賀曽利隆の「温泉めぐりの半島一周」第2弾 三浦半島編

【賀曽利隆:冒険家・ツーリングジャーナリスト】

前回:今年も想いを込めて作りあげた『ツーリングマップル東北 2017年版』

相棒はVanVan200。温泉をめぐる三浦半島一周へ

「温泉めぐりの半島一周」の第2弾は三浦半島。JR横須賀線の逗子駅前を出発点にした。相棒はスズキのVanVan200。極太タイヤの遊び心満点のバイクだ。

昨年の12月16日9時、逗子駅前を出発。逗子の町を走り抜け、三浦半島一周ルートの国道134号を行く。天気は上々。右手に相模湾の海が見えてくる。VanVan200のハンドルを握りながら、訳もなく「ウォ~!」と雄叫びを上げる。

バイクというのは乗っているだけで、もうそれだけでうれしくなってくるもの。

国道134号で三浦半島の西海岸を南下する。左手に三浦半島の最高峰の大楠山(241m)を眺め、右手の秋谷海岸への小道に入っていく。

▲「三浦半島一周」の出発点はJR横須賀線の逗子駅前

今は廃業湯の大楠温泉を懐かしむ

「う~ん、確かこのあたりにあったんだけどなあ~」と、10年以上も前の記憶を頼りにVanVan200を走らせたが、ついに見つけ出せなかった。

以前このあたりにあった一軒宿の温泉「大楠温泉」を探し出そうとしたのだが、ついにたどり着くことはできず、秋谷海岸にVanVan200を止めた。大楠温泉の湯に最初に入ったのは2001年11月30日のことだった。そのときの入浴料金は1000円。無色透明の湯。

肌に柔らかな湯にどっぷりとつかりながら、常連さんとの「湯の中談義」。「私はねー、もう年金生活だけど、週に2回の温泉だけは欠かせない」といっていた。
大広間ではオバチャンたちがカラオケに夢中。それを子守唄にしてグッスリ眠った。湯上りの眠りというのは最高に気持ちいい。

次に入ったのは2005年3月15日。入浴料金は1100円。その時は湯につかりながら自称歴史学者さんとの「湯の中談義」になった。
「なあ、キミ、義経は東北から北海道に渡り、さらに黒龍江をさかのぼって蒙古まで行ってるんだ。チンギス・ハーンはね、義経のことなんだよ」と歴史学者さんは湯の中で熱弁をふるった。

大広間では湯上がりのみなさんが横になっていた。「日帰り湯治」の人が多いという。午前中に湯に入り、昼食を食べ、昼寝をして午後にまた湯に入り、夕方には帰るというのが日帰り湯治なのだという。

多くの人がゴロゴロしている大広間でぼくは「エビフライライス」(1250円)を食べた。エビが4尾。エビフライは揚げたてでサクサクしていた。
「今度は大楠温泉に泊まりに来よう!」と思っていたのだが、それもかなわずに廃業湯になってしまった。今はその跡形もない。

いよいよ三浦半島の温泉めぐりを開始

▲ソレイユの丘温泉「海と夕日の湯」に入る

秋谷海岸でしばし大楠温泉を懐かしんだあとは、いよいよ三浦半島の温泉めぐりを開始する。

第1湯目はソレイユの丘温泉「海と夕日の湯」(入浴料650円)。入浴料のほかにバイクの駐輪代400円が必要。
大浴場と露天風呂の無色透明の湯に入った。気持ちのいい湯。平日ということもあってかほかに入浴客もなく、大浴場と露天風呂を独り占めにした。

逗子から22キロの三崎に着くと、三崎漁港前の「ひとみ食堂」で「まぐろ丼」(1000円)を食べた。「浜松のウナギ」と同じで、三崎に来るとマグロを食べたくなる。三崎の「マグロ丼」のあとは城ケ島大橋(往復50円)で城ケ島に渡った。

▲三崎漁港前「ひとみ食堂」の「まぐろ丼」。三崎といえばマグロだ

三浦半島南東端の剱崎へ

城ケ島を歩いたあと海沿いの県道215号で三浦半島南東端の剱崎へ。岬の突端には灯台。ここからは前回の房総半島がよく見える。房総半島南西端の洲崎までの海岸線を一望。伊豆諸島の伊豆大島、利島、新島も見える。

▲城ケ島漁港から対岸の三崎を見る
▲剱崎の海岸から東京湾越しに房総半島を見る

琥珀色の美人湯 野比温泉

剱崎からは三浦半島の東海岸を北上し、国道134号に合流。久里浜の手前で第2湯目の野比温泉(入浴料1000円)に入る。ここは国道沿いにある温泉。内風呂のみで、大浴場内はもうもうと湯気がたちこめている。人の顔も見えないほど。琥珀色の湯は美人湯で知られている。

湯から上がると大広間で休憩。そこでは常連さんたちがカラオケで盛り上がっていた。

▲国道134号沿いの野比温泉に到着

久里浜からは浦賀を通って観音崎へ

観音崎に着くと、VanVan200を駐車場に止めて遊歩道を歩いた。岬の周辺はシイやタブ、トベラなどの照葉樹の濃い緑で覆われ、「観音崎公園」になっている。目の前は浦賀水道。東京湾に出入りする大小の船が列をなしている。対岸の富津岬(千葉県)がよく見える。観音崎から富津岬までの距離はわずか7キロでしかない。

観音埼灯台(200円)に登る。初点灯は明治2年(1869年)1月1日。全国には2600余の灯台があるとのことだが、この灯台は日本最初の洋式灯台。

慶応2年(1866年)の江戸条約に基づいて設置された日本八灯台のうちのひとつで、房総半島最南端の野島埼灯台が2番目、さきほどの剱埼灯台が5番目に古い。観音埼灯台はその後、関東大震災などで2度倒壊し、現在の灯台は3代目になるという。

▲三浦半島南東端の剱埼灯台。日本で5番目に古い洋式灯台

観音崎を過ぎたところで第3湯目のSPASSO温泉(入浴料1500円)に入った。大浴場の湯にどっぷりつかったが、入浴料の1500円というのがちょっと辛い。

ぼくは2006年から2007年にかけての「温泉めぐりの日本一周」で3063湯の温泉に入った。1温泉地1湯という数え方だが、1年間で入った「3063湯」がギネスの世界記録に認定された。その時、入浴料が1000円超の温泉は泣く泣くパスしたのだ。

温泉めぐりで入る温泉の入浴料金はカソリ基準で、いちおう1000円をめどにしている。

▲観音崎から見る東京湾。対岸は京葉工業地帯
▲SPASSO温泉の大浴場

須賀温泉「湯楽の里」

▲国道16号沿いの横須賀温泉「湯楽の里」に到着

SPASSO温泉を過ぎると走水の交差点。ここから首都圏大環状の国道16号が始まる。終点は対岸の富津岬。富津岬までの直線距離は7キロだが、国道16号で行くと200キロを超える。

走水の交差点から国道16号をわずかに行った馬堀海岸に、第4湯目の横須賀温泉「湯楽の里」(入浴料1030円)がある。
ここは三浦半島でも一番人気の温泉でワサワサと混んでいた。大浴場は無色透明の炭酸泉。シュワーッと泡がわいている。露天風呂は塩分の濃い濁り湯。湯につかりながら目の前の東京湾を眺めた。

湯から上がると、館内のレストランで「特選にぎりずし」(1150円)を食べた。

▲横須賀温泉「湯楽の里」の「特選にぎりずし」

横須賀の中心街へ

国道16号と国道134号の合流点を過ぎ、横須賀の中心街へ。本町1丁目の交差点で国道16号を左折し、県道26号に入っていく。JR横須賀線の横須賀中央駅のわきを通り衣笠へ。その途中、県道26号の右手に第5湯目の佐野温泉「のぼり雲」(入浴料1000円)がある。

長屋門をくぐり抜けて入る館内には大浴場と露天風呂。歩行浴できる露天風呂もある。湯から上がると、今日、3度目の食事。横須賀名物の「海軍カレー」(900円)を食べた。まずはコップ1杯のミルクを飲み干す。サラダ、鶏の唐揚げ、ポテトチップスつきのボリューム満点のカレーライス。さすが海軍カレーだ。

▲佐野温泉「のぼり雲」の露天風呂

衣笠温泉は入浴のみは不可、阿部倉温泉は休業中…

佐野温泉から衣笠に出ると、そのまま県道26号で衣笠十字路を通って衣笠温泉へ。一軒宿の衣笠温泉は残念ながら入浴のみは不可。今度は泊まりで来よう。

衣笠温泉から衣笠十字路に戻ると、今度は県道27号で阿部倉峠に向かう。横浜横須賀道路の高架橋の下をくぐり抜けた「大楠山登山口」の交差点が阿部倉峠。三浦半島を西の相模湾側と東の東京湾側に二分する分水嶺の峠。県道27号の交通量は多いし、峠の真上まで家々が建ち並んでいる。

阿部倉峠の交差点を左折し、横浜横須賀道路をまたいで阿部倉温泉へ。ここは三浦一族の隠し湯だったところで、三浦半島の古湯。まさに三浦半島の秘湯なのだ。ところが山中の一軒宿「湯の沢旅館」は休業中。何とも残念…。そのかわりに阿部倉温泉から大楠山に登った。山頂からの眺めは絶景。

▲一軒宿の衣笠温泉は入浴のみは不可
▲一軒宿の阿部倉温泉は休業中…

足下には横須賀の市街地が広がり、猿島がはっきりと見えている。対岸の富津岬もよく見える。その間には第一、第二の台場。目の向きを変えて南の方を見ると、剱崎の向こうに房総半島の大房岬が大きく見える。

大楠山から阿部倉温泉に戻ると、阿部倉峠から県道26号→国道134号で逗子へ。逗子駅前に戻ったのは17時30分。「逗子→逗子」の「三浦半島一周」は86キロ。三浦半島は小さな半島だが、おおいに楽しませてくれた。

▲夕暮れの逗子海岸

賀曽利隆

賀曽利隆 冒険家・ツーリングジャーナリスト

投稿者プロフィール

1947年東京生まれ。
1968年から2年間をかけてアフリカを一周したのを皮切りに、バイクで世界の6大陸を駆け巡る。
1982年には「パリ→ダカールラリー」に日本人ライダー初の参戦。1987年には「サハラ砂漠往復縦断」。7度の「日本一周」を成しとげ、「70代編日本一周」を目指している。
ツーリングマップル東北の担当ライダーで、東北の道という道を精力的に走っている。
モットーは「生涯旅人!」

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