ライテク都市伝説を斬る その7 [グリップは薬指で斜めに握れ]

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

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グリップの握り方はそのライダー次第!

最近の雑誌などに掲載される多くのライテクものでは、ハンドルグリップは薬指、小指側に力を入れ、グリップに対し「手の平が斜めになるように握れ」と書かれていることが多いです。人差し指側で真っ直ぐ握るのは、間違いであるともされています。

本当にそうなのでしょうか。

実際のところ、そのように握っても、うまく行かないとの声も多く聞きます。

実は、「薬指を中心に斜めに握る」という握り方がピッタリくるのは、4人に1人ぐらいなのです。

おそらくは、薬指による斜め握りのほうが、メリットを説明しやすいということでないかと思います。でも握り方は、人が持って生まれた特徴によって、様々です。

スポーツトレーナー廣戸聡一氏が提唱する4スタンス理論をライディングに展開

多くのアスリートのトレーナーを務める廣戸聡一氏の「4スタンス理論」は、足の裏のどこで体重を支え、どの部分を軸とするか、人間の体の動かし方には「4つのタイプ」があるというものです。

私は、その「4スタンス理論」をバイクライディングに発展させて考えています。

モノの握り方には、人差し指のほうがしっかり握れる人がいれば、薬指でないとダメな人もいます。
また指だけで浅く握る人、手の平で深く握る人もいます。それは、カバンや電車のつり革の握り方からも明らかです。

バイクのグリップの握り方にも4通りあると考えており以下のように分類しています。


・人差し指による指握り(これをA1タイプとします)
・薬指・指握り(A2)
・人差し指・手の平握り(B1)
・薬指・手の平握り(B2)

この4通りです。

スロットルやハンドルに力や荷重を掛け、タコができやすくグローブが摩滅しやすいポイントも、A1では人差し指の根元、A2は薬指の根元で、B1だと親指の根元で、B2では小指側の手首近くとなります。

それだけではありません。握り方によって身体操作法、つまりはライディングスタイルまでが変わってくるのです。

ここで、それぞれの特徴を簡単に説明しましょう。

A1(人差し指・指握り)

2016motogp_rd15_suzuki-029▲マーベリック・ビニャーレス

A1(人差し指・指握り)のライダーは、前腕には回外力(手首を外側に捻ろうとする力)が掛かるので、グリップは斜め握りとなり、スロットルの開き方も回外方向に手首を回して行うことになります。
コーナーへの体重移動では、主に腹筋を使い、切り返しで身体を縮め、伸ばしながらコーナーに入り、やや体幹はうならせ気味で、肩越しに前方を見ることになります。

外膝を支点とした感覚となり、外膝の位置を決めた結果、外膝がタンクから離れて開いたままになりやすいのも特徴です。
激しいライディングで筋肉痛が生じやすいのは、上腕の内側から大胸筋に掛けてです。

モトGPライダーでは、マーベリック・ビニャーレスがこのタイプです。

A2(薬指・指握り)

2016motogp_rd18_honda-016▲ダニ・ペドロサ

A2(薬指・指握り)のライダーは、前腕には回内力(手首を内側に捻ろうとする力)が掛かり、グリップを真っ直ぐ握ります。スロットルを開くときも、回内方向に手首を回します。
コーナーへの体重移動では、主に背筋を使い、切り返しで身体を縮め、伸ばしながらコーナーに入り、背すじが伸びたフォームで、真っ直ぐ前方を見据えます。

内膝を支点とした感覚で、内膝の位置を決めた結果、内膝はやや地面に突き刺した印象があります。
激しいライディングで筋肉痛が生じやすいのは、上腕の外側です。

モトGPライダーでは、ダニ・ペドロサやホルヘ・ロレンソがこのタイプです。

2016motogp_rd16_yamaha-069▲ホルヘ・ロレンソ

B1(人差し指・手の平握り)

2016motogp_rd16_yamaha-119▲バレンティーノ・ロッシ

B1(人差し指・手の平握り)のライダーは、前腕には回内力が掛かり、グリップを真っ直ぐ握ります。スロットルを開くときも、回内方向に手首を回します。
コーナーへの体重移動では、主に背筋を使い、切り返しで身体を伸ばし、縮めながらコーナーに入ります。背すじが伸びたフォームで、真っ直ぐ前方を見据えます。体幹に働きかけるために、膝や肘をダイナミックに動かします。
激しいライディングで筋肉痛が生じやすいのは、上腕の内側から大胸筋に掛けてです。

モトGPライダーでは、バレンティーノ・ロッシがこのタイプです。

B2(薬指・手の平握り)

2016motogp_rd10_honda-009▲マルク・マルケス

前腕には回外力が掛かるので、斜め握りとなり、スロットルを開くのも回外方向に手首を回して行います。コーナーへの体重移動では、主に腹筋を使い、切り返しで身体を伸ばし、縮めながらコーナーに入ります。
体幹はうならせ気味で、肩越しに前方を見ることになります。体幹に働きかけるために、膝や肘をダイナミックに動かします。

激しいライディングで筋肉痛が生じやすいのは、上腕の外側です。
モトGPライダーでは、マルク・マルケスがこのタイプです。

トップライダーほどそれぞれの特徴が反映される

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以上のように、それぞれのタイプのモトGPライダーを挙げてみましたが、私が彼らにグリップに握り方を聞いたわけではありません。

彼らの走りには、4つのタイプの特徴が如実に反映されているから、それが分かるのです。逆に言えば、自分の身体の特徴を生かし切っているからこそ、彼らは速いのです。

ですから、自分に合ったグリップの握り方をすることが、上達のためにも大切になります。

都市伝説である薬指の斜め握りはB2タイプだけのものなのですが、この握り方を推奨している人たちが、かえってB2タイプではない、ということもあるのです。

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和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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