SHOWA『BFF/BFRC-lite KIT』試乗レポート ショーワからSBK仕様の高性能サスペンションキットを発売

【Webikeニュース編集部】

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今回、サスペンションメーカーのSHOWA(ショーワ)から発売された公道用アフターパーツの新製品、『BFF/BFRC-lite KIT』の発表試乗会が筑波サーキットで開催された。モーターサイクルジャーナリストのケニー佐川がレポートする。

数多くの実績を残してきた「SHOWA」が満を持して放つアフターマーケット用パーツ

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SHOWAは4輪と2輪をはじめとする幅広い分野でサスペンションを展開する世界的なメーカーである。モーターサイクル分野においても国内外メーカーにおける数多くの量産市販モデルに純正サスペンションを供給するOEMメーカーとして、また、MotoGPを頂点とするモータースポーツの世界でもレース用サスペンションの開発で輝かしい実績を残してきた。

直近では2015年度スーパーバイク世界選手権(SBK)王座に輝く「カワサキレーシングチーム」のZX-10Rが採用していることでも有名である。

こうした、実績に裏打ちされたサスペンションメーカーの大御所が、初めて挑んだアフターマーケット用製品が今回ご紹介する『BFF/BFRC-lite KIT』である。

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「SHOWA」というブランディングを確立するための新たな商品として

今回のプロジェクトの中心人物であるSHOWAの横井氏に背景を聞いた。
「SHOWAは長年、車両メーカーに供給するOEM製品を中心に手掛けてきました。もちろん、MotoGPなどトップカテゴリーのレーシングサスペンションでも実績を残してきましたが、ブランド認知度という点では世界的に見ると十分とは言い難い。今後、世界の中でさらに競争力を高めていくためには、“SHOWA”というブランディングを確立する必要があると考えています。我々はOEM製品で培ってきた品質管理のノウハウと、レースで磨かれた最先端技術の両方を持っていることが強みです。今回リリースする『BFF/BFRC-lite KIT』は、まさにSHOWAの持てる技術を結集して作り上げた自信作だと自負しています。」

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つまり、『BFF/BFRC-lite KIT』はOEM製品の信頼性と耐久性、レース用パーツとしての性能を兼ね備えたサスペンションということができる。
横井氏によれば、公道用とはいえ、2シーズン前のSBKレーサー仕様そのものと言ってもいい性能とのこと。その第一弾として今回リリースしたのがZX-10R用で、フロント用のBFF(バランス・フリー・フロント・フォーク)、そしてリヤ用のBFRC-lite(バランス・フリー・リヤクッション・ライト)である。

レーシングサスペンションに限りなく近いスポーツ性能と別次元の乗り心地

『BFF/BFRC-lite KIT』の特徴だが、まずはその特殊な構造にある。
従来のサスペンションには正圧型、負圧型などのバルブセッティングがあり、いずれも圧力バランスが変動することで内部に大きな圧力抵抗やキャビテーション(オイルの泡立ち)が発生していた。新型ではこの圧力バランスが変動をしない「バランスフリー構造」の油圧回路を導入することで、スムーズな作動性を実現。大流量で減衰力を発生させることで、応答性と低速制御性、一様性などを向上させている。

20160801_showa06▲ZX-10Rに採用されている「バランスフリー構造」を採用したサスペンション

これにより、接地感、安定性、乗り心地を大幅に向上させることが可能となり、レーシングサスペンションに限りなく近いスポーツ性能と別次元の乗り心地を両立しつつ、さらに細やかなセッティングにも対応できる仕様が完成した。

基本的にはZX-10RにOEM装着されているものと構造はほぼ同じだが、異なるのが使われている部品の材質と加工精度なのだとか。

具体的には「ストローク量を10mmほどUPし吸収エネルギー向上、「世界初の薄膜成型技術による作動性向上」、「高剛性と質感を両立した総削りアクスルホルダーによる驚異的な接地感」などがポイントだ。

写真でもボトムブラケットが削り出しであるなど、材質の違いや精度の高さが伺える。

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試乗インプレッション

さて、製品ブリーフィングを受けた後、さっそく試乗してみた。比べるのはZX-10RのSTD仕様と『BFF/BFRC-lite KIT』仕様(以下、キット仕様)の2台だ。

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▲ZX-10RのSTD仕様
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▲ZX-10Rの『BFF/BFRC-lite KIT』仕様

まずは見た目。キット仕様のフロントフォークは「エメラルドカラーコーティング」のインナーチューブにまず目が向く。
特殊なコーティング技術により従来から20~30%もフリクションロスを低減しているという。いかにも剛性感のありそうなオール切削加工のアクスルホルダーにはチタンボルトが採用されるなど、走行性能だけでないスタイリッシュな外観デザインとカラーリングも魅力だ。

20160801_showa09▲インナーチューブに施された「エメラルドカラーコーティング」

リヤショックも「キャンディレッドメタリック」に統一されたスプリングとロッド、アジャスターが美しく、よく見ると下側マウント部もピロボールになっていて車高調整も装備されているなど、まさにレーシングクオリティの輝きを放っている。パーツとして見ただけでも、走りへの期待感は高まってくる。

20160801_showa10▲リアサスペンションも「エメラルドカラーコーティング」が施される

ただ、当日は朝からあいにくの雨で路面はフルウェット。コンディションとしては最悪だが、気持ちを切り替えてコースに出てみる。

雨の中でも感じる、高性能サスペンションの「余裕」

まずはSTDからテストを開始したが、意外にもバランスがいい。というか当然だ。昨年度のチャンピオンマシンのベースモデルでしかも2016年の最新型と聞けば当たり前のことだが、ZX-10Rはトータルパッケージとして非の打ち所がない。意地悪くサスペンションに難クセを付けようとしても何も見当たらないのだ。

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続いてキット車に試乗。跨った感じはSTDより若干車高が高めな感じで、乗車1Gでの前後サスペンションの沈み込みも少なめだ。
走り出しても、サスペンションはやや硬めというかカッチリした印象で、車体が大柄に感じてしまう。ぱっと乗った感じではSTDのほうが乗りやすいのだ。雨天のせいもある。ノーマルタイヤということもあり荷重をかけた走りができないため、高性能サスペンションの良い部分がなかなか引き出せないのだ。

これは困ったと思っていたが、何回か交互に乗り換えていくうちに、体がウェット路面に順応してきたせいかキット車の良い部分が鮮明になってきた。
最初に違いを感じたのはブレーキングでの安定感だ。

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筑波サーキットの第2ヘアピンは緩く曲がっているため車体を少し傾けながらフルブレーキングしていくが、ウェットではフロントから滑りそうで当然恐い。STDだと進入ラインを決めるとなかなかずらせないところを、キット車だとブレーキングしながらラインを変えていける余裕がある。フロントの残ストローク量に余裕があるからだろう。これは大きなアドバンテージだ。

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「マシンに預けられる」安定感

次に発見したのが、コーナー立ち上がりでのトラクション感。グリップしない路面で恐る恐るスロットルを開けていくが、後輪が路面を蹴り出す感覚、つまりリヤタイヤのグリップ感がより鮮明に感じられる気がした。
特に筑波の1ヘアや2ヘアはコーナー立ち上がりで路面にカントがなくなるので急激にグリップを失いやすいのだが、そこでSTDよりちょっとだけ多めにアクセルを開けられる。結果的に脱出速度が上げられるのでストレートでのトップスピードの伸びが変わってくる。これはバックストレートでの変速タイミングの違いでも明らかだ。

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そして、運命の最終コーナー。筑波で最も速度の乗る高速コーナーなのだが、ウェットでノーマルのハイグリップタイヤという組み合わせは本当に恐い。
そんな中で意を決して速度を上げながら車体を周回毎に少しずつバンクさせていくが、STDでは自分ではもうこれ以上はムリという領域でも、キット車に乗り換えると少し余裕がある。何というか“マシンに体を預けられる“感じなのだ。最終コーナーは荷重が乗るため、高性能サスペンションの良い部分がより際立ってくるのかも。

タイムを計ったわけではないが、これらのメリットを総合するときっと気持ちに余裕を持ったままペースアップできる予感はした。SHOWAの開発者が語っていた、「攻めれば攻めるほど接地感と安心感が向上しますよ」という意味が分かった気がした。
やや歯切れの悪いインプレッションになってしまったが、天候には勝てないのでそこはカンベンしてほしい。また機会があれば、ドライ路面で思い切りコーナリング性能の違いを確かめてみたいと思う。

「NC750X」に純正採用されたSDBV(ショーワ・デュアル・ベンディング・バルブ)

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また、当日はOEMサスペンションの進化を体験してもらう目的で、参考までにSHOWA製を採用するNC700XとNC750Xも用意された。
ちなみにNC700Xの正立フォークは一般的なフリーバルブ構造であるのに対し、2016年式の新型NC750XにはSDBV(ショーワ・デュアル・ベンディング・バルブ)が採用されている。SDBVは圧側減衰力をプログレッシブに発生させることで、ブレーキングでの安定感や接地感を高める効果がある。

20160801_showa17▲SDBV(ショーワ・デュアル・ベンディング・バルブ)のカットモデル

たしかにNC750Xは跨った瞬間からしっとりとダンピングが効いて動きもスムーズ。高級感のある乗り心地が感じられたが、いかんせんフルウェット路面でしかもタイヤ銘柄が異なっていたこともあり、限界付近でのブレーキングやコーナリング性能などの細かいフィーリングまでは体感できなかったのが残念である。

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一般ユーザーに手が届く商品も販売予定!

製品ラインナップとしては、まずはブランディングを確立するためのハイエンドモデルとして今回のBFFとBFRC-lite を「プレミアム・アップグレード・キット」として発売。ZX-10R用を皮切りに、今後はSHOWAのOEM製品を採用している各社スーパースポーツモデルから順次展開していく予定である。

気になる価格だが、BFFが888,000円、BFRC-lite KITが222,000円となっている。金額だけを聞くと、一般人の金銭感覚からすると高価ではある。ただ、その正体はスーパーバイク世界選手権を戦うカワサキのファクトリーレーサーとほぼ同等の仕様と聞けば、その価値には十分納得がいくだろう。

それでも現実的な話としては手が出ないという人にも朗報がある。SHOWAでは将来的には量販価格帯の高性能高機能モデルとして「パフォーマンス・アップグレード・キット」の発売も予定しているとのこと。今からラインナップ展開が楽しみだ。

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