ドゥカティの魅力をビギナー向けに昇華させた、モンスター797

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

ドゥカティの「持ち味」「個性」の共通認識

工業製品にしろ芸術作品にしろ、魅力的なものには、メーカー・作者に共通する持ち味というものがあります。彼らがそれを意識しなくても、それぞれに与えられた環境・背景で、当たり前に物造りすれば、そうなってしまうものなのです。

とは言え、現在の大メーカーが組織で動く様なものとなると、そうもいきません。成文化したコンセプトを徹底させ、数値で裏付けを取る取り組みも必要になってきます。

では、ドゥカティはどうなんでしょう。ドゥカティのバイクには独特の個性があります。

特に以前だと、すんなりは身体には馴染まず、御する難しさがあっても、それを乗りこなしたときの悦びには代え難いものがありました。それがドゥカティの魅力だと信じてこられた方も多いはずです。

でも、果たしてそのことをドゥカティ自身は認識しているのでしょうか。

797の発表で発見した”Undemanding Fun”なるキーワード

今回、私は南フランスで開催されたモンスター797の試乗会に出席してきました。そして、その発表会で、797が目指した一つの言葉に、耳が釘付けになりました。

それは、”Undemanding Fun”というものです。“ライダーへの要求度が高くない面白さ”という意味に解釈すればいいでしょうか。つまり、逆のDemanding Fun、つまり要求度が高い面白さがドゥカティの持ち味だと、彼らも認識しているということになります。

その後のディナーで、向かいの席に座った797のプロジェクトマネージャー、ユージニオ・ゲラルディさんにそのことを話すと、彼もそのことに納得。私が言った「昔の900SSなどは、要求度で満ちていた。」が、大笑いのオチになったものです。

797には、親しみやすさに中にマニアックさもあった

いくら要求度の高さがドゥカティの魅力であっても、敷居が高ければ取っ付きが悪く、エントリーユーザーには受け入れにくくなってしまいます。

だから、ドゥカティはモンスター797に、”Undemanding Fun”なるコンセプトを掲げたのではないでしょうか。

797は、ちょっとした進路変更でも、クセなく素直に、軽快に俊敏に向きを変えていくハンドリングで、難なく身体に馴染んできます。

これには、エンジンが空冷2バルブで軽量であることのおかげもあるのですが、新設計されたフレームも大きく寄与していると思われます。全体のメンバーがトラス状に組み合わされたフレームは、高剛性にして撓み(たわみ)方がナチュラルなのです。

またエンジンも、5750rpmと低くにあるトルクピークに向かっての立ち上がりを生かし、日常域で爽快に楽しめます。

それでいて、コーナーでは、攻め込んだだけ、マシンからは手応えが返ってきます。走りに自信が持てて、「もっと楽しもうか」との気にもさせられます。ドゥカティらしいマニアックさをも秘めていたのです。

今回のモンスター797の試乗会では、我々がドゥカティらしさとして感じていた持ち味を造り手と確認し合えたことが、私にとって大きな収穫だったのです。

和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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