公道での扱いやすさを高めた「GSX250R」 コンセプトに拍手を送りたくなった

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

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スズキ「GSX250R」登場で、国内4メーカー出揃った新型クォータースポーツ

EICMAではスズキから「GSX250R」が登場。これで国産4メーカーのツインエンジンを搭載するレーシーなクォータースポーツが出揃ったことになる。と、巷では受け入れられている。

確かに、プロダクションレースに参加できるマシンへの期待はあった。
今年もレースでは、カワサキのニンジャ250とヤマハのYZF-R25が善戦を繰り広げ、来季に向けて登場するホンダCBR250RRはポテンシャルを備えている。だから、これらに加わるマシンとしてスズキの新型クォーターに期待したいのも無理はない。

ところが、実際に登場したモデルは「GSX-R250」ではなく「GSX250R」であった。

「GS」シリーズから発展していったスズキの「4ストスポーツ」

20161207_gsx250_08▲2ストメーカーであったスズキが放った渾身の名機「GS750」

そもそも「GS」シリーズは、40年前のスズキ初の4ストロークのモデルに冠せられたネーミングだ。
その後、初代GSから発展した4ストモデルに「GSX」の名称が使われるようになり、さらに85年にセンセーショナルなマシンとして登場した「GSX-R750」以降は、「GSX-R」がサーキット最速モデルのネーミングとなっている。

20161207_gsx250_09▲乾燥で179kgと驚異の軽さを実現した初代「GSX-R750」

つまり、今回のネーミングからしても、これはレースを照準としたモデルではなく、末尾のRが示すレーシーなロードスポーツ「GSX」という位置付けなのである。

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▲カタナもGSXシリーズの1台といえる
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▲「GSX750F」は当時のツーリングスポーツモデル
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▲「GSX1300R」である隼は名称も近い

また、搭載されるエンジンも期待されていた新設計DOHC4バルブではなく、現行GSR250/S/Fから引き継がれたSOHC2バルブ。正直を言うと、がっかりした気持ちもあった。

日常域の扱いやすさを重視したエンジン

しかし、この大英断に思わず拍手を送りたい気分である。GSR250の日常域における扱いやすさと味わいを思い出し、それが引き継がれているであろうGSX250Rが魅力的であるに違いないと考えたのだ。

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このエンジンは、設計思想が他車とは一線を画している。
高回転高出力を狙う他の超ショートストロークエンジンに対して、このスズキの250エンジンはロングストロークで、最高出力発生回転数も4000rpmほど低い。
だから、高回転化を可能とするDOHCは必要はないし、高回転域で十分な新気充填を行うために4バルブとする必要もない。

高回転まで引っ張って性能を引き出していく他車に対して、このエンジンは日常域で性能を十分に取り出すことができる。
最大トルクは他と同等以上にあるし、ロングストロークの2バルブは吸気流速が速いので、レスポンスも絶妙というわけだ。

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サーキット性能を重視してきた過去の歴史

バイクの歴史、特に国産車の発展に注目したとき、競合メーカー間でサーキット性能を追及することで、技術開発が進んできた面はある。
だが、その一方で、多くのストリートユーザーを置き去りにしてきたことも否めない。

最新技術を取り入れ、性能や機能を追求するあまりに価格も大きく上がり、市場として衰退していった、レプリカやスーパースポーツという存在は歴史が証明している。

より扱いやすい250スポーツを目指して

最新の250cc勢が公道走行をないがしろにしているわけでないにしろ、サーキットではなく公道への順応性を第一義にすれば、もっと日常域で楽しめるものになる。スズキはその部分に注目し、GSX250Rを放ったというわけだ。

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さらに拍手を送りたくなったのは、エンジンがリファインされているうえに、フレームの基本をGSRから引き継ぎながら、車重は装備で178kgと同じフルカウル仕様のGSR250F比で11kgも軽量化されていることだ。

また、タンク容量は15リットルで、高い燃費性能と相まってツーリングユーザーにも嬉しい部分だ。

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レーシーなスタイリングに憧れ、スポーティなハンドリングを求めるも、公道での扱いやすさは譲れない。そんな大多数のライダーを照準とし、選択幅を広げているものだと思う。

落胆と期待を交錯させたことが印象的でもあったGSX250Rである。

和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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