【賀曽利隆 コラム】賀曽利隆のバイク旅(9)「林道日本一周 78日間2万8208キロ」

【賀曽利隆:冒険家・ツーリングジャーナリスト】

》【前回】賀曽利隆のバイク旅(8)「広州→上海2200キロ」

313本の林道を走る

「林道日本一周」をスタートさせたのは2010年5月12日のことだった。相棒はスズキDR-Z400S。「西日本編」と「東日本編」の2分割でまわり、78日間で2万8208キロを走った。
その間では全部で313本の林道を走り、ダート区間の合計は2283.4キロになった。日本列島縦断分ぐらいのダート距離で、全走行距離の1割近くがダートだ。

20160907_kasori9_01▲日本最長ダートの剣山スーパー林道を行く(徳島)

我ながらじつによくやったと自画自賛。「(こういうことができるのは)自分しかいないな!」と「林道の狼カソリ」はそう思うのだ。

というのは林道を走るのはそう簡単なことではない。大半の林道は地図にのっていないので、自分でみつけだし、入口を探さなくてはならないからだ。
それが通行可能かどうか、走り抜けられる林道なのかどうかも、実際に走ってみなくてはわからない。橋が落ちていたり、崩落や倒木などで通行不能ということもよくあることだ。

「林道ツーリング」のおもしろさ

今回の「林道日本一周」では1日で最高15本の林道を走ったが、それができたというのも「林道命!」で常日頃、日本中の林道を走っているカソリならではのことだと思っている。

20160907_kasori9_02▲林道の宝庫、大隅半島の津房林道で記念撮影(鹿児島)

林道が通行止めや通行不能になっているのはあたりまえのこと。
それだけに「林道ツーリング」のプランを立てるのはすごく難しくなる。1本の林道が走れないばかりに、すべての予定を変更、もしくはキャンセルしなくてはならないこともたびたびだ。宿を決めるのも午後、それも夕方近い時間が多くなる。

従って何でもキチンと決めてやる人には向かない世界。いつも頭を柔らかくし、どんな状況にも対応できるようにしなくてはならない。それがまた何本もの林道を走りつなぐ「林道ツーリング」のおもしろさにもなっている。

20160907_kasori9_03▲狗留孫川の渓流に沿って狗留孫林道を行く(宮崎)

難路・険路はあたりまえ

林道をバイクで走るためには、オフ車、もしくはデュアルパーパスのバイクでないと難しいし、それなりの装備と走りのテクニックも必要になってくる。
難路・険路はあたりまえの世界で、ほとんど人も車も入ってこないような林道も多い。そこでもしトラブルに見舞われたら、自分の力でもって抜け出さなくてはならない。「林道ツーリング」というのは、自分の力がおおいに試される世界でもある。

20160907_kasori9_04▲津和野の永明寺林道。この先に手掘りのトンネル(島根)

転倒も覚悟しなくてはならないが、今回の「林道日本一周」での転倒は全部で3回。

一番、大きなダメージを受けたのは四国山中で、左コーナーをまわった瞬間、落石の大岩が道の半分をふさいでいた。激突を避けるために急ブレーキをかけた瞬間に転倒。
左半身を強打し、あまりの痛みにしばらくは動けなかった。左足首の焼け付くような痛みが薄らいだところでヨロヨロと立ち上がり、バイクを起こして走り出したが、目のくらむような深い谷に落ちなくてよかったと、心底、胸をなでおろすのだった。

DRの強さは抜群で、ダメージをほとんど受けることもなく、そのまま走りつづけることができた。

20160907_kasori9_05▲関西最長ダートの氷ノ山瀞川林道を行く(兵庫)

20160907_kasori9_06▲「西日本編」最後の林道、黒河内林道で万歳!(長野)

林道での出会い

林道では様々な動物たちに出会える。鹿や猿との遭遇は頻繁に起こるもので、群馬県の小中新地林道では10メートルほど先の林道を横切る熊を見た。
バイクに乗っているときの熊との出会いにはまったく不安、恐怖を感じる必要はない。というのは驚くのは熊の方なので、一目散に逃げていくからだ。
熊のツヤツヤした黒光した毛皮が目に残る。

岩手県の草倉林道ではニホンカモシカの親子に出会った。親の方はすぐさま林道わきの茂みに逃げ込んだが、子供の方はバイクの走る方に逃げていく。やっとここなら大丈夫というようなところでジャンプ一番、茂みに飛び込んだ。

ここではさらにもう1頭、ニホンカモシカに出会ったが、1本の林道で2度もニホンカモシカに出会ったのは初めての経験だ。猪にも何度か出会った。大物の猪だったり、ウリ坊をゾロゾロと引き連れた猪だったりする。まるで林道を遊び場にしているかのようなかわいらしいウリ坊だ。

20160907_kasori9_07▲ロングダートの美深歌登林道の美深側の入口(北海道)

20160907_kasori9_08▲パンケニコロベツ林道、ペンケニコロベツ林道、シートカチ林道と3本のロングダートが交差する奥十勝峠(北海道)

最終日、最難関の林道を前にトラブルの前兆!?

「林道日本一周」の最終日は9月10日。その日の第1本目は福島県南部の奥西部林道。二岐温泉のわきから入っていく。

20160907_kasori9_09▲越後山脈を越えて本名室谷林道で本名へと下る(福島)

ゆるやかな峠を越える林道だが、ここで何と蛇を踏んでしまった…。木の枝と見分けがつかなかったのだ。今までに何度も蛇を踏みそうになったのだが、最終日にとうとうやってしまった。
蛇をひくと、何かトラブルが起きるのはそれまでの経験でわかっていたので青くなった。

奥西部林道につづいて西部林道を走り、最後は甲子・鎌房林道。国道289号旧道の甲子峠から入ったが、極めつけの難路、狭路の林道だ。
DR-Z400Sと一体になって岩のゴロゴロした林道を下っていく。13.2キロのダートを走り抜けたときは、腕はカチンカチンに固まり、丸太のようになってしまう。
「林道日本一周」の最終日に最難関の林道を走破。このようなハードな林道を転倒ゼロで走り抜けたので、「やったね!」とガッツポーズをするカソリだった。

20160907_kasori9_10▲「林道日本一周」の最後で難関の甲子・鎌房林道を走る(福島)

これがたたりか!?

甲子・鎌房林道を走ったあとは新甲子温泉「ちゃっぽランド西郷」の湯に入った。暮れゆく那須連峰の山々を眺めながら湯に浸かる気分は最高。湯から上がると夕食。
大広間でカレーライスを食べたが、食道が腫れあがったかのような辛さで、飲み込むのがつらくなるほど…。「おー、きたきた!」と思った。これが蛇のたたりか…。

白河ICから東北道に入り、一路、東京へ。ゴールの東京・日本橋に到着したのは2010年9月10日の22時30分。これにて「林道日本一周2010」、終了!

賀曽利隆のバイク旅(10)に続く

賀曽利隆

賀曽利隆冒険家・ツーリングジャーナリスト

投稿者プロフィール

1947年東京生まれ。
1968年から2年間をかけてアフリカを一周したのを皮切りに、バイクで世界の6大陸を駆け巡る。
1982年には「パリ→ダカールラリー」に日本人ライダー初の参戦。1987年には「サハラ砂漠往復縦断」。7度の「日本一周」を成しとげ、「70代編日本一周」を目指している。
ツーリングマップル東北の担当ライダーで、東北の道という道を精力的に走っている。
モットーは「生涯旅人!」

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