リターンライダー事故増加 ホントの原因は!?

昨年末あたりから「中高年ライダーによる死亡事故の増加」が盛んに取り沙汰されるようになった。春も近いとあって街にバイクが目立ち始めたが、いま一度心に留めておきたいテーマである。

背景にあるのは「リターンライダー」の増加と見られている。リターンライダーというのは、バイクブームだった1980年代に二輪免許を取得しバイクとともに青春を過ごした世代で、最近になって生活に余裕が出てきたのを機に再びバイクに乗り始めた中年・熟年ライダーのことだ。新車購入者の平均年齢は今や52歳。かつての若者も長いブランクを経て今や40代後半から50代になっている。体力やバイクの性能の変化に感覚が追いつかず、単純な操作ミスなどで命を落とすケースが多い、と新聞などでは報道されている。また、警察主催の講習会などでも「若かりし頃とのギャップ」について注意を喚起しているという。事故の主な原因としては「加齢による集中力や体力の低下からくる漫然運転」や「最近のバイクの性能向上に対応できてない」などと分析されているようだ。

果たして本当にそうだろうか。
たしかに年齢による衰えは一因としてあるだろう。ただ、リターンライダーがいとも簡単に高性能バイクで復帰できてしまうこと自体に問題はないのだろうか。特に趣味でバイクライフを始めたいと考える裕福なリターン層および熟年ビギナー層は、彼らの所有欲を満たしステータス性も高い大型高性能バイクを好む傾向がある。ひと昔前のGPマシン(世界選手権レベルのレース専用車)並みの高性能バイクを、免許さえあれば“誰でも”乗れてしまうのが現状。クルマに例えるなら、F1マシンのレプリカを公道で走らせているようなものだ。

約20年前、1996年の二輪免許制度の改正によって大型二輪免許が教習所で取得できるようになった。その背景には大型バイクを主力商品に据えた海外メーカーによる外圧があったとされるが、それは政治的な話なのでここでは言及はしない。問題は免許制度改正が及ぼした影響である。それ以前は、大型二輪を取るためには免許センターで一発試験に合格する必要があった。いわゆる「限定解除」である。そのため、大型二輪を目指すライダーは皆必死で腕を磨き、安全運転の基本を体に叩き込んだ。つまり、昔は“ナナハンライダー”に代表されるように大型二輪に乗れること自体がステータスであり、その資格を許されたというプライドを持っていた。結果として、それが危険な因子を持った未熟なライダーを高性能バイクから遠ざけるフィルターとしても機能していたのだが・・・。

私も長く二輪専門誌の編集に携わってきたが、肌感覚として今のリターンライダーブームは96年のその時を起点に始まったような気がしてならない。昨今のリターンライダーによる事故の増加も無縁とは言えないのではないか。そもそもリターンと一緒くたにされている中高年ライダー層の中には、実はそれが初バイク体験という熟年ビギナーも多く含まれている。

今さら一発試験に戻せ、と言いたい訳ではない。法を変えなくてもできることは沢山ある。リターンライダーや熟年ビギナーの安全意識とスキルを高め、幸せなバイクライフを長く楽しんでもらうための仕組みが必要だ。それを行政や教習所、メーカーや販売店、そしてユーザーも含めて一緒に作っていくべきではないだろうか。

Webikeニュース編集長 ケニー佐川

ケニー佐川

ケニー佐川 Webikeニュース編集長

投稿者プロフィール

早稲田大学教育学部卒業後、情報メディア企業グループ、マーケティング・コンサルタント会社などを経て独立。趣味で始めたロードレースを通じてモータージャーナルの世界へ。
雑誌編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。
株式会社モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。
日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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