ライテク都市伝説を斬る その8 コーナーの先を見る[曲がりたい方向を見ることは本当に正しいのか]

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

コーナーへのアプローチでは、「しっかり曲がりたい方向を見ること。」その通りです。
歩いていても、見た方向に自然に身体は向いていきますし、逆に見ない方向には身体は進んでいかないからです。

これはこれで、間違ってはいません。だから、これを都市伝説と片付けるのは気が引けます。
でも、この通説が一人歩きし、誤った解釈に導くような解説が見られることも事実なのです。

よく、「コーナーのアウトを見てはいけない」と言われます。本当にそうなら、外側からの危険には無防備ということになります。

1点を集中して見てはいけない

曲がりたい方向に集中するがあまり、たとえ視点がコーナーのイン側、あるいは出口に向いていたとしても、そこに視点が釘付けになっている人が多くいます。

人がモノを見るということを考えますと、眼球は絶えずブルブルと動いていて、脳への信号は断続的なものだといいます。だから、狙ったライン上をトレースするように、視線を送り続けないといけないのです。

ところが、過剰に緊張したり、恐怖に襲われると、そこに視点が集中します。視野が狭くなり、唯一、その見えている所に行かざるを得なくなってしまうのです。
その意味でアウトを見てはいけないというわけです。

でも、「絶対にアウト側に視線を奪われてはいけないぞ」との心構えでは本末転倒であるばかりか、1点に集中する悪いクセが付きがちなのです。

極意は、遠山(えんざん)の目付

では、どうすればいいのでしょうか。

それは、ライディング中は遠くの山を見るように状況全体を把握し、その大きな視野の中で、自分が行くべきところを追っていかないといけないということです。

こういった事を剣道経験者に話すと、それは剣道で言う“遠山の目付(えんざんのめつけ)”と同じだと言います。でないと、相手の動きが見えないし、こっちの手も読まれてしまうのだそうです。

ライディングでは、そのように走れば、三半器官や荷重感覚を働かせやすく、マシンの状態も良く分かります。そして、周囲の状況も把握しやすいのです。

サーキットでの走行会では、チェッカーフラッグを見過ごす人をよく見かけます。これは前しか見ていないことの証拠でもあるのです。

首の向きはライディングにおける身体操作の結果

好ましくないアドバイスの一つに、「コーナーが近付いたら、頭をコーナーに向けてしまえ」というのがあります。

実際、筑波サーキットなどの回り込んだヘアピンでは、ブレーキングが終了する辺りで、頭が大きく出口側に向いてしまっているライダーを見かけることがあります。

曲げたい、コースアウトしない、という気持ちが現れているようですが、これは良い乗り方ではありません。

このアドバイスを他のスポーツ、たとえばゴルフに当てはめるとしたら、「インパクトの前にボールが飛んでいく方向に頭と視線を向けてしまえ」ということになりましょうか。でも、ゴルファー達は、インパクトの瞬間までボールを目で捕らえることを自然にこなしています。

スポーツにおける身体操作の起源は、脊椎動物の先祖である魚類の泳ぎ方にあると私は考えています。あの身体をくねらせる動きです。

ライディングでも、股関節をトリガーに腰から肩に向かって波動が伝わり、アプローチが始まります。

そのことで胸部がコーナーを向き、向きを変え始めるとともに、首がコーナーを向きます。そして、その波動は下向きに逆行し、腰によって本格的に体幹がイン側に移動します。

つまり、ステアリングの向きと首の向きはほぼ連動した動きになるはずなのです。

極論すれば、外側を見ても構わない

レーシングライダーのコーナー進入でのバトルでは、イン側に入ろうとするライダーが、アウト側のライダーの動きにも目を配っています。

俗に言われるセオリーからすると、これはあってはならないことになります。

大切なのは、一連の身体操作が身体に染み付いていることなのです。

【関連コラム】
◆【和歌山利宏】ライテク都市伝説を斬る バックナンバー
和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

この著者の最新の記事

関連記事

編集部おすすめ

  1. メインパイプとBoxの絶妙なバランス SP忠男は、CBR250RR(17)用となるPOWE…
  2. より軽い力で、奥まった場所の作業ができる 高品質な工具を提供するKTC(京都機械工具)は、…
  3. MARVELコミックオフィシャル、限定グラフィックモデル HJCヘルメット代理店のRSタイ…
  4. 欲しいバイクがきっと見つかる!「ウェビックバイク選び」のスタッフが試乗して「普通のライダー目線」のレ…
ページ上部へ戻る