賀曽利隆の「東北ツーリングで行きたい峠10選」

【賀曽利隆:冒険家・ツーリングジャーナリスト】

東北を南北に縦断する中央分水嶺の峠越え

東北の中央分水嶺の峠を越えながら、東京から青森まで走ったことがある。

中央分水嶺というのは北海道の宗谷岬から九州の佐多岬まで、途切れることなくつづく1本の線。この線を境にして日本列島は太平洋側と日本海側に二分される。日本列島の一番大きな境目といっていい。

そのうち東北の中央分水嶺というのは、津軽半島北端の龍飛崎から八甲田山へとつづき、そこからは東北地方を南北に縦断して走る奥羽山脈が中央分水嶺になる。

東北の背骨の奥羽山脈は、東の太平洋側と西の日本海側の2つの世界にきれいに分けている。「奥羽」の名称にしても、太平洋側の奥州(陸奥)と日本海側の羽州(出羽)を合わせたもので、まさに東北そのものだ。

奥羽山脈は八甲田山から南へ。岩手・秋田の県境を成し、栗駒山から南は宮城・山形の県境を成し、吾妻山から南は福島県を太平洋側の中通りと日本海側の会津に分けている。那須岳からは帝釈山脈となり、東北と関東を分けている。

次のように、「東北の峠10選」を選んでみたが、そのうち傘松峠、発荷峠、見返峠、笹谷峠、刈田峠、土湯峠、山王峠と、10峠のうち7峠が中央分水嶺の峠になる。中央分水嶺の峠越えはすごくおもしろい。

1. 傘松峠(青森)

国道103号の傘松峠は北八甲田と南八甲田を分ける峠。峠の北側には名湯の酸ヶ湯温泉がある。この一帯は東北有数の豪雪地帯で2013年2月21日には5.15メートルの積雪を記録した。

峠の南側には蓮沼がある。八甲田展望の絶好のポイントで、最高峰の大岳(1584m)や高田大岳(1552m)などの主峰群を眺める。青森の夜景を見下ろしながら峠を下った夜の峠越えも忘れられない。

2. 矢立峠(青森・秋田)

羽州街道(国道7号)で越える青森・秋田県境の峠。青森県側の矢立峠下には羽州街道の古道が残り、津軽藩の「峠下番所跡」の碑が立っている。

同じく青森県側の碇ヶ関の追分は羽州街道と盛岡に通じる津軽街道の分岐点。追分には碇ヶ関の関所があった。津軽街道は現在の国道282号に相当する。

矢立峠には道の駅「やたて峠」があり、矢立温泉「大館矢立ハイツ」の湯に入れる。

3. 発荷峠(秋田)

国道103号で越える十和田カルデラ外輪山の峠。東北有数の紅葉の名所として知られている。

駐車場のある峠の展望塔からは写真のように国道越しに十和田湖を見下ろす。湖に突き出た中山半島と御倉半島がよく見える。対岸は御鼻部山(1011m)。

そのほか十和田外輪山の峠には滝ノ沢峠、鉛山峠、見返峠があるが、発荷峠が一番の絶景峠だ。

4. 見返峠(秋田・岩手)

絶景ルートのアスピーテラインで越える岩手・秋田県境の峠。峠の展望台に立つと岩手富士の岩手山(2038m)を目の前に見る。秋田県側には幾重にもなって山々が重なりあい、一番奥に鳥海山が見える。

峠の駐車場にバイクを置いて、ぜひとも八幡平(1613m)の山頂まで行ってみよう。徒歩約30分。山頂の展望台からは360度の大展望を楽しめる。

5. 平庭峠(岩手)

国道4号の沼宮内から太平洋岸の久慈に通じる国道281号で越える峠。峠周辺の平庭高原はシラカバ林と天然芝が美しい。シラカバ林の中を走り抜ける区間もある。

とくに峠から県道29号に入ったあたりのシラカバ林は見事。沼宮内から久慈までの国道281号はおすすめルート。

まずは大坊峠を越え、葛巻の町を走り抜け、そして平庭峠を越える。峠を下ると久慈川の渓谷美を見ながら久慈の町に入っていく。

6. 笹谷峠(宮城・山形)

国道286号の宮城・山形県境の笹谷峠は、奥羽(奥州と羽州)を結ぶ最古の峠。その名の通り、クマザサが峠を覆いつくしている。

笹谷峠は宮城県側から山形県側に越えるのがいい。峠を越えて山形県側に入ると大展望が開け、幾重にも重なり合った山々を一望する。思わず「スゴイ!」と声が出るほど。

峠近くの稜線上には古代関の有耶無耶の関跡がある。

7. 刈田峠(宮城・山形)

蔵王エコーラインで越える宮城・山形県境の刈田峠は、蔵王連峰を北蔵王と南蔵王に分けている。

峠からは南蔵王を一望。中央火口丘の馬ノ神岳や前烏帽子岳、後烏帽子岳、屏風岳、不忘山とつづく外輪山を見る。

峠からはリフトで北蔵王の刈田岳(1758m)に登れる。目の前には東北一の絶景といってもいいほどの御釜。蔵王連峰の最高峰、熊野岳(1843m)が正面に見える。

8. 土湯峠(福島)

国道105号で越える土湯峠は吾妻山と安達太良山の間の峠。新道は長大なトンネルで峠を抜けているが、旧道で峠上に立つと会津の山々を一望する。

正面には会津のシンボルの磐梯山(1818m)。峠から稜線上を行けば、絶景ルートの磐梯吾妻スカイラインに入っていける。

峠周辺には幕川温泉、鷲倉温泉、赤湯温泉、新野地温泉、野地温泉の名湯の数々がある。

9. 六十里越(新潟・福島)

国道252号で越える六十里越には新潟県側の小出(魚沼市)から行くのがいい。関越道の小出ICは東北への入口にもなっている。

六十里越は豪雪の峠。冬期閉鎖が解除された直後に行くと、峠のトンネルを抜け出た瞬間、息を飲むすばらしい残雪の雪景色が開ける。

田子倉ダムの田子倉湖の右手には前毛猛山(1233m)を見る。その南には毛猛山(1517m)、さらにその南の名無し山が東北の最西端になる。

10. 山王峠(栃木・福島)

会津西街道で越える栃木・福島県境の山王峠は、関東と東北を分ける帝釈山脈の峠。かつては会津中街道、会津東街道もあった。会津側では会津西街道のことを日光街道とか下野街道と呼んでいる。

山王峠を境にして世界は大きく変わる。冬だと関東側は快晴なのに、山王峠を越えた奥会津は吹雪ということがよくある。

山王峠越えの国道は121号、352号、400号と3本の重複区間になっている。

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賀曽利隆

賀曽利隆冒険家・ツーリングジャーナリスト

投稿者プロフィール

1947年東京生まれ。
1968年から2年間をかけてアフリカを一周したのを皮切りに、バイクで世界の6大陸を駆け巡る。
1982年には「パリ→ダカールラリー」に日本人ライダー初の参戦。1987年には「サハラ砂漠往復縦断」。7度の「日本一周」を成しとげ、「70代編日本一周」を目指している。
ツーリングマップル東北の担当ライダーで、東北の道という道を精力的に走っている。
モットーは「生涯旅人!」

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