1馬力から始まった

ホンダ青山本社2階の応接ルームには、同社往年の名車を飾ったコーナーがある。定期的に入れ替わるので、訪れる度に次は何が出てくるのだろう、と楽しみにしている。
先日、訪れたときは、古い自転車のようなものが飾ってあった。よく見ると、後輪のハブ近くに赤い小さな塊がくっ付いている。どれどれと近づいてみると、それはエンジンであることが分かった。
説明書きには、1952年製「ホンダ カブ F型」とあった。

戦後の余韻が残る日本がまだ貧しかった時代、ホンダがバイクメーカーとして飛躍するきっかけを作った自転車用補助エンジンだ。さしずめ、今の電動アシスト自転車のモーターとバッテリー部分だけを後付けパーツとして売っていたイメージだろうか。F型は全国の自転車販売店を新しく販売網として組織し、段ボール箱詰め発送を採用するなど、当時としては斬新なマーケティング戦略を取り入れ、売れに売れたと聞く。

「空冷2スト単気筒50cc 最高出力1馬力 最高速度35キロ 重量6kg」とその説明書きには誇らしげにスペックが踊っていた。製品としてのアイデアも販売方法も、まさにイノベイティブだったわけだ。そして、まだバイクの姿もしていないカブは、日本の復興の姿そのものでもあった。

翻って現代。日本は本当に復興したのだろうか。ITばかりが注目されるが、お家芸のモノ作りでの革新はあるのか。2輪についても毎年「EV元年」と言われつつ、なかなかその先に進めずにいるように思える。現代のF型は果たしてどこにあるのだろうか、期待してやまない。

Webikeニュース編集長 ケニー佐川

ケニー佐川

ケニー佐川Webikeニュース編集長

投稿者プロフィール

早稲田大学教育学部卒業後、情報メディア企業グループ、マーケティング・コンサルタント会社などを経て独立。趣味で始めたロードレースを通じてモータージャーナルの世界へ。
雑誌編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。
株式会社モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。
日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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