賀曽利隆の「温泉めぐりの半島一周」房総半島編(1)

【賀曽利隆:冒険家・ツーリングジャーナリスト】

温泉をめぐりながらの半島ツーリングへ!

日本列島に無数ある半島は絶好のツーリングエリアだし、その先端の岬は絶好のツーリングポイントだ。日本中の半島をめぐり、日本の250余の岬に立ったカソリ、新たに「温泉めぐりの半島一周」を開始した。まずは房総半島だ。

昨年の11月6日5時、神奈川県伊勢原市の自宅を出発。スズキの250ccバイクのビッグボーイを走らせ、厚木ICから東名→首都高→東関道→京葉道路→館山道と高速道路を走りつなぎ、7時15分に木更津南ICに到着した。ここが「房総半島一周」の出発点になる。

▲木更津南ICに到着。ここが房総半島一周の出発点

国道16号で東京湾に突き出た富津岬に向かい、その途中で第1湯目の青堀温泉の温泉旅館「静養園」(入浴料800円)の湯に入った。

ここは朝は6時~9時、午後は13時~22時が入浴可。内風呂と露天風呂はともに濃い黒湯。ミネラル分の味がする。玄関前の築山が源泉。房総半島の温泉にはこのような黒湯が多い。

▲第1湯目の青堀温泉「静養園」の黒湯に入る

湯から上がると、さっぱりした気分で富津岬へ。富津岬は東京湾に延びた下洲と呼ばれる長さ5キロほどの砂州でできている。岬の突端まで行くと、まるで積み木細工のようにコンクリートのテラスを積み重ねて階段でつないだ、何とも奇妙な、それでいて印象的な展望台がある。

最上階までは結構な登り。ハアハア息を切らしてしまうが、それだけの価値は十分にある。潮風に吹かれながら360度の大展望を楽しんだ。

▲富津岬の展望台。対岸は三浦半島の観音崎

”半島温泉”の醍醐味。海が見える!

富津岬を後にすると、東京湾岸を南下し、第2湯目の金谷温泉「海辺の湯」(入浴料850円)に入る。この日は日曜日なので休日料金。大浴場と露天風呂の琥珀色の湯につかりながら、東京湾とその向こうの富士山を見る。海が見える温泉というのはいいものだ。

▲金谷温泉「海辺の湯」。ここは房総半島の人気スポット

東京湾フェリーの出る金谷港を過ぎると明鐘岬のトンネルを抜けるが、この岬は総国と安房国(房州)を分けている。まさに房総境。我々がふだん使っている「房総」は旧国の総と安房の合成語。総国が上総と下総の2国に分かれ、明鐘岬は上総と安房の国境になる。
今の千葉県は上総、下総と安房の3国から成っている。

内房海岸の岩井から5キロほど内陸に入った岩婦温泉の温泉旅館「岩婦館」に行くと残念ながら廃業していた。かつて入ったことのある温泉がこうして「廃業湯」になるのは何とも寂しいものだ。

つづいて国道127号沿いの一軒宿の弁天温泉に行くと、ここは入浴のみは不可。このように温泉というのは、そこに行けば入れるというものではない。

内房海岸から外房海岸へ。4湯をめぐる

11時30分館山に到着。ここからは波静かな館山湾岸の温泉めぐりが始まる。まずは、たてやま鏡ヶ浦温泉の「館山シーサイドホテル」(入浴料850円)に行ったが、入浴のみは15時からということでパス。

次の人魚の湯温泉「旅館 海紅豆」(入浴料800円)には入れた。石造りの湯船。塩分を含んだ無色透明の湯。湯につかりながら東京湾の出口を眺める。対岸の三浦半島もよく見える。

第4湯目は館山安房温泉「花しぶき」(入浴料800円)の湯。内風呂と露天風呂。無色透明無味無臭のやわらかな湯。肌を湯がやさしくつつみ込むような感触だ。

▲館山安房温泉「花しぶき」の湯。趣のある湯。露天風呂もある

第5湯目は休暇村館山温泉(入浴料700円)の湯。大浴場と露天風呂の目の前が海。ここからは対岸の三浦半島も富士山もよく見える。湯から上がるとレストランで「鮪の漬け丼セット」(1100円)を食べた。この湯上りの食事というのが、温泉めぐりの大きな楽しみといえる。

▲休暇村館山温泉の湯上りに食べた「鮪の漬け丼セット」

館山湾岸の3湯をめぐったところで、房総半島南西端の洲崎に立つ。岬の突端には白い灯台。展望台からは東京湾の出口を一望。この洲崎が内房と外房を分けている。対岸の三浦半島や富士山、伊豆半島をも一望。目の向きを変えると伊豆大島がよく見える。

▲洲崎の「洲埼灯台」。伊豆大島が見えている

岬からの大展望を楽しんだあとは、岬の入口の「森田屋商店」で「岬のところてん」(350円)を食べた。地元産の天草からつくったところてんだ。

洲崎を出発。房総半島も内房海岸から外房海岸に変わる。右手に見える海も東京湾から太平洋に変わる。

第6湯目の不老山薬師温泉「安房自然の村」(入浴料700円)の湯に入る。内風呂と露天風呂。無味無臭のうす茶色の湯。温泉のまわりは緑濃い常緑樹の樹林。その風景は「黒潮圏」を強く感じさせる。こうして次々に変わっていく風土を見られるのがバイク旅の大きな魅力だ。

▲不老山薬師温泉「安房自然の村」の湯に入る

岬の「三点セット」と野島崎の歴史

房総半島最南端の野島崎に着くと駐車場にビッグボーイを止め、岬入口の島崎漁港の岸壁に腰を下ろし、漁から帰って来る漁船を眺めた。そして厳島神社に参拝。岬に神社はつきもので、厳島神社や熊野神社、住吉神社といった海とのかかわりの深い神社が多くまつられている。

厳島神社の参拝を終えると岬突端の灯台へ。漁港と神社と灯台は岬の「三点セット」のようなものなのだ。

野島埼灯台は1866年(慶応2年)、米、英、仏、蘭の四ヵ国条約によって建てられた日本初の「洋式八灯台」のひとつ。三浦半島の観音埼灯台に次いで1869年(明治2年)12月に初点灯した。全国にある2600余の灯台の中では2番目に古い歴史をもっている。

灯台に登って太平洋の水平線を眺め、足元に広がる白浜一帯の海岸線を見下ろした。野島崎は白浜の岬だが、岩礁の海岸線は白浜というより黒磯。それなのに、なぜ白浜かといえば、紀州の白浜に由来している。「黒潮の道」で結ばれた紀州と房州は驚くほど近いのだ。

▲野島崎の「野島埼灯台」から見下ろす白浜海岸

房州の漁業を発展させたのは、この地に移り住んできた紀州の漁民たち。当時の紀州の漁民たちは日本最先端の漁業技術を持っていた。

野島崎は、もともとは地名通り「野島」という島だった。それが元禄大地震(1703年)で陸地につながった。さらに関東大震災で隆起し、岬周辺は岩礁地帯になった。野島崎はまさしく生きている岬なのだ。

房州を感じさせる”くじら”を食す!

野島崎前の白浜温泉「南海荘」の湯に入ろうとしたのだが、この日は残念ながら入浴のみは不可。右手に外房の海を見ながら走り、道の駅「潮風王国」で小休止。ここでは「くじらコロッケ」(200円)を食べた。

▲野島崎の海産物の店。ここで「くじらのたれ」を買った

次の千倉温泉「千倉館」も入浴のみは不可。千倉海底温泉の「ホテル千倉」も入浴のみは不可だが、その前の「夢みさき」(入浴料1500円)には入れた。7階の展望風呂からは太平洋の大海原を見渡した。


▲千倉海底温泉「夢みさき」の湯

▲千倉海底温泉「夢みさき」の展望風呂からの眺め

国道128号に出ると、道の駅「和田浜」で夕食。近くの和田漁港は捕鯨で知られているので、ここでは「くじらの刺身定食」(1200円)を食べた。

ニンニク醤油とショーガ醤油の両方で食べたクジラの刺身は房州を感じさせるもの。食後にはちょっと贅沢して「クリームあんみつ」を食べた。

▲道の駅「和田浜」の「くじらの刺身定食」

「宿湯」に入って地酒とくじら。ぐっすり眠る

今晩の宿は鴨川の手前にある太海温泉「こはら荘」。宿に到着するとさっそく若干、薄茶色をした湯につかる。肌に薄い膜が張るようなツルツル湯。

立ち寄り湯で入る温泉もいいが、こうしてひと晩泊って入る宿の湯はまた格別な味がする。ぼくはそれを称して「宿湯」と呼んでいる。

▲太海温泉「こはら荘」の湯に入る。宿湯に入りホッとする

湯から上がると鴨川の地酒「寿萬亀」を飲みながら、房州名物の「くじらのたれ」を食べた。ツチクジラを味醂漬けにして天日で干したもの。

温泉めぐりをしたあとは、もうバタンキュー状態で、深い眠りに落ちていく。温泉最高!

賀曽利隆の「温泉めぐりの半島一周」房総半島編(2)に続く

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賀曽利隆

賀曽利隆冒険家・ツーリングジャーナリスト

投稿者プロフィール

1947年東京生まれ。
1968年から2年間をかけてアフリカを一周したのを皮切りに、バイクで世界の6大陸を駆け巡る。
1982年には「パリ→ダカールラリー」に日本人ライダー初の参戦。1987年には「サハラ砂漠往復縦断」。7度の「日本一周」を成しとげ、「70代編日本一周」を目指している。
ツーリングマップル東北の担当ライダーで、東北の道という道を精力的に走っている。
モットーは「生涯旅人!」

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