【和歌山利宏 コラム】欧州メーカーを訪れ、思い知らされる伝統の重み

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

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欧州と日本のモータースポーツ文化。浸透度の違いの理由とは?

欧州と比べ、日本ではまだまだバイクとかクルマ、そしてモータースポーツが文化として認知されていません。確かに、それらを趣味としている人は少なくないのですが、ことモータースポーツやレースに関しては、本質を理解している人は多くはなく、庶民の中に溶け込んでいるとは言えません。

その差は一体、何によるものなのでしょうか。

町工場の競い合いから始まった、欧米のレース文化

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欧米では、100年前の原動機付きの乗り物の創成期、各地の町工場でそれらの開発、製造が始まりました。それに伴ない、性能を競うため、各地で公道レースが行われました。

多くの人々は、未曾有の乗り物が駆け抜けることに興奮し、地元メーカーの活躍を応援したに違いありません。すでに欧州には馬車の文化があり、またその100年近く前には自転車が走り始めていて、原動機付きの乗り物を受け入れる素地もあり、そのことで文化として定着していったのでしょう。

バイクメーカーの競い合いから始まった、日本のレース文化

我が国にも、欧米にさほど後れを取ることなく、自動車産業の始まりはありました。また、戦後には多くのバイクメーカーが生まれ、昭和30年頃には性能を競う富士登山レースなどが行われたりもしました。

でも、庶民に浸透することなく、また素地の違いもあって、このような違いになっているのかもしれません。

イタリア最古のバイクメーカーと、その周辺地域のバイク文化に触れる

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私は先日、1921年に創立されたイタリア最古のバイクメーカー、モトグッチ社を訪れました。そこスイス国境にも近いコモ湖周辺には、バイクを走らせるにいい環境が広がり、1921〜1939年にイタリアンGPが行われた1周36.5kmの公道コース、ラリオサーキットもありました。
モトグッチは1923年には、そこで初優勝も飾っています。今、そこには記念モニュメントが作られ、コースも当時に近い状態で残っています。

そして今回は、新型車V9 RoamerとV9 Bobberの試乗コースにも組み入れられました。
コースを走っているといくつかの集落に遭遇し、そこでは人々がバイクという存在を、快く受け入れていると感じました。マン島でもそうですが、バイク文化の伝統を痛感させられます。

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地域の歴史と伝統が大きく投影されたバイク文化

モトグッチは、2005年からピアッジオ傘下となり、数年前にはピアッジオのあるポンテデラへの工場移転が計画されました。が、従業員たちの猛反対に合い、それは実現しなかったと聞きます。
彼らが猛反対をした理由は、仕事を続けるには地元を捨てなければならず、引越しを拒否したら職を失うことになるから、と私は考えていました。

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しかし今回V9の試乗を通して、この土地の風土を感じるにあたり、私はそれだけが理由ではないと実感しました。100年の歴史があるモトグッチ社をこの地に残すということが、地域の「歴史と伝統」を守ることになる、それが従業員にとっても「誇り」であるからだと、思い知らされたのでした。

 

▼モトグッチV9 Roamer、V9 Bobber 和歌山利宏試乗ムービー

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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