EICMAで意外だった「軽量級」アドベンチャーの出現

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

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「パリダカ」から始まったアドベンチャーカテゴリー

ここのところ、アドベンチャーカテゴリが注目を集めている。

そもそもは、1970年代から人気を集めだしたパリダカールラリーに参戦するマシンのレプリカ(市販)モデルとして登場したカテゴリー。

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▲ホンダ XRV650アフリカツイン
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▲ヤマハ XT660Zテネレ

悪路をものともしない汎用性に富んだ性格が持ち味ながら、多くの場合、オンロードツアラー、あるいは街乗り用のバイクとして使われていることも事実である。

何はともあれ、人気のカテゴリーであることは紛れもない事実。その理由を考えると、人気も頷けるというものである。

かつてのバイクが持っていた汎用性が今の「アドベンチャー」に通じる

かつてのバイクには、何にでも使える汎用性があった。

が、昨今はバイクの進化と共にそれぞれに単能化が進み、狙ったシチュエーションでは最高でも、それ以外の使い方を許さなくなっている。

その点、アドベンチャーモデルは、走る道を問わず快適で条件を問わない。言ってみれば、かつてのバイク「原点バイク」が持っていた多様性が、高次元化されているのだ。

ストローク量が豊かな前後サスペンションによって不整地走破性や乗り心地が良好で、ライディングポジションも快適。ツアラーらしい風防効果や積載性も備えている。

しかも、サスペンションやタイヤの進歩もあって、ワインディングのコーナーもオンロードスポーツ並みにこなし、さらに車種によっては電子制御によってそれぞれが高水準化されているというわけだ。

大型化するアドベンチャーモデルに「ミドル化の兆し」さらに「軽量級」にも波及

ただ、原点バイクとしての資質を備えながら、現在のビッグアドベンチャーはメガスポーツ化していて、誰もが扱えるバイクとしてはいささか大き過ぎることも事実。

となると当然、排気量レンジのミドルクラスへの拡大や、性格をオンロード寄りとして日常性を高めることが、進化の方向として考えられる。

実際、今回のEICMAでは、ドゥカティの「ムルティストラーダ950」、ヤマハのMT-07のエンジンを搭載するコンセプトモデル「T7」、また、BMWからはオン寄りでレトロ調の「R nineT アーバンGS」が登場。

161129_48▲Murtistrada 950

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▲T7 Concept
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▲R nineT Urban GS

すでにINTERMOTではスズキが「Vストローム650」をモデルチェンジしており、そうした流れは明確である。

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▲V-strom650

ところが、アドベンチャーが一気に250から300ccクラスの軽量級にまで発展してくるとは、ちょっと意外であった。

スズキの「Vストローム250」、カワサキの「ヴェルシスX 300」(EICMAで出展されたのは300だが、250も発表されている)、そしてBMWからは「G 310 GS」が発表されたのだ。

実は異なる軽量級アドベンチャー3台のキャラクターとは!?

世界的に注目されている250から300ccクラスにアドベンチャーが加わってきたわけだが、興味深いのは、これら新登場の軽量級アドベンチャーの車輌性格が、見事なまでに三者三様であろうことである。

161129_54▲G 310 GS

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▲V-strrom250
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▲Versys-X 300

 

■「Vストローム250」オンロードベースのフロント17インチ

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まず、Vストローム250は、車体ディメンジョンはGSR250に近く、フロント17インチで、履いているタイヤもIRCのRX-01というオンロードタイプ。

GSR250をアドベンチャースタイルにしたモデルと言えなくもなく、GSR250のややロングストロークな並列2気筒エンジンが持つ扱いやすい特性を生かし、快適で利便性が高い日常走行をこなせるものと思われる。

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■「ヴェルシスX 300」フレームも新設計!フロント19インチの悪路走破性

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これに対し、ヴェルシスX 300は、軽量級アドベンチャーそのもののキャラクターのようだ。

オフロードでは衝撃吸収性の高いスポークホイールかつ、フロント19インチ。履いているIRCのGP-210は、オフロード指向のトレールタイヤ。

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数値は未発表ながらサスペンションストロークは伸ばされ、それに合わせてフロントフォーク径はニンジャのφ37mmからφ41mmに大径化される。

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フレームも専用設計のバックボーンタイプで、スリムでオフロード向きのものとされている。エンジンもニンジャ譲りの並列2気筒で、ベースが高回転型であることからすると、スポーティに楽しむことが身上のようだ。

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■「G 310 GS」単気筒エンジン、スリムなデザインで、オフロードも意識

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そして、G 310 GSは、フロント19インチで、タイヤにはメッツラーのツアランスというエンデューロラジアルを履き、前後サスストロークは本格的アドベンチャー並みの180mmにまで伸ばされている。

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エンジンも軽量な単気筒でおそらくは3車中、最もエンデューロ指向が強いのではないか。燃料タンク容量がスズキとカワサキの17リットルに対し11リットルしかないが、それだけにスリムでオフロード性能が高いのかもしれない。

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これら3台が示すように、アドベンチャーはそれぞれのライフスタイルに合わせた選択幅も大きくなっている。加えて今回のEICMAでは、ホンダから「X-ADV」というNC750系の並列2気筒エンジンを搭載する、スクータースタイルのアドベンチャーも登場。

161108_29▲X-ADV

ますますこの「アドベンチャー」というカテゴリーが多くの人に浸透していきそうな勢いなのである。

和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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