と特定した。近くには「海成水産(ヘソンスサン)」という水産会社の生け簀があった。

韓国には半島名はあっても岬名はほとんどないといっていい。複雑な地形の海岸線が長くつづく朝鮮半島なので、地形としての岬は無数にあるのだが…。詳細な朝鮮半島の全図を見ると北朝鮮に1ヶ所、韓国に2ヶ所、「串」のついた岬名を確認できたが、それだけだ。ちなみに日本には「岬」、「崎」、「埼」、「碕」、「鼻」などのついた岬名は何百とある。

「旧満州走破行」(2002年)では、110ccバイクで中国の東北地方を一周した。この時、遼東半島突端の岬に名前がないのに驚き、中国全土の詳細な地図を見たが、やはり中国にも岬がないことがわかった。日本以上に中国文化の影響を強く受ける韓国に岬がないのは、中国に岬がないからだとカソリは考えた。

我々がふだん使っている「岬」は漢字だが、日本の岬とは意味が違う。中国の岬というのは山並みが平野に落ち込む先端の部分、日本でいえば「山崎」になる。日本語の「みさき」というのは「さき」に「み」をつけた合成語の「御崎」のことである。その御崎に岬の漢字を当てた。

なぜ「崎」に「御」をつけるかといえば、日本人にとって岬は多くの神社がまつられていることからもわかるように、神聖な場所になっているからだ。船乗りや漁民たちは岬を航海や漁の目印にした。

東北の岬10選

ということで東北の「岬めぐり」はじつにおもしろい。今までに何度も岬めぐりをしているが、徹底的に岬にこだわって50岬をめぐったこともある。出発点はいつも東北・太平洋岸最南の鵜ノ子岬で、反時計まわりで東北を一周している。東日本大震災の大津波で東北の太平洋岸が大きな被害を受けた以降は、「鵜ノ子岬~尻屋崎」を何度となく走っている。

尻屋崎は東北・太平洋岸最北の岬。「鵜ノ子岬~尻屋崎」を走ることによって、東北・太平洋岸の全域を見てまわることができるのだ。今年もすでに、第17回目の「鵜ノ子岬~尻屋崎」を走り終えた。

それはさておき、東北の岬ですごいのは、やはり太平洋岸だ。とくに三陸海岸には無数の岬がある。本州最東端のトドヶ崎はそのひとつだが、残念ながらバイクで突端まで行かれる岬はこのエリアにはほとんどない。津軽海峡には本州最北端の大間崎や津軽半島最北端の龍飛崎がある。

日本海側になると、岬の数はガクンと少なくなるが、ひとつ残念なのは小泊半島(青森)突端の権現崎だ。下前漁港から岬への道は崩落で長らく通行止めになっている。この権現崎は東北の、というよりも日本海屈指の名岬。それだけに白神山地が日本海に落ちる須郷岬や男鹿半島突端の入道崎、秋田・山形県境の三崎は貴重なポイントになっている。

このような東北の岬事情を踏まえて、次のような「東北の岬10選」を選んでみた。鵜ノ子岬と権現崎の2岬は、番外編ということで、最後に紹介しよう。

=東北の岬10選=

01. 大間崎(青森)

▲本州最北端の大間崎。写真は岬突端の近くの大間漁港。夕日を浴びた漁港はキラキラと光り輝いていた(撮影:巣山悟)

北緯41度31分30秒の本州最北端の岬。岬の突端には「こゝ本州最北端の地」と彫り刻まれた石碑が建っている。目の前のクキド瀬戸を隔てて600メートルほど沖合いの弁天島には大間灯台。その向こうの水平線上には、はっきりと北海道の山々が見えている。

三角形の特徴のある山の姿は函館山。目を左に移せば高野崎から龍飛崎にかけての津軽海峡の海岸線を望む。岬には民宿、食堂、みやげ物屋がある。

02. 尻屋崎(青森)

▲下北半島北東端の尻屋崎。東北の太平洋はここに尽きる。青空を背にして白亜の灯台がひときわ映える(撮影:巣山悟)

下北半島東北端の岬。「本州最涯の地」碑が建っている。岬と灯台はつきものだが、尻屋埼灯台は日本に数ある灯台の中でも、文句なしに一番、絵になる灯台だとぼくは思っている。

光度200万カンデラの尻屋埼灯台は、犬吠埼灯台などと並び日本一の明るさ。岬の周辺は放牧場で、岬入口のゲートは夕方の5時で閉まる。冬期間は閉鎖。放牧されている名物馬は「寒立馬」と呼ばれている。

03. 龍飛崎(青森)

▲津軽半島最北端の龍飛崎。岬の突端には自衛隊のレーダー基地。津軽海峡対岸の北海道がよく見える

太宰治の『津軽』の文学碑が建つ龍飛漁港から岬の台上に登る階段は、日本でもここだけという「階段国道」(国道339号)だ。

階段を歩いて登りきったところには『津軽海峡冬景色』の歌碑が建っている。岬の突端には灯台と自衛隊のレーダー基地。夕暮れ時がすごくいい。北海道最南端の白神岬の灯台の灯とイカ漁の漁火を見る。

04. 高野崎(青森)

▲津軽海峡の高野崎。岬の突端には赤白2色の灯台。ここからは下北半島の大間崎と津軽半島の龍飛崎、北海道の白神岬の3岬が見える

津軽海峡に面した岬の中ではここからの眺めが一番。前方には北海道最南端の白神岬、右手には本州最北端の大間崎、左手には龍飛崎が見える。これら3岬が見えるのは高野崎だけだ。

赤白2色の灯台のわきから下っていくと、潮騒橋、渚橋の2つの橋で岬突端の岩場まで行ける。岬の周辺は広々としたキャンプ場になっている。

05. トドヶ崎(岩手)

▲本州最東端のトドヶ崎。重茂半島の姉吉漁港から山道を4キロほど歩いていく。岬の突端には東北一のノッポ灯台と本州最東端碑

東経142度04分35秒の本州最東端の岬。日本の秘境、重茂半島の姉吉漁港から4キロの山道を歩いていく。岬の突端には高さ34メートルの東北一のノッポ灯台。断崖上には「本州最東端」の碑が建っている。

往復で8キロ歩かなくてはならないので、ここまでやってくる人は少ない。それだけに絶景岬を独り占めできる。これがトドヶ崎の大きな魅力になっている。

06. 須郷岬(青森・秋田)

▲青森・秋田県境の須郷岬。世界遺産の白神山地はここで日本海に落ちる。国道101号のすぐ脇には岬の展望台。そこからの青森県側の眺めはすばらしい

青森・秋田県境の岬。世界遺産にも登録された豊かな自然の残る白神山地は、ここで日本海に落ちる。国道7号で越える青森・秋田県境の矢立峠から、国道101号で越える須郷岬までが白神山地ということになる。

展望台からは日本海の海岸線を一望。岬のレストラン「福寿草」の「いかづくし定食」はオススメだ。

07. 入道崎(秋田)

▲男鹿半島北端の入道崎。ここは北緯40度線上の岬で40度線のモニュメントが立っている。白黒2色の灯台には登れる

男鹿半島突端の北緯40度線上の岬。北緯40度線のモニュメントが立っている。岬の周辺は芝生に覆われ、ここでの潮騒を聞きながらの昼寝は最高に気持ちいい。

高さ24メートルの白黒2色の入道埼灯台には登れる。灯台の上からは、日本海の海岸線を一望する。入道崎は東北の岬の中では一番の観光地。大駐車場には観光バスや乗用車が並び、食堂、みやげ物店が軒を連ねる。

08. 三崎(秋田・山形)

▲秋田・山形県境の三崎。不動崎、大師崎、観音崎の3崎を合わせて三崎といっているが、写真は観音崎の展望台からの眺め

秋田・山形県境の岬。不動崎、大師崎、観音崎の3崎を合わせて三崎といっている。駐車場から観音崎の展望台まではすぐに登れる。夕日の名所で知られるこの展望台からは、日本海に浮かぶ飛島が見える。

おすすめは遊歩道で歩くこれらの3岬めぐり。三崎から南の日本海の海岸線は単調になり、ここを過ぎるともう目ぼしい岬はなくなる。

09. 御崎(宮城)

▲唐桑半島最南端の御崎。写真は岬突端の八艘曳といわれる岩場。絶好の磯釣りのポイントになっている

唐桑半島先端の岬。御崎神社前の駐車場から歩く一周2キロほどの遊歩道はいい。その途中には鯨塚。このあたりは、かつては鯨漁が盛んだった。

突端の灯台の先には幅30メートルほどの黒色粘板岩の岩場が100メートルほど海に突き出ている。八艘曳と呼ばれる岩場で、御崎神社の祭神が8艘の船を従えてここに上陸したという伝説が残る。岬には国民宿舎「からくわ荘」と御崎キャンプ場、ビジターセンターがある。

10. 塩屋崎(福島)

▲美空ひばりの『みだれ髪』の歌碑で知られる塩屋崎。写真は岬の南側からの眺め。海岸段丘上の白い灯台には登れる

高さ50メートルほどの海食崖に囲まれた岬の上には塩屋埼灯台。ここは登れる灯台だが、上からの眺めは絶景だ。南側に豊間漁港を見下ろし、北側に薄磯海岸を一望する。

豊間、薄磯ともに東日本大震災の大津波では壊滅的な被害を受けた。灯台下の美空ひばりの『みだれ髪』の歌碑は、大津波に流されずに残った奇跡のポイント。

=番外編=

1. 鵜ノ子岬(福島・茨城)

▲東北太平洋岸最南端の鵜ノ子岬。写真は岬の北側の勿来漁港。岬の南側には平潟漁港がある

東北・太平洋岸最南の岬。カソリの東北岬めぐりはいつもここから始まる。岬の北側には福島県の勿来漁港、岬の南側にはアンコウ漁で知られる茨城県の平潟漁港がある。

東京方向から国道6号を行くと、茨城・福島県境を越えてすぐに右折すると勿来漁港。鵜ノ子岬を過ぎるときれいな砂浜の勿来海岸が右手に見える。国道6号を左折すると、「奥州三関」の勿来関跡に登っていく。ここはまさに関東と東北の境だ。

2. 権現崎(青森)

▲小泊半島の権現崎。岬の突端から日本海の大断崖を見下ろす。灯台がはるか下の方に見える

日本海屈指の名岬。小泊半島の下前漁港先の駐車場から、ブナ林の中の遊歩道を30分ほど登っていくと、高さが219メートルという大断崖上に出る。灯台をはるか下に見る。足がすくむような光景。

岬には尾崎神社。ここは除福伝説の地でもある。ひときわ目立つ岬で、北の竜泊ラインから行っても、南の十三湖の方から行ってもよく見える。本文中でもふれたように下前漁港からの道は現在、通行止。

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賀曽利隆

賀曽利隆冒険家・ツーリングジャーナリスト

投稿者プロフィール

1947年東京生まれ。
1968年から2年間をかけてアフリカを一周したのを皮切りに、バイクで世界の6大陸を駆け巡る。
1982年には「パリ→ダカールラリー」に日本人ライダー初の参戦。1987年には「サハラ砂漠往復縦断」。7度の「日本一周」を成しとげ、「70代編日本一周」を目指している。
ツーリングマップル東北の担当ライダーで、東北の道という道を精力的に走っている。
モットーは「生涯旅人!」

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