なぜ人はバイクに乗るのか (その1)

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

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私もバイクの魅力に取り付かれた男です。小学校5年生の時、あぜ道で初めてバイクに乗った瞬間、バイクを一生の仕事にすると決意。以降、半世紀余り、その想いは変わりません。

なぜ、そこまでバイクへの情熱を保ち続けることができるのか。自分でも不思議なくらいなのですが、ひょっとするとそれは、バイクに関わる行為が、人間回帰というか人間の本質を目覚めさせてくれるからなのかもしれません。

一つは、遠くに行きたいという人間の本能です。

人類には共通の祖先がいて、それは10数万年前にアフリカに住んでいた女性だといいます。そして、10万年前にアフリカ大陸を出発した我々の祖先は、全世界に散らばりながら進化していきました。南米の南端に辿り着いたのが1万3000年前、ニュージーランドやタヒチ、ハワイなどの太平洋諸島に人類が住み始めたのは、1000年余り前のことです。

平均すれば1年に1kmに満たない拡散速度ながら、新天地を目指し続けたのです。生き延びるためとは言え、人間に「この先に行けば何があるのだろう」といった未開地への興味があったからだと思えてなりません。

社会的な制約がある現代では、そうした本能のままに生きることはできません。でも、そんな欲求を満たしてくれるのがバイクなのです。しかも、地上の自然の中に五体をさらしているのですから、バイク以上に五感を刺激してくれる乗り物はありません。

少年時代に免許を取って、ワクワクしながらバイクで走り出すのは、まさにそんな本能に則った行為です。行動半径を広げ、新しい世界を発見することの感激は、私自身、今も忘れることはできません。

昨今、若者のバイク離れが進んでいます。彼らは幼年期から親のクルマで連れ出され、新しい世界を発見することへの欲望がなくなっているかのようです。それに、ITの発達によって、バーチャルの世界で本能を満足させているようでもあります。

今、クロスオーバータイプのモデルが注目されているのは、そうした遠くに出かけたいという本能を満たすのに、最も適しているからかもしれません。(つづく)

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