新型「GSX-R1000」は伝統と革新の融合形! 【海外試乗コラム】

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

20170228_gsxr_w01▲フィリップアイランドサーキットで開催されたジャーナリスト向け試乗会

ニューGSX-Rは最高水準のスーパースポーツだった

新しいGSX-R1000、特に試乗した上級型のGSX-R1000Rは、実に素晴らしいスーパースポーツでした。
とにかく、これだけ高性能化されながら、扱いやすさとかコントロール性は、従来型をはるかに凌いでいるのです。

まず、エンジンはクラス最強の202psの最高出力を発揮しながら、低回転域から高回転域に向かって淀みなくトルクが上昇、ピーク域もワイドレンジにフラットなトルクで覆われています。
気が付いたら、とてつもないスピードが出ていると言うと誤解があるでしょうが、まあ、そんな感じです。

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でも、急激に立ち上ったりとか、唐突さを感じさせる領域がなく、その過程をしっかり把握できます。
スロットルレスポンスもスムーズそのもので、もっともレスポンスがダイレクトなモードAでさえ、コントローラブルそのものです。

新設計エンジンは基本設計が良いだけでなく、さすが新しいディバイス類をふんだんに投入しているだけのことはあると思わせます。

情報量が豊かな車体と最高水準の電子制御

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試乗した上級型1000Rの前後サスには、ショーワのバランスフリータイプが採用されており、動きはしなやかそのものです。
サーキット用の高荷重設定を思わせる敷居の高さはなく、ストリートバイクのような取っ付きの良さで、それでいてしっかり踏ん張ってくれます。

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そして、フレームの剛性バランスが素晴らしく、柔軟にしなりながらも芯がぶれません。情報量に富みながらも、常に安定しているのです。

特にコーナーからの立ち上がりでは、タイヤがグリップ限界に達すると、滑り始め、それが再び喰い付くことを繰り返しますのですが、その動きをトラクションコントロールの設定で調整できるのです。
しかも、それとサスペンションの動きとフレームのしなりがシンクロ。操っている実感に富み、限界付近のコントロール性も抜群なのです。
 
トラクションコントロールだけでなくABSも優れていて、不意にジャックナイフが生じてもABSが作動、フロントへの入力を微調整してくれます。

各電子制御をサポートするのに必要な6軸IMU

6軸のIMU(慣性計測装置)が搭載され、マシンの姿勢や運動状態によっても、トラコンやABSは制御され、ライダーを不安に陥れかねない挙動が、見事に排除されています。

20170228_gsxr_w10▲様々にインフォメーションを伝えるデジタルモニターは高機能だ

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▲GSX-Rに搭載される6軸IMUの概念図
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▲様々なセンサーが統合的に作動しライダーをサポート

また上級型Rには、アップだけなくダウン側でも有効なオートシフターが装備されています。ギヤダウンも左足のシフト操作だけで、自動的に空吹かしして回転を合わせてくれて、試乗中に一回の作動ミスもありませんでした。

モトGPの技術は新型を正常進化させるために活用された

2015年にスズキがモトGPに復帰した際、エンジンを以前のV型はなく並列型としたのは市販車との関連性を高めるためとされていました。そして、その年のEICMAでは、新型GSX-R1000のプロトタイプが出展されました。
 
そのため新型GSX-Rには、モトGPマシン「GSX-RR」レプリカとのイメージもありました。実際、エンジンに投入されたディバイスやフレーム形状などには、GSX-RRからのフィードバックを思わせる部分も多くありました。
 
でも、ここではっきりと言っておきたいのは、この新型はGSX-RRレプリカではなく、GSX-R以外の何者でもないということです。
 

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▲GSX-R1000のニューエンジン
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▲新設計となったフレーム

実は、私がここフィリップアイランドサーキットを走るのは、ちょうど10年ぶり。
マシンはGSX-R1000の07年型、第1世代の最終型に当たるモデルでした。(付け加えると、09年型でエンジンが小型化された第2世代モデルとなり、この新型はさらに小型化された第3世代となりましょうか。)

20170228_gsxr_w06▲開発スタッフ自ら試乗会のサポートを行う

しかも、開発スタッフの皆さんも、10年前から全員が若い世代に入れ代わっています。となるとこの新型は、10年前のモデルとは全く異なる背景から生まれてきたと考えて差し支えないところです。
 
なのに今回乗った新型は、10年前にここで乗った07年型をそのまま速く、乗りやすくしたという印象なのです。そのことに不思議な気さえするのです。

「サーキット性能最強」というコンセプト

 
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スズキの伝統が継承されていると言えばそれまでなのですが、このことは、1985年の初代GSX-Rの750以降、「サーキット性能最強」というコンセプトに一切のブレがなく、正常進化されてきたことを物語っていると思えてなりません。

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2001年の初代型以降、エンジンにはつながりの良い特性が追求され、吸排気系などの改良で車体やライポジのスリム化、マスの集中化が推進されてきました。フレームも2007年型でプレス材を使って懸架点を増やすなどで、剛性バランスが改善されてきました。

今回の新型への設計変更は、そうした培われてきた方向の延長線上にあるものばかりで、そのためにモトGPマシンからヒントを得ていると考えたほうがいいようです。
 
新しいGSX-R1000/Rには、伝統と革新が見事に融合していたのです。

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和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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