【ケニー佐川 コラム】首都高で起きた2つの事故について

【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】

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1月28日に東京都内の首都高速で、運転手が高架下に落下して死亡する事故が2件発生しました。ひとつはクルマの事故で、午前6時頃、西葛西の首都高中央環状線内回りでトレーラー同士が追突。追突した側のトレーラーを運転していた50代男性が、約20m下の中州に転落しました。運転手は事故の衝撃で運転席側のドアが開かなくなったため、助手席のドアから外に出ようとして誤って転落したとみられています。

もうひとつはバイク事故でした。28日未明に神田紺屋町の首都高1号線でバイクが側壁に衝突し、運転していた31歳男性が事故の弾みで約20m下の道路に落下したものです。警視庁の調べでは、何らかの理由で右カーブを曲がり切れなかった単独事故とみて調べているそうです。亡くなられたお二方のご冥福を心よりお祈り申し上げたいと思います。

TVニュースなどを見ていると、2つの事故の関連性を指摘する内容が多く見受けられます。それは、事故は「側壁の高さ」に起因するというものです。首都高の側壁は90cmから1mの高さで設定されていて、もし側壁が高ければ運転者が落下することは免れたのではないか、という含みを感じさせるものでした。

問題は「側壁の高さ」なのか

たしかに一理あるとは思います。私もよく首都高を利用しますが、特に事故があった中央環状線などは高い場所を走るので、高所恐怖症の私としては身がすくむ思いがします。側壁が低くて不安だと思った経験はライダーなら誰でもあるのではないでしょうか。

ただ一方で、見通しの悪い曲がりくねったカーブが多い首都高で側壁を高くすると、ドライバーの視界を妨げることになりかねず、かえって危険が増すことも考えられます。また、首都高は1日平均100万台の交通量があり、年間では数億台の車両が通過することを考えると、その中での今回の事故はたまたま運が悪く、発生日も重なってしまった、非常に稀なケースと言えるかもしれません。
つまり、2つの事故は側壁の高さ(低さ)がクローズアップされていますが、そこが論点ではなく、それ以前に事故を招いた原因についてもっと深く考えるべきではないでしょうか。

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事故を防ぐためには

こうした事故を未然に防ぐには、まず首都高という特殊な構造を理解して走ることが大事なのではないでしょうか。そのヒントは制限速度にあります。
首都高の制限速度は60km/h(場所によっては50km/h)と一般的な高速道路と比べて低く設定されていますが、それには理由があります。
首都高のホームページを閲覧すると、首都高速道路といっても実は「自動車専用道路」であり、「都市内空間を有効活用するため車線数が少なく路側帯が狭い」、「一般に河川や街路などの公共施設の上に建設しているため急なカーブが多い」、「すぐ近くに建築物があり騒音の影響が大きい」などの制約から原則として60km/hとされているそうです。

首都高は半世紀も前に作られたもので、現代の高性能なクルマやバイクがハイスピードで走れる設計にはなっていません。そもそも速度を出してはいけない設計なのです。路肩が狭い、側壁が低いなどの難点を挙げればきりがないが、これも首都高が作られた当時の精一杯の姿とも言えるでしょう。
前述の死亡事故の原因となった「追突」や「カーブを曲がり切れず」といった事例も、もしかしたら速度の出し過ぎが引き金だった可能性もあります。

もちろん、再発防止のための対策も求められます。最近、首都高をはじめ高速道路でも目にするようになった逆走防止の注意喚起のため道路標示やペイント、高輝度矢印板や光による誘導装置など、道路そのものの構造を変えなくても比較的低コストでできることもあるはずです。

自衛運転を心がける

近年は首都高も老朽化が著しく補修に追われる昨今のようですが、いずれ将来的には新たに建て替えられる日もくることでしょう。ただ、そのときまでは危険を認識して自衛していくしかないのかも。杓子定規になってしまうかもしれませんが、ともかく特にカーブの前では「速度を控える」。「車間距離を空ける」。そして、万が一事故に巻き込まれたときは「焦らず落ち着いて状況判断」することが大事。あらためて、安全に王道はないということだと思います。

ケニー佐川

ケニー佐川Webikeニュース編集長

投稿者プロフィール

早稲田大学教育学部卒業後、情報メディア企業グループ、マーケティング・コンサルタント会社などを経て独立。趣味で始めたロードレースを通じてモータージャーナルの世界へ。
雑誌編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。
株式会社モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。
日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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