【ケニー佐川 コラム】GW中に相次いだ悲惨な交通事故で思うこと

【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】

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今年のGWは晴天に恵まれ全国的に行楽日和となった。が、その一方で悲惨な交通事故が相次いだことはとても残念で仕方がない。

これだけテクノロジーが進歩した現代において、なぜこうも事故が起き続けるのか。それを黙って傍観し続けることに無力感とともに怒りすら沸いてくる。

では、どうしたらいいのか。曲がりなりにも交通に関わる仕事をする者として、自分なりの考えをお伝えしたいと思う。

以下は連休中に新聞などで報道された主な交通事故である。

5/2(木) 千葉・成田で3台衝突事故、男性が死亡

午前10時半すぎ、成田市の利根川沿いを走る国道で大型トラックが車線をはみ出し、前から走ってきた別のトラックに衝突。さらに後続の軽自動車が追突した。

この事故で、車線をはみ出した大型トラックを運転していた60代男性が死亡。衝突されたトラックの運転手(50)が軽傷、軽自動車を運転していた男性が重傷を負った。

5/3(金) 山梨で軽乗用車が自転車2台と正面衝突、1人死亡

正午前、山梨県南部町の県道で軽乗用車が対向車線にはみ出し、スポーツタイプの自転車2台と正面衝突。この事故で自転車に乗っていた2人の40代男性のうち1人が死亡、もう1人も重傷を負った。

警察は車を運転していた富山市の男性(29)を現行犯逮捕し、過失運転致死傷の疑いで事故原因などを調べている。

5/4(土) 常磐道で乗用車とバスが正面衝突、母子2人が死亡

夜8時頃、福島県の常磐自動車道で乗用車とバスが正面衝突し、乗用車を運転していた母と小学校1年生の娘が亡くなったほか、バスの乗客ら少なくとも30人が軽いけがをした。

乗用車が何らかの原因で対向車線にはみ出しバスと衝突したらしい。

5/5(日) 美馬市長が運転する乗用車と軽自動車が正面衝突、2人死亡

午後4時15分頃、徳島・美馬市の国道にある三頭トンネル内で、美馬市長(74)が運転する乗用車が、男女4人が乗る軽自動車と正面衝突。軽自動車に乗っていた男性(78)と妻(75)が死亡、残る2人が重傷を負った。

現場の国道は片側1車線で、市長の車が車線をはみ出した状態だったという。

4つの事故事例の原因

上記の4つの事故事例は、いずれも乗用車の対向車線へのはみ出しが直接原因となっている。居眠りか、よそ見か、速度の出し過ぎか・・・。詳細な状況は分からないが、正面衝突の多くはドライバーの運転ミスによるものだ。車線を区分する中央分離帯やガードレールがあれば避けられるケースもあるかもしれないが、現実的には全国の道路でそれを行うのは難しい。

5/3(金) 山陽道で渋滞にトラック突っ込み、母子3人死亡

午後9時40分頃、山口県の山陽自動車道下り線で、中型トラックを含む車7台が絡む事故が発生。事故渋滞していた車列にトラックが突っ込んだとみられ、9人が病院に搬送され、うち最後尾の車にいた母子3人が死亡、夫が重体。運転していた女性も怪我をして病院に運ばれた。

現場は片側2車線の直線部分で、容疑者のトラック運転手女性(54)は警察の事情聴取に「ぼーっとして運転しました」と話したという。

高速道路で渋滞中の車列にトラックが突っ込み押しつぶすという、今までに何度も繰り返された悲劇がまたも。事故原因については調査中とのことだが、追突事故には「居眠り運転」や、単調な連続走行などで起きやすい「覚低走行」などが原因となっていることが多い。

また、最近はスマートフォンをカーナビ代わりに使ったり、運転中にメール画面を見たりなど、スマホによる「わき見運転」が原因となるケースも多いという。

5/3(金)神戸・三ノ宮駅そばで車暴走、7人重軽傷

午前11時すぎ、神戸市中央区のJR三ノ宮駅前で、暴走した乗用車が歩道に乗り上げ次々と歩行者をはね、歩行者5人と車に乗っていた2人合わせて7人が重軽傷を負った。警察は車を運転していた男性(63)を過失運転致傷の疑いで現行犯逮捕したが、「事故の状況はよく覚えていない」とのこと。

男には持病があり薬を常用。過去にも複数回、交通事故を起こしたことがあるという。

こちらも何度も繰り返されてきた、悲しく救いのない事故のパターンだ。2011年4月「鹿沼市クレーン車暴走事故」では、集団登校中だった小学生の列に10トンクレーン車が突っ込み、直後に民家の塀を破壊して停車。はねられた生徒6人全員が死亡した。

また、2012年4月の「京都祇園軽ワゴン車暴走事故」では、祇園四条駅近くの通りを軽ワゴン車が数百メートルにわたって暴走。70km/hの猛スピードで電柱に激突し運転者を含む8名が死亡、12人が重軽傷を負った。

いずれも事故原因は運転手の持病の「てんかん発作」とされている。仕事が無くなるのを怖れて病気を隠していたとも伝えられた2つのケース。なんとも胸が締め付けられる思いだ。

繰り返される悲惨な事故の解決策は

ドライバーの運転モラル向上のための啓蒙活動や交通違反の罰則強化、さらには鹿沼の事故後に施行された「自動車運転死傷行為処罰法」など、政府でもさまざまな対策は行ってきているが、依然として悲惨な事故はなくならないし、同じパターンの悲劇が何度も繰り返されている。

こうした現実を目の当たりにして思うのは、人間の意思や能力には限界があり、それを補うにはもはやテクノロジーの力を借りるしかないのでは、という考えだ。つまり、ドライバーを補う「運転支援システム」の導入である。

日本政府の対応

この連休と前後して、政府では3月の中央交通安全対策会議にて、2020年までに大型自動車の「自動ブレーキ」の義務化や、ドライバーの異常を感知するシステムの開発促進などを盛り込んだ、交通安全に関する基本計画を打ち出している。これにより、2020年までに交通事故による年間の死者数を4割減の2500人以下にするのが目標とのことだ。

数字はともかく、私は今後作られる新型車には自動ブレーキを義務化してほしいと思っている。自動ブレーキ搭載車をユーザーが選択できるようにすればいい、という考え方もあるが、それでは車両の販売価格に差が出るためこれを避けるユーザーも出てくるはず。

ならば、すべての人命を守るために「シートベルト」と同様、自動ブレーキも義務化すべきと私は思う。これは趣味嗜好とは別次元の問題であり、選択の自由などと軽々しく片付けてはならないと思う。シートベルトもかつてはベテランドライバーから敬遠されたが、今では着用していないと不安な気持ちになるはずだ。

「自動ブレーキ」テクノロジーの可能性

自動ブレーキ(衝突被害低減ブレーキ)の効果も実証されている。ちなみに富士重工業では先頃、運転支援システム「アイサイト」搭載車の事故件数の調査結果を発表したが、これによると国内においてアイサイト搭載車は非搭載車に対し、1万台あたり件数で車両同士の追突事故は約8割減。対歩行者事故も約5割減となっている。

また、特に追突事故の死亡率が乗用車の約12倍と高い大型トラックに関しては、衝突被害軽減ブレーキにより死亡事故件数の約80%が削減可能というデータもある。上記の事例でも、何人かの命はきっと救えたに違いない。

自動ブレーキの義務化は世界的な動きだ。米国でも先頃、衝突を回避するための自動ブレーキを2022年9月までに全車に標準搭載することで自動車メーカー20社と合意したと正式発表。これにより米国市場の99%以上を占める車が搭載対象になるという。年間の交通事故死亡者数が3万人を超える自動車大国アメリカは本気で取り組む気だ。

“人命より尊いものはない”

ブレーキ操作を含めたクルマの自動化には賛否両論あるし、何か起きたときの「運転者責任の所在」など、解決すべき問題は多い。もちろん、自動化がすべての問題を解決できるとも思っていない。

ただ、間違いなく言えるのは、人はミスを犯すこと。そして、何の落ち度もないのにある日突然、事故の巻き添えになって命を奪われる人々がいること。それがこの楽しいはずのGWの連休中も、そして明日も繰り返されていくことに私は穏やかではいられない。

“人命より尊いものはない”というのが本当ならば、自動ブレーキの1日も早い義務化を求めてやまない。

ケニー佐川

ケニー佐川 Webikeニュース編集長

投稿者プロフィール

早稲田大学教育学部卒業後、情報メディア企業グループ、マーケティング・コンサルタント会社などを経て独立。趣味で始めたロードレースを通じてモータージャーナルの世界へ。
雑誌編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。
株式会社モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。
日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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