【和歌山利宏コラム】交通事故調査には第三者機関が必要なはず

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

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正しい事故調査を

ウェビックのニュースでも度々、バイクの事故が取り上げられます。私がそれを見て真っ先に頭に過ぎるのは、被害者となったライダーを気の毒に思う気持ち、不幸にも亡くなられた場合はお悔やみの気持ちです。

そして、正直を言うと、同時に加害者への憎しみも沸いてきます。さらに、明日は我が身とならないよう、その事故の教訓を生かそうと考えます。
それだけではありません。正しい事故調査が行われ、然るべき結論(補償問題が絡む)が下されるか、にまで想いを馳せてしまいます。

それはおそらく、過去に三度ばかり事故鑑定を依頼されたからだと思います。依頼人は被害者の親族、被害者の弁護士、検察官と三様でしたが、共通するのは、加害者側弁護士からの鑑定書に納得できず、それに対する反論書をということです。

お粗末な加害者サイドからの鑑定書

まあ、加害者サイドからの鑑定書というのは、酷いものです。過失を軽くするため、事実が曲げられるのです。警察側の鑑定書にしても、まるで高校生の物理の実験報告書みたいなもので、お粗末さに呆れ返ったことがあります。

中でも最悪だったのが、検察官からの依頼の件で、駐車場から出てきたトラックに走ってきたバイクが激突したという事故です。加害者のトラック側弁護士の言い分は、バイクの速度が高かったので、気付かなかったというのです。

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交通事故のブレーキングがモトGP並!?

加害者側の鑑定書によると、被害者のバイクは急ブレーキを掛けているのですが、その減速度は、現在のモトGPタイヤを履いたモトGPマシンにモトGPライダーが乗り、GPコースでフルブレーキングしたときに瞬間的に可能なGが持続されているという「最新のバイクやタイヤ、最高のライダー」から算出したものでした。だから初速度は高く、バイク側に過失ありというわけです。

その鑑定書を書いたのは、情けないことに某国立大学の教授でした。私は反論書で真っ当な初速度を算出をすると共に、「加害者側鑑定書のようなブレーキングは絶対に不可能で、辻褄を合わせようと物理学を曲げている」と書いてやったものです。

私の反論書に対して、教授からは反論書が出てきたのですが、それからは「素人が俺様に向かって何を言っている!」という気持ちが散見できました。
やるせない気持ちを検察官に伝えると「和歌山さんの反論書は裁判で有効な材料になりますから、気にしないでください」と言われ、救われた気分になったものです。

事実が曲げられないように

航空機事故、鉄道事故、海運事故の場合は、第三者委員会が結成され、調査が行われます。交通事故にもそうした取り組みが必要なはずなのです。幸い、近年になって、民間の第三者調査機関が発足し、活動されていると聞きますが、これは公的な機関に発展していってもいいかと思います。

そして、私たちはいつ交通事故の当事者になるか分かりません。事実が曲げられる可能性があることも肝に銘じておくべきなのでしょう。

和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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