ミシュランの新しい「パワーRS」は革新的なタイヤだった!

2017年の春に発売が予定されている、ミシュランの新ハイグリップタイヤ「パワーRS」。パイロットパワー3の後継で、250ccクラスからリッタークラスまで幅広いサイズ展開を予定しており、多くのライダーに注目のタイヤです。
世界各国から選ばれた6名のジャーナリストの1人として、和歌山利宏氏がスペインのサーキットでテストライド!

今春発売予定のサーキット/公道対応タイヤ「パワーRS」

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

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ミシュランから発表されたパワーRSは、公道を主体にサーキット走行にも対応できるタイヤで、パイロットパワー3の後継型。サイズ展開も豊富で250ccクラスからリッタークラスまで幅広くラインナップされる予定だ。
競合タイヤには、ピレリのディアブロ・ロッソIII、ブリヂストンのバトラックスS21、メッツラーのスポルテックM7RRなどが挙げられる。

また、パワーRSの特徴的な独自の形状をした「溝」は、より深くされており、かつ段のような補強構造を施すことで排水性とグリップ感を両立させている。

最大の特徴は独自のリヤ構造

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パワーRSの技術上の最大の特徴は、リヤに採用されたACT+(アダプティブ・ケーシング・テクノロジー・プラス)というラジアル構造である。
すでにACTは昨年登場のパワースーパースポーツEVOに採用されており、このACT+はその発展形である。

基本的なラジアル構造では、ケーシングを補強するコードが1層または2層、進行方向と直行する横向き(90度)に配置される。
これに対し、昨今は70~80度の角度で2枚重ねとしたセミラジアル構造が主流になっている。特にフロントはその傾向が顕著だ。

これは、適度に剛性を高め、バイアスタイヤに通じるナチュラル感を得るためである。
ところが、そのことでトレッド部の剛性も高まってしまい、ラジアル本来の安定性とグリップ性能は損なわれることも否めない。

重なる角度を90度ではなくすることで生み出す「しなやかさ」

そこでリアに採用されるACTでは、2枚のラジアルカーカスの第1層の角度を70度とし、第2層を90度としている。
トレッド部で両層の重なる角度は20度だから、さほど剛性は高まらない。

が、サイドウォール部では、ビード部で折り返した第1層のカーカスが、お互いに40度の角度で重なり合う。サイドウォールの剛性を高め、構造を複雑化することなく、剛性バランスを最適化しているのだ。

それが新しいACT+では、現時点では詳しい技術資料は未発表ながら、折り返し部がサイドウォール部だけでなくトレッド部に達しているようだ。つまり、トレッド部の剛性分布が一様でなく、センターからショルダーにかけて剛性が高められているわけだ。

このグリップ感はモトGPタイヤからのフィードバック?

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スペインで試乗したパワーRSは、公道を主体にしたタイヤなのだが、驚くほどサーキット性能が高い。
パワーRSよりもサーキットを重視していると思われるピレリのディアブロ・ロッソIIIやブリヂストンのバトラックスS21はおろか、同じミシュランから昨年登場したパワースーパースポーツEVO以上にレーシングタイヤの片鱗を見せ付ける。

まず、グリップレベルが高い。これまでのミシュランだと、コンパウンドよりも、ケーシングのしなりによるグリップを強く感じさせたが、このパワーRSではコンパウンドでの食い付き感も豊かで、その意味で新世代を思わせる。

独自のタイヤ構造が最適な荷重感と接地感を生む

ミシュランは2016年、モトGPに7年ぶりに復帰している。活動休止中にMotoGPタイヤのハイグリップ化が進み、ヒジ擦りコーナリングが広まる変化もあったこともあり、ミシュランの復帰当初は特にフロントのグリップに違和感を抱くライダーがいたことも事実だ。
しかしミシュランの供給するタイヤの特性が受け入れられるようになるのに、さほど時間を要せず、そうした独自のケーシングの変化が注入されているのかもしれない。

とにかく新しいパワーRSは、荷重感と共に接地感も高まり、ギューッと曲がる。旋回性もトラクション性能も、このカテゴリーでの最高水準にある。
ただ、荷重を掛けて曲げるというリズムに乗ったほうがポテンシャルを発揮しやすく、その点では、常にリニアにステア特性が変化していくロッソIIIのほうが、取っ付きはいいのかも知れない。

安定性の良さは驚異的

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パワーRSの素晴らしさは、グリップレベルが高いだけでなく、限界時の過渡特性の穏やかにもある。穏やかに滑り始め、穏やかに再び食い付く。
当然、それに伴ない、タイヤも変形するわけだが、それが周期的に弾んだりすることがなく、挙動も安定している。
 
これぞ、まさにACT+の効果なのであろう。剛性バランスが最適化されたケーシングは、しなり具合も絶妙なのだ。
さらに、コーナリング中や減速時の安定性も高い。狙ったラインがブレることがなく、スキッとした気分を維持しやすい。

公道への順応性も当然、素晴らしい

20170111_powerrs04▲リアは140サイズから240サイズまで、幅広いラインナップ

こうした試乗記からすると、サーキット指向のタイヤのようだが、これはあくまでもは公道向きのタイヤである。軽快で素直なのだ。
通常時にハイグリップタイヤにありがちな強い接地感を感じさせるわけでなく、いい意味では素直であっても、悪い意味では頼りなさを覚えるかもしれない。それでも温まりは大変に良好で、荷重を掛けるやしっかり接地感を返してくれる。

新世代ミシュランを感じさせ、キャラが驚くほどワイドレンジなパワーRSだったのである。

Webike TV 「ミシュラン パワーRS」紹介動画

和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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