【和歌山利宏コラム】ライテク都市伝説を斬る [その3 バイクに入力して寝かす]

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

20160729_wakayama01

ライダーはどうやってバイクを寝かし込むのか。

ライディングにおいて、バイクに何かしらのきっかけを与えてやらないと、バイクは状態を変化させてくれません。逆操舵もその一手段です。
が、これに依存することの弊害は、このシリーズのその1で述べたとおりです。

【関連ニュース】
◆【和歌山利宏コラム】 ライテク都市伝説を斬る [その1 逆操舵]

「バイクに入力」して曲げるという誤り

そして、逆操舵に加え、都市伝説として蔓延しているのが、バイクに入力して寝かしこむというものです。

具体的には、外膝でタンクをイン側に押し込む、腕でハンドルグリップをイン側に引き込む、内足でステップを車体側下方に押し込む、といったものが挙げられましょうか。
はっきり言って、これらは間違っています。ライテクうんぬん以前に物理的に成り立たないのです。

例として、手漕きボートを考えてみます。ボートを岸に寄せ、そのまま飛び降りることとしましょう。
ボートを蹴って飛び降り、岸の上に身体を移動させます。これは蹴るという作用に対する反作用で身体を移動できるのです。
ただ、無事に人が上陸できても、ボートをロープで固定しておかないと、ボートは蹴られたことの作用を受け、岸から遠ざかってしまいます。

仮にこの方法を使って、ボートを目的地に向かって進めようとします。
ボートに乗った人がボートの上だけで立ち幅跳びをしたら、その一瞬は、キック力の作用でボートは後退します。
ところが、人がボート上に着地するや、ボートは人が跳んできたエネルギーを受けて元に戻されます。ボートと人の中で力のやり取りが完結し、結局、ボートは移動できないのです。

自然な旋回性を阻害してしまう「入力」とは

20160729_wakayama02

前述した都市伝説「バイクに入力して寝かしこむ」というのは、これと同じことをバイクの上でやっているようなものなのです。
バイクに寝かせるための入力を与えるには、ライダーは身体を寝かせる方向に動かさなくてはならず、バイクは寝かせるのとは逆方向に力の作用を受けます。

すると、バイクが自然と寝ていかないために、逆操舵などで車体を寝かせて辻褄合わせをすることになり、曲がらないし、転倒のリスクも増えます。また、入力を与えると、その時点で自然な体重移動は止まり、それ以上に旋回性を高めることができません。

もちろん、激しい切り返しで身体を先行させて次のコーナーに移動させるときなどは、しっかり入力します。しかし、ごく普通のコーナーでマシンへ入力しては、マシン本来の旋回性を引き出せないのです。

付け加えておくと、ハンドルを引き込むように寝かし込むのは、スリップダウンに対処できないため論外としても、外膝でタンクをイン側に押し込む入力感はあったほうが良いように思えるかもしれません。

でも、それはあくまでも入力感に過ぎず、バイクの運動に変化を与える入力にはなりません。外脚股関節の内旋によって体幹をイン側に移動させやすくなり、結果としてタンクを押し込む感覚となるのです。これはマシンホールドにも繋がります。
このとき、アウト側ステップとタンク間を広げるように踏ん張る感じになりますが、マシン内において、あるいはライダー内において力は釣り合っているので、あくまでも入力感であり、寝かせるための入力とはなりません。

もう一つ、イン側ステップへの荷重に関しては、また別の要素も絡んできます。これについては、次回で触れることにしましょう。

和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

この著者の最新の記事

関連記事

編集部おすすめ

  1. 専用設計でペール缶にピッタリフィット パーツの企画・製造・販売を行うマジカルレーシングは、…
  2. 【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】 「トータルコントロール」が開発テーマ CB250…
  3. オートバイパーツ、車体の塗装・整備を行うAWANOメンテナンスサービスは、オンロードバイク用…
  4. ■大会名 ルマン24時間耐久レース ■開催地 フランス・ルマン ■開催期間 …
ページ上部へ戻る