【ケニー佐川 コラム】最近流行りの「電制」について考える

【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】

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セーフティデバイスとしての電制

最近、二輪メーカーの担当者やメディア関係者と話をしていると、“電制”という言葉がよく聞こえてくる。いわゆる「電子制御」の略である。

パワーモードやABSやトラクションコントロールは言うに及ばず、最近のバイクはスロットルワイヤーがなくサスペンションも電制、ギヤチェンジまで電制というモデルも珍しくなくなった。4輪に比べて遅れ気味だったこうした電制が、技術革新とコストダウンによって2輪の世界にも押し寄せているのだ。

電制はライダーの致命的なミスを補ってくれるセーフティデバイス

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それを実感したのが、最近試乗したトライアンフ・ストリートツインやモトグッチ・V7Ⅱなどのネオクラシックモデル。こうしたジャンルさえも電制が搭載されているのだ。「雰囲気を楽しむモデルにそんなものいらないじゃん」という声も当然あるだろう。

ただ私としては、電制はライダーの致命的なミスを補ってくれるセーフティデバイスであり、保険としてもありがたいと思っている。特に今のように寒い時期はタイヤのグリップが不安だが、電制のおかげで安心だし、実際に助けられたこともある。

運が悪ければそのまま転んでいてもおかしくはない

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つい先日試乗したネオクラシックモデルで、交差点を左折して加速しようとアクセルを開けようとしたときのこと。マンホール上にリヤタイヤが乗ったとき一瞬開けすぎたかな、と思ったらやはりというか案の定、リヤタイヤが滑り始めた。文章で書くとゆとりがあると思うかもしれないが、実際は一瞬だ。ヌルリときたと思ったときはすでに遅く、運が悪ければそのまま転んでいてもおかしくはない。

でも、トラコンはこれを見事に助けてくれる。感覚としては、今失速したなぁ、という感じる程度で何事もなかったように立ち上がってそのまま加速していける。ネオクラシックモデルなので、トラコンもそれほど高性能タイプではないと見え、介入タイミングはやや遅いがそれでもあるとないでは大違いだろう。

エキスパートの上をいく電制

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一方、最新スポーツモデルはトラコンの介入を感じさせないほど自然で、これを積極的に使いこなすことで安全に速く走れることにもつながる。
以前も書いたかもしれないが、昨年発売されたスズキの新型モデル、GSX-S1000/Fなどはあり余るパワーをトラコンで自動的に間引くことでフル加速でもスムーズに立ち上れた。

また、昨年大きな注目を集めたヤマハの新型R1なども常にリアルタイムでトラコンが介入することで、200psを安全かつ穏やかに扱うことができる。もしそれがなかったら、試乗した富士スピードウェイの最終コーナー立ち上がりで、ハイサイドを思い切り見舞われてお終りだったろう。

コーナリングしながらのフロントブレーキ

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オフロードを走ったときも電制のありがたみを痛感した。最新のドゥカティ・ムルティストラーダ1200SやBMWR1200GS、KTM1290スーパーアドベンチャーなどはご存じのとおり電制の塊だ。前述したような“電制基本パック”以外にもコーナリングABSなども備える。林道などをコーナリングしながらフロントブレーキをかけられるのだ。

ダートで車体を傾けてフロントブレーキ(しかも強く)など、昔からバイクに乗ってきて、いろいろ失敗して苦い思いをしてきたライダーにとって、それはありえないような話だ。でもそれができてしまうのが最新の電制なのだ。

人間の能力や行動範囲を拡張してくれるツール

もはや人間を超えてしまった感のある電制。というより、エキスパートライダーの熟練の技さえも超えているのだ。最近はAI(人工知能)が将棋やさらに難しい囲碁のプロ棋士を破ったというニュースを聞くが、バイクの操作に関しても似たようなことが部分的にではあるにせよ起こっているのだ。

何も仕掛けのついていない昔ながらのキャブ車がいい、という人も多いだろう。それはそれでいい。ただ、バイクを人間の能力や行動範囲を拡張してくれるツールとして考えれば、電制化も悪くはない。バイクで旅をするにしてもスポーツライディングを楽しむにしても、より高い次元でしかも安全にその目的に近づくことができるからだ。

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ケニー佐川

ケニー佐川Webikeニュース編集長

投稿者プロフィール

国産・外車を問わずミニモトからビッグバイクまで、どんなバイクでも乗りこなすモータージャーナリストとして2輪専門誌等で活躍中。
16歳から乗り継いだバイク30台、テストライド経験300台以上。装備や用品、カスタムパーツのテストも数多くこなしてきた。
MFJ公認インストラクター。米国ケビン・シュワンツ・スクール修了。

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