ライテク都市伝説を斬る その6 [フロントを切り増しして曲げる]

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

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フロントをコーナーに向けてから寝かし込む

前回のこのコラムでは、リヤが主輪でフロントが従輪であっても、初期旋回の部分ではフロントを主輪として、ライダー自らが向きを変えてやらないといけないと書きました。
コーナーへの進入では、リヤから寝かすだけではなく、フロントから向きを変えていかないといけないのです。

【前回コラム】
◆ライテク都市伝説を斬る [その5 フロントは従輪]

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言い方を変えれば、寝かせる前に、フロントをコーナーに向けてやるということになりましょうか。極論すれば、ハンドルを切ってから寝かせるわけです。
これは、いわゆる「逆操舵」とは逆の操作になり、本当にコーナーに向けてステアリングを切ったとしたら、バイクを寝かし込むことができないことになります。

「タメ」を作ることでバイクを曲げていく

矛盾しているようですが、そこがライディングの極意なのです。フロントがコーナーを向くように身体(体幹)を柔軟に動かさなければなりません。
バイクがまさに寝ていこうとするとき、外足荷重で体幹をアウト側に残してやると、バランスを保つためにフロントはもっと切れようとするわけです。これが、全てのスポーツに共通する「タメ」なのです。

フロントは、入り口で向きを決めたら、後は転がっていくだけ

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そうやって、フロントの向きを決めてから、腰で体幹をイン側に移動、コーナーに向けて体重移動してやることになります。
すると、フロントはライン上をストレスなく転がっていきます。本当の意味で肩の力が抜け、接地感もみずみずしく伝わってきます。

ただ、フロントは転がっていくだけであっても、手放しでいいわけではありません。ステアリングがもっと切れようとしてくるのをバランスさせるために、イン側のハンドルグリップには押し舵、あるいは当て舵といって、軽く押す力が掛かっているはずです。

そうすれば、たとえフロントタイヤが滑っても、無意識に腕に力を抜くだけで、フロントが切れることでグリップを取り戻し、また車体も起きてくるので、転倒を免れやすくなります。

フロントを切り増しするのは間違い

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ところが、乗り方が間違っていると、イン側グリップには引き舵といって、引く力が掛かってきます。

これは、コーナーに入っていつまでもフロントに負担を強いている状態です。フロントをもっと切って、曲がる力(コーナリングフォース)を高めようとしているわけです。
逆の見方をして、曲がる力をもっと発生させるために舵角が大きくなり、その舵角を元に戻そうとする作用を引き舵でバランスさせていると言ったほうが適当かもしれません。

これではフロントがグリップの限界に達しやすく、また、そんな状態でリヤが滑ったら、引き舵でますます車体が起こされるので、ハイサイドしやすくなります。

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ところが困ったことに、「コーナーに入ってハンドルを切り増しすることで、旋回性を高めることができる」なんて都市伝説があります。
引き舵状態になることで、フロントがコーナーに切れて旋回性が高まると錯覚しやすいのでしょうが、こんなことで旋回性が高まることはありません。

引き舵になるのは、乗り方が間違っている証拠なのです。

【関連コラム】
◆【和歌山利宏】ライテク都市伝説を斬る バックナンバー
和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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