【和歌山利宏コラム】ライテク都市伝説を斬る [その4 ステップを踏んで寝かす]

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

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コーナリングでバイクに入力してマシンを寝かし込むのは、前回述べたように、好ましい方法ではありません。

間違った内足荷重に導かれてしまう「ステップ入力」

ステップを踏み込んで寝かすのも同様で、正しくはありません。ステップを踏み込んだら、その作用によってマシンは寝ても、身体は反作用によって持ち上げられてしまいます。

外側に踏み込めば、身体はイン側に移動できるでしょうが、逆にマシンは起こされます。結局、マン・マシン系全体をリーンさせることはできないのです。

にも関わらず、この都市伝説は広く蔓延しています。しかも、実績のあるレーシングライダーが、この方法を向きを変えるためのテクニックとして、教えていることが多いのです。由々しきことに、そうしたレクチャーがメーカー系スクールで行われていることさえあります。

これが世に広まり始めたのは、80年代中頃だったでしょうか。当時以降に、このテクニック指南が自分にピタリとハマり、成長できたライダーが、それを普及させているようにも思います。となると、これは正しい究極のテクニックのようでもありますが、それほど話は単純ではありません。

実際のところ、このステップ入力を理解できて、走りに生かせる人はほんの一握りにしか過ぎません。ほとんどの人は、人車バラバラになって曲がらないばかりか、間違った内足荷重に導かれてしまうのです。

これはどういうことなのでしょうか。

内足荷重の本質 – 主観と客観の問題

向きを変えるための体重移動では、体幹をアウト側に残し(そのとき自ずと外足荷重となる)、そのことで舵角を入れ、そして腰で体重移動していきます。そのときはイン足を踏み出すようになり、実際、オフロードで足を出すのもそのタイミングです。

イン足を踏み出すのですから、イン足から荷重を抜くことになります。荷重を抜くためには、その寸前に荷重状態になっていなくてはなりません。それが内足荷重の正体です。

ですから、この内足荷重というのは、意図してやるものではなく、タイミングの良い柔軟な体幹の動きによって、結果的に生まれるコンマ何秒かの出来事なのです。

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ステップを踏むのではなく、踏んだ状態になるというわけです。トップライダーにしてみれば、この内足荷重感覚を得ることが大切なわけで、そうなるように乗りましょうというのが真意であり、踏んで寝かすことが本質ではないはずなのです。

言い方を変えれば、ステップから荷重を抜くのが客観だとしたら、荷重するというのは主観になります。「ステップを踏んで寝かす」という都市伝説は、主観だけが一人歩きしたものだと言えましょうか。

身体操作において、「する」と「なる」では大違いです。今の多くのライテク論では、主観と客観がゴッチャになっているのが現状なのです。

和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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