信頼の原則があいまいな日本は交通後進国

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

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日本と諸外国の交通事情には、いくつかの違いがあります。平均して月に一回の海外試乗を20年近く続け、ルールの違いを知っていても、向こう(主に欧州諸国)でバイクを走らせると、日本で走るのとは異なり、ホッとした気分にさせられることがあります。

我が国では、若者のバイク離れが進み、バイクを知らず、バイクに対していたわりの気持ちがない四輪ドライバーが増えたことで、こちらがヒヤッとさせられることが昔より多くなっています。でも、欧州ではバイクが文化として根付き、はるかに心地良く走ることができます。

欧州では、脇道からの車が一旦停止後、鼻先を出し、減速を促そうとフェイントを掛けてくるようなこともありません。

信号のある交差点で左折(日本だと右折)するとき、先に進むのは直進車でなく左折車で、車が往来する道路の中央で待たされないために安全といえます。

また、一旦停止のところで、必ずしも完全停止することもありません。車が来ていなければ進めばよく、そのほうが交通は円滑で、警官が隠れて見張っていることもありません。まあ、今だに、鉄道の踏切を止まらずに通過するのには抵抗感がありますが・・・・。

ただ、一旦停止の標識で完全停止しなくて良くても、事故が起こったら、過失は100%停止側にあります。その辺の認識が欧州では徹底しています。

交通ルールは、他の車両や歩行者が規則を守ってくれることを前提に成り立っています。「信頼の原則」というドイツで確立された理論です。私は、ドイツでこの原則に助けられたことがあります。
ロータリー内で逆走してきた自転車にぶつかり負傷させてしまったのですが、やってきた警官は自転車の逆走を確認するや、「あなたは何も悪くない。Have a good day!」で終わりだったのです。示談などで面倒なことになると覚悟していただけに、救われた気分になったものです。

欧州では、日本のように過失割合が20%だの40%だのといったことにはなりません。シロクロが明確で、非優先側が責任を負うことになります。日本の交通事故率が高いのは、責任所在のあいまいさが運転者に甘さを生んでいるためと思えてなりません。

そして福井地裁では先日、原島麻由裁判官からとんでもない判決が出ました。居眠り運転でセンターラインを越えてきた車に衝突された被害者に、前方不注意の過失がなかったとは言い切れないとして、4000万円の賠償が命じられたのです。これは、日本の交通後進国ぶりを世に示すようなものとしか言いようがありません。

和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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