電子制御がいくら発達しても“素”のバイクは不滅だ

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

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今年になって、YZF-R1、ムルティストラーダ、H2、RSV4というニューモデルが登場、これらに試乗して改めて驚かされるのは、電子制御装置の進歩です。

7年ほど前、トラクションコントロールなるものが市販車に装備され始めた初期のものだと、スリップ検知→発生トルク制御→スリップ収束といった流れが明らかで、違和感や不整感がありました。最新のものは、スリッピーなところでは最初から自動的にトルクが抑えられたかのようで、作動を感じさせないほど自然な仕上がりです。

ABSの進歩も素晴らしく、作動がスムーズな上、さりげなく前後連動してくれるものもあります。これらは、レースモードだと作動がある程度抑えられていても、しっかりとミスを補ってくれます。以前のように、ABS作動でラップタイムが遅くなることもありません。また、高出力のため、本来ならフロントが舞い上がってしまい、安定して走れないはずなのに、それさえもウィリーコントロールが適度に出力を抑えてくれることで安定して加速することができます。

その上、従来のトラコンやABSだと、タイヤの縦滑りには対処することができていても、遠心力や横滑りには対処できなかったのですが、現在のものは、これらに対しても介入度を強めて対処してくれます。ABSで危険から助けられると、人間はグリップレベルに錯覚を覚え、加速やコーナリングに対しても、同水準のものを期待してしまうようです。ですから、これらの制御は全ての方向に効かないといけないのですが、その意味でも高水準化されているのです。

そればかりかセミアクティブサスが自動的にサスペンションのセッティングを変更するなど、各機種それぞれにここでは書き切れないほど電子制御が充実しています。

でも、それがいいのでしょうか。これらは危険を回避させ、ライダーの精神的、肉体的負担を軽減してくれます。だから気持ち良く乗れることも確かです。しかし、ライダーにうまくなったと勘違いさせ、高出力を生かして速く走ることを可能とする一面も否めません。つまり、安全性の一方で、リスクも高まっているのです。

ですから、こうした最先端技術をまとったバイクの一方で、“素”のバイクが見直されていくという「進化」が絶えることもないと思います。いや、そう信じたいと思います。本当のバイクの魅力とは、バイクの素の部分によってもたらされるはずだからです。

和歌山利宏

和歌山利宏モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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