カワサキH2に見た走りの創造性とスポーツ性

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

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H2の出現は、強烈なインパクトをもたらしました。多くの人々の興味は、その性能にあると思います。私もそうでした。

H2の最高出力200psは、自然吸気のリッタースポーツが実現していますが、それは電子制御なしに使いこなせるものではありません。しかも、最大トルクは自然吸気エンジンのほぼ30%増で、低中速域ではさらに強化されていますから、走りっぷりを想像すると身の毛がよだつ想いです。

カワサキ車には最強イメージがあり、歴代の旗艦モデルはそんな期待に応えてきました。H2もその意味でカワサキそのものです。コンセプトは「誰もが経験したことのないライディングフィールの実現」だといいます。そりゃそうでしょう。誰もそんな高性能は経験したことがないのですから。

実際のところ、H2の走りは、期待以上でした。未曾有のフィーリングも体験できました。でも、H2の本当の魅力はそれだけではないのです。

スポーツバイクのスポーツ性とは、一つに、性能を引き出し切ることにあります。だからトルク特性が重要視され、ライダーはトルクカーブに載っての走行パターンを組み立てていきます。でも、現在の高性能車だと、特に公道では使い切れる限界をはるかに上回り、性能の表層部だけを使っているに過ぎません。フラストレーションが溜まって当然です。

もちろんH2だって、使い切れるものではありません。ところが、スーパーチャージという要素が加わり、回転数にもスロットル開度に対しても、トルクの高まりはこれまでにないリニア感です。スロットルを開けただけ、トルクが限りなく高まってきます。

すると、使い切れなくても、欲しいだけの性能を自分の意思で取り出せる感覚が生まれてきます。自分の走りに合わせて、右手で理想的なトルクカーブを作り出せるのです。乗せられるのではなく、H2は自分で走りを創造していけるというわけです。

適度のしなり感があるトラスフレームも、そうした走りの自由度を高めてくれます。怒涛の動力性能を生かしてダッシュする部分と、しなりを生かして曲げる部分を、明確に作り出し、走りを組み立てていくことができるのです。バイクにとって真のスポーツ性とは、バイクに合わせることでなく、走りを創造していくことにあると、改めて教えられた気がするのです。

和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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